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僕とどこまでも行こうよ


今日は雨が降っている。
息子くんとのお散歩もおやすみ。
窓から雨粒を眺めながらコーヒーを飲む。
あったかいコーヒーは砂糖入れずにミルク多めが好き。

私はくせっ毛で、すぐに髪の毛がくるくるになってしまうから、あんまり雨は好きではなかった。


でも、私には忘れられない雨の思い出がある。




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2013年 夏 渋谷


私の推している俳優さん、平埜生成くんの出演する『FROGS』という舞台があった。

ダンスが得意な都会育ちの少年カケルは、いとこのテルに誘われて、山奥にある田舎にやって来た。ある日、カケルとテルは“おかえり神社”と呼ばれる場所に迷い込み、カエル達の住む世界に迷い込んでしまった。
人間界に戻るため、偶然出会った若者ガエルのアマネやフクロウと共に人間に戻る方法を探していく青春冒険ストーリー。

『FROGS』を語り始めたら止まらなくなってしまうのだけど、ダンスに歌に演技にとにかくがむしゃらな姿を見てると胸が熱くなる。大好きな作品すぎて、台詞全部言えるんじゃないかってくらい。パワーに溢れていて今でもDVDを観るたびに凄く元気をもらえる作品。

私が通った最後の3日間、5公演は特別だった。
本公演だけではなく、アフタートークショーがあったり、キャストのハイタッチでのお見送り会があったり。

中でも最終日。大千穐楽のひとつ前の昼公演。
特別公演、イレカエル。キャストを全員シャッフル。

フクロウを演じている生成くんがカケルを演じて、
カケルを演じている小関裕太くんがフクロウを演じる。

「……雨?」

冒頭のカケルの台詞。聞いた瞬間に、涙が滲んだ。
イレカエル公演が決まってから、生成くんがカケルを演じたらどうなるんだろう?とずっと考えていて、ソワソワしていた。幕が上がってそこにいたのは、生成くんにしか演じられない生成くんだけのカケルだった。ぶわーーっと鳥肌が立った。全く新しい作品を見ている感覚だった。

その後、夜の本公演、大千穐楽。
フクロウを演じる生成くんを見て、また涙が溢れた。
キャストそれぞれが違う役を演じたことで、自分の役とも改めて別の角度から向き合うことができる。イレカエル公演を見てからの、本公演はまた全然違って見えた。生成くんのフクロウも何回も観たけれど、大千穐楽が1番良かった。皆の熱量がビリビリ伝わってきた。

『ひとことずつ言った台詞が
みんな言霊になって消えていく』

この舞台はこれで終わってしまう。
そう思ったらどのシーンも消えていってほしくなくて、見逃したくないし、聞き逃したくないし、泣きそうになる自分をずっと堪えながら見ていた。我慢出来てないシーンも沢山あったけど。でも泣きながら観たあの景色も、今でもハッキリ覚えている。




大千穐楽後。
会場を出ると、滝のような雨が降っていた。
その日は傘を持っていなかったから、駅に着く頃にはしっかりびしょ濡れになっていた。

推しの舞台だから、自分の中でお気に入りのワンピースとか着ちゃってさ。もちろん髪型もしっかりセットしてさ。丁寧にお化粧もしてさ。舞台中に泣いてるから、そもそも化粧はもう崩れてしまってたかもしれないけど。

それが土砂降りの雨のせいで、ワンピースは絞れるくらい濡れてるし、髪型もお風呂上がりみたいになってるし、もう本当ぐっちゃぐちゃだったんだけど。

でも、めちゃくちゃ楽しかったの。
夜の渋谷を、雨が降ってる中、傘もささずに、皆で今観てきたFROGSの話を夢中でしながら歩いて、気付いたら全身びしょ濡れ。

普段だったら、最悪な状況なはずなのに、
髪が濡れるのなんて絶対嫌なはずなのに。

あの日はそれが楽しくて楽しくて仕方なかった。

カエルの世界に迷い込んでしまったみたいだったから。
舞台は終わってしまったけれど、まだその世界が現実でも続いているような。私もカケルやフクロウの仲間になれたみたいで嬉しくなった。ワクワクした。ドキドキした。ずっとこの余韻の中にいたいと思った。

あんなに楽しかった雨の日は、今までにあの1日だけ。

だから、今も、私は雨が降るとあの日を思い出す。
カエルどもと過ごした夏の日を。


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「ママ、今日は公園行けないねぇ」

雨の日は必ず息子くんが、外を見ながらしょんぼりした顔でそう言う。

今度、カッパを着て、長靴履いて、息子くんと一緒に思いっきり雨の中で遊んでみようかなと思ったりする。
帰ってきたらすぐあったかいお風呂に入れるようにしてさ。


あの雨の日のように。
息子くんも、カエルの世界に連れて行ってあげよう。

一緒にダンスを踊ろう。
雨が降って、踊りたくならないカエルはいないんだってさ。

ケロケロ




『あの時を辿ってみて 君といたことを忘れない』



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