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妊娠中の検査に関して(主に内視鏡などの画像検査)

妊娠中の画像検査についてお話しします。初めに、妊娠中のみならず、全ての検査において言えることですが、検査には検査によって得られる情報などの利益と偶発症などの不利益があり、天秤にかけたうえで、必要性が上回るときに検査を行います。もし、あなたが、妊娠中に、主治医の先生に内視鏡を行いましょう。と言われた場合、主治医の先生もかなり悩まれたうえでの決断だと思います。不安も多いと思います。基本的には、主治医の先生とよく話し合って、ご相談されてくださいね。今回は、以下の検査について書きます。

1.内視鏡検査

2.腹部エコー

3.MRI(MRE)


1.内視鏡検査

妊娠中の内視鏡検査については、とても判断が難しいところです。ここではアメリカの内視鏡学会のガイドライン1)をもとに書きます。

妊娠中に内視鏡を行うことを検討するケースには以下のようなものがあります。

1.大量または継続的な消化管出血

2.重度または難治性の悪心(吐き気)・嘔吐または腹痛

3.  嚥下障害または咽頭痛(理由がよく分からない、飲み込みの障害、のどの痛み)

4.大腸に腫瘍(がん)があることが強く疑われる場合

5.原因のわからない重度の下痢

6.胆道性膵炎、症状のある胆管結石症または胆管炎

7.胆道または膵管の損傷

1)Gastrointest  Endosc 2012 Jul;76(1);18-24

一方で、妊娠中の内視鏡に関しては、以下のようなリスクがあります。

1.母体の低酸素血症や低血圧および胎児の低酸素血症(血液中の酸素が低いこと)

2.母体の過鎮静(鎮静の効きすぎ)による低酸素や低血圧

3.鎮静薬による催奇形性(奇形の赤ちゃんが生まれてしまう可能性)

4.検査中の体の向きによる下大静脈圧迫症候群

5.早産

これらのリスクを少しでも防ぐために、以下のようなことに注意して行うように示されています。

1.高リスクの妊娠では、内視鏡を行う上で、強力な根拠があること。(どうしてもやらなければならない時に行うこと)

2.可能な限り、妊娠初期は避けて、妊娠中期に行うこと

3.鎮静を行う場合は、効果のある最低の量(最低有効量)を使うこと

4.可能な限りカテゴリーB(FDA分類)の薬剤を使うこと(安全性がある程度認められている薬剤)

5.検査時間を短くする

6.大静脈や大動脈の圧迫をさけるため、左骨盤傾斜あるいは左側臥位(体の左側を下にする向き)で検査を行う

7.妊娠24週より前は、鎮静剤を使う前と、内視鏡検査を終わった後に胎児の心拍をモニターすること

8.妊娠24週以降は、可能であれば、胎児心拍と子宮収縮をモニターすること。できれば、新生児科や小児科のある病院で行うのが良いです。

9.胎盤剥離、切迫分娩、コントロールされていない子癇の場合は行わないこと

などです。

また、腸管洗浄剤(普段大腸内視鏡を行う前に飲む下剤)は、電解質異常などを起こす可能性があるため、原則使わないこととなっています。(施設の判断にもよる)

また、鎮静剤(眠くなる薬)に関しても、妊娠していない時に使えていた薬が使えないケースもあり、なかなか難しいです。

ところで、潰瘍性大腸炎の患者さんが内視鏡を行う場合、潰瘍性大腸炎でない、患者さんと比べて、リスクが高いのでしょうか?これに関して検討した論文があり、リスクは変わらない。2)とされています。しかし、一般の妊婦さんと同様、早産や流産などのリスクはあり、原則として、安全性と必要性をじっくり検討したうえで、必要な場合に、できればS状結腸くらいまで行う。とされています。どの程度の検査を行うか。については、必要性に応じて、主治医の先生としっかりご相談のうえで、納得して検査を受けてください。

2)de Lima A et al:J crohns and colitis 2015 Jul;9(7):519-24

2.腹部エコー

比較的安全な検査ではありますが、妊娠中は赤ちゃんが邪魔?してしまうため、良く見えず、行えないケースもあります。

3.MRI(MRE)

妊娠第1期の撮影およびガドリニウム系造影剤の使用を避ける方が良い。という報告があります。3)

3)Aliment Pharmacol Ther 2014; 40: 991–1008

以上、主に、内視鏡検査などの画像検査に関して書きました。

今回の記事に関しては、以下の文献を参考にしました。

1)Gastrointest  Endosc 2012 Jul;76(1);18-24

2)de Lima A et al:J crohns and colitis 2015 Jul;9(7):519-24

3)Aliment Pharmacol Ther 2014; 40: 991–1008

4)長堀 正和:IBD research vol.10 no.3  2016


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