やっと、始まる
私はずっと恨んでいた。
子供の父親を。
こんな事、話したことも無かったし、
加えて自分の気持ちの表面上にも上らないようにしていた。
「全然大丈夫、感謝している。
うまく付き合って行く事については全て失敗したけれど、元気で生きてくれてたら良い。
大変な部分は、全部私が背負うから。」
この気持ち(これもまた本心の中の一つで、嘘ではないところが厄介なポイント)だけにフォーカスし、怖い自分に蓋をして。
恨みに自分が取り憑かれないように、
喰われてしまわないように必死だった。
妖怪になるわけにはいかない、
恨み悲しみが暴走したらもう多分こっちに戻って来れないかもだから、
自分を騙し騙し‥
すごくかっこ良く言って、タタリ神を抑えるアシタカのように。
しかし不思議なもんで、
その恨み悲しみを癒さぬままに日々を過ごすうち、
なんとなくほんのり自分の外見が妖怪っぽくなってきた。(笑えない‥)
気づいていてもすぐには止まれないのが私で、
陰が極まるところまで行ってしまいそうになる。
その間の私のスピリチュアリティは地獄だ。
わかっているのに止まれないし魔を呼ぶ。
それを黙認して陰が肥大化していく‥
陽に転換するきっかけを待っている。
きっかけとなったのは、ある気づきであった。
彼に対する恨みをしっかり感じた時、
ぶっ殺してやる!という言葉が浮かんだ。
なんだーやっぱり自分すごい恨んでるじゃんね彼の事‥
と自分に失望した。
その時、
どうせ自分なんか。やっぱり自分はダメだ。そんないつもの気持ちがやってきて、
死にたくなった。消えたくなった。
私は全責任を自分になすりつけて、
お前が悪いと自分から分離して自分を嘲笑していた。
「死ね。お前なんか死ね。
自業自得なんだよ。お前のせいで私はこんなに不幸だよ。お前を許さない。死んで詫びろ。」
それは幼い頃、
親に叱られる度に自分を責めてきた自分だった。
お前がダメだから愛されないじゃないか。
お前はバカ!お前には価値がない!死ね!!
こんなに強力な自分に対する恨みがあったのだ。
更に気づいた。
私は自分に対する恨みを、
彼に投影して、彼を恨んでるつもりでいただけじゃないか。
私は彼に映された自分を憎んでいただけなんだ‥
ここまで気づいて
私は改めて、彼がどんな人であったのかを思い出した。
彼は私を映し出す鏡としてそこにあっただけだ。
彼は私と出会う前も後も何も変わっていない。
私がひとりで騒いで嵐を起こしただけだ。
言うなれば、自分をいつか殺そうとしている私を洗い出すために、鏡になるべくそこにいただけなんだ。
このことに気づいてようやく現在地がわかったような気がする。
私は彼に出会えて本当に良かった。
これは誰にも説明できなくとも真実だ。
ここから先は、
彼も私も子供も、
各々の人生を行くだけだ。
各々、生まれてきて、今日を生きている。
その真実を感じながらただ自分の道を生きるだけなんだ。
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