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【プロセカ】ツミキさんについて調べてみた

【はじめに】

こんにちは。六日野あやめと申します。

この連載は、スマートフォンゲーム「プロジェクトセカイ(以下「プロセカ」)」を足がかりに、ボカロ曲やクリエイターを紹介するものです。

「プロセカ」を用いるのは、あのゲームが古今東西のボカロ曲を網羅していて、話のとっかかりにちょうどいいからです。


「プロセカ」の曲やクリエイターのことを、もっと知りたい。

VOCALOID音楽って難しそうだけど、気になる。

そんな方のための連載です。

ゲームはあくまで、話題のきっかけ。
「プロセカ」をプレイしていない方も分かる内容です。
(きっかけがないと話せないコミュ障……悲しい生き物です)

連載のコンセプトは、こちら。

前回は、きさらさんについて書かせていただきました。

これまでの記事はこちら。
「ハジメテノオトをあなたに。」|六日野あやめ|note

さて、本日紹介するクリエイターは、

ツミキ

さんです。

先日、プロジェクトセカイへの書き下ろし楽曲「キティ」が発表されました。

キティ

【目次】

・はじめに
・どんな曲を書いてるの?
・ツミキさんってどんな人?
・楽曲づくりを始めたきっかけは?
・ライターのおすすめ楽曲
・ボカロ外での活動について
・さいごに
・クリエイターのリンク
・参考文献

【どんな曲を書いてるの?】

「プロセカ」には「25時、ナイトコードで。」によるカバー「フォニイ」が収録されています。(2023/5/13現在)

星海社新書「ボカロソングガイド名曲100選」にも掲載されました。2021年のVOCALOIDシーンを代表するスマッシュヒットです。

「フォニイ」

「イヤフォンを外したあと……生活の中でも鳴り続ける音楽」を志したという、ツミキさんの新境地。
この世の全ては嘘でできている。愛を求める人たちのことが分からない……。絶望に絡めとられた「私」の嘆きが、リスナーの心を刺します。

その他の代表曲としては、

「リコレクションエンドロール」

また、VOCALOID楽曲ではありませんが、「うる星やつら」のエンディングテーマ「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」も記憶に新しいでしょう。

「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」

VOCALOIDのみならず、日本の音楽シーンの最先端にいるクリエイターのお一人です。

【ツミキさんってどんな人?】

  • 2017年12月15日「トウキョウダイバアフェイクショウ」でデビュー

  • スキャットを多用したスタイリッシュな曲が特徴

  • 投稿した全曲が殿堂入り(ニコニコ動画で10万回以上再生されること)

  • ツミキ。よく「ツキミ」と間違われる

  • 「フォニイ」以前は、モノクロのサムネイルがトレードマーク

  • 楽曲の文字数によって使用VOCALOIDを変えていたが、2021年2月3日にリリースした初のフルアルバム『SAKKAC CRAFT』において、全ボーカルを初音ミクに統一した。

  • 2021年8月より、みきまりあ氏と「NOMELON NOLEMON」を結成。楽曲制作を担当。

ヒットメーカーのツミキさん。
音楽の道へ進んだのは、ご家族の影響が大きいようです。

【楽曲づくりを始めたきっかけは?】


ライブハウスを経営するおばあ様をはじめ、音楽に携わっていた親戚が多かったというツミキさん。

最初に触った楽器は、幼少期(3,4歳)から習い始めたエレクトーン。
自分のやりたいことを尊重してくれる先生から「ルールに縛られなくていい」「音楽の自由な楽しみ方」を学んだそうです。

小学2年生の時にはギターを買ってもらい、楽曲のコピーを始めました。

父親の車でよくかかっていた曲を聴くうちに、自分の意志を吐露すること、なにかに抗うことの美しさを感じて、自分も同じフィールドに立ちたい、と思うようになったんですよね。
(中略)中学生になるころにはすっかりロックにのめり込んで、パンク的なマインドを確立させていったんです。

ボカロP・ツミキが提示する音楽からわかる美学と信念について | スペシャル | Fanplus Music

そんなツミキさんとVOCALOIDの出会いは、とてもかわいいものでした。

【初恋の女の子】

僕の初恋の女の子は、幼稚園に通っていた頃からの幼馴染で、ネットカルチャーに敏感な人だった。10歳の頃、ニコニコ動画を教えてもらった。家が近くだったので毎日遊びに行って、一緒に見ていた。

https://note.com/23ki/n/n4a2f4c43a118

好きな女の子のために見始めたニコニコ動画。初めて見た「メルト」に、衝撃を受けました。

【初音ミク が オリジナル曲を歌ってくれたよ「メルト」】(ryo)

「人じゃないのに、こんなに美しい……」


話を合わせるために聞き始めた音楽に、いつの間にか、純粋にのめりこんでいました。

それ以降も、ハチさんwowakaさんDeco*27さんなどに、衝撃を受け続けます。

【オリジナル曲PV】結ンデ開イテ羅刹ト骸【初音ミク】(ハチ)

【初音ミク オリジナル曲 「裏表ラバーズ」】(wowaka)

【DECO*27 - 二息歩行 feat. 初音ミク】

同時に、ニコニコ動画の「みんなで作ろう」という、リスナーと作り手の対話の雰囲気にも、強く惹かれました。

音声合成ソフト一つの所持で誰もがシーンに参入出来るという仕組みで成り立っていた独特な音楽文化は、当時僕が他で聴いていた音楽の形とは明らかに違う、全く新しいものでした。不完全で雑多で我儘で、クレジットには顔も名前もジャンルもない。そんな無骨で余白だらけの危うさが当時の僕を、どきどき、わくわくさせました。

カルチャ / ツミキ feat.初音ミク - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)


初音ミクの販売元であるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社社長・伊藤博之氏は、2007年ごろのニコニコ動画と初音ミクについて、こう語っています。

初音ミクを使っていい曲を書いたって、可愛い初音ミクのイラストを描いたからといって、それが金銭的な報酬に結び付くとはつゆほども思っていない。表現したいから表現する。その理由は、自分の作ったものを見てもらいたいからだし、それが誰かに届いたということを感じたいからだ。

「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」柴那典(2014年・太田出版)

ブームを仕掛けた大人もいない。金銭的なやりとりもない。
ただ「好き」や「やりたい」という気持ちで、誰かと繋がりたい。

ツミキさんも、そういったニコニコ動画・初音ミク文化を愛した、たくさんのユーザーのうちの一人でした。

ですが、デビュー直前の2017年当時は、VOCALOIDはほとんど聞いていなかったといいます。
なぜツミキさんは、ボカロPになったのでしょうか?

【綺麗な曲ばかりでむかついた】

2017年当時、黎明期を支え続けたクリエイターたちは、VOCALOIDシーンを飛び出し、各方面で活躍していました。
そんな彼らが、初音ミク発売から10年をきっかけに新曲を投稿。

その中には、ツミキさんが衝撃を受けたという、ハチさんwowakaさんもいました。

ハチ MV「砂の惑星 feat.初音ミク」

wowaka『アンノウン・マザーグース』feat. 初音ミク

彼らの帰還をきっかけに、VOCALOIDへの参入を決意します。

ですが、ツミキさんは、2017年のVOCALOIDシーンに「むかつき」を覚えました。

その当時(2017年)は綺麗な音楽みたいなのが主流やったんで。僕は当時それにめちゃくちゃむかついて。
若さとか、わがままさが許されるのがVOCALOIDだった気がするので。

https://youtu.be/uNp7W-ilf7s

「もっともっと自由でいい」

その一石を投じるため、処女作「トウキョウダイバアフェイクショウ」をリリース。

トウキョウダイバアフェイクショウ / tokyo diver fake show - ia

ボカロにしかできず、なおかつ自分を表現出来る楽曲を目指しました。

【この世界を次の世代に】

J-POPにおいては“共感”がひとつのテーマとなっているし、世の中は調和を図ったり、空気を読んだりすることでまわっているんでしょうけど、そういうものを遮断して、自分は(こうだよな、って整理していくのが好きで)社会に呑み込まれずに自分を保っていたいし、刺激的なもの、新しいものを提示していきたい、という美学が変わらずにあります。

ボカロP・ツミキが提示する音楽からわかる美学と信念について | スペシャル | Fanplus Music

他人の共感よりも、自由な自分や「好き」を保っていたい。

そんなツミキさんの願いは、「音楽を好きになってもらうための音楽」をつくることです。

僕の音楽を玄関にして、もっと音楽の可能性を感じてほしい。
そういう音楽が作れたら、僕は本望やなあと思います。

【39chインタビュー】ツミキさん/TSUMIKI【39ch Interview】 - YouTube

【ライターのおすすめ】

カルチャ / ツミキ feat.初音ミク

ニコニコ動画やクリエイターへの警鐘を鳴らしたという曲。思わず踊りたくなるような、キャッチーなサビが最高です。3月に行われた全国ツアー「Thunderbolt」の会場でも流れていた、筆者思い出の曲。

ニビイロドロウレ / nibiiro dolore - rin [オリジナル]

「見た時も綺麗な歌詞がいい」とのこだわりがあるツミキさん。「檸檬サイダー」といったオシャレな単語が並びます(「レモン」じゃないところが、ミソ)。モノクロのサムネイルはwowakaさんリスペクトとの考察あり。

ヒウマノイドズヒウマニズム / humanoid's humanism - miku

ラップ部分と、まるで短編小説のような歌詞が素敵です(字書きなのでつい歌詞を見てしまいます)。「解らないわ!」「僕は僕に擬態している」などのアイデンテティへの戸惑いは、「フォニイ」に通ずるものがあります。

【ボカロ外での活動】

NOMELON NOLEMON

2021年8月より、ぷらそにかのメンバーとしても活動するシンガーソングライター・みきまりあさんと、ユニットを結成。コンポーザーを務めています。


Caligula2

ゲームへの楽曲提供も行っています。
ストーリーやキャラクターの文脈を汲み、あらゆる技術を使って曲に落とし込む手腕には脱帽です。

【さいごに】


ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
クリエイターさんの魅力が伝わったでしょうか。

音楽だけではなく、言葉の力を重んじ、なおかつニコニコ動画、VOCALOIDシーンに対する愛情と、美学を持っているクリエイターさん。

本当に真摯な方だと感じました。

この連載「ハジメテノオトをあなたに。」では、VOCALOIDクリエイターや楽曲、シーンの魅力を発信しています。

ぜひスキ、フォローしてくださると幸いです。
クリエイターさん、楽曲との思い出などありましたら、コメント欄で教えていただけると私が喜びます。

【クリエイターさんのリンク】

youtube
ツミキ / NOMELON NOLEMON - YouTube

ニコニコ動画(マイリスト)
https://www.nicovideo.jp/mylist/60404384

twitter
ツミキ (@_23ki_) / Twitter
NOMELON NOLEMON (@NMNL_staff) / Twitter

instaglam
TSUMIKI(@_23ki_) • Instagram写真と動画

litlink
NOMELON NOLEMON lit.link(リットリンク)

note
ツミキ|note

【参考文献】

「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」柴那典(太田出版 2014年)

「ボカロソングガイド名曲100選」柴那典ほか(星海社新書 2022年)

ボカロP・ツミキが提示する音楽からわかる美学と信念について | スペシャル | Fanplus Music

町屋(和楽器バンド)×ツミキ×かいりきベアが語る、8年ぶりのボカロカバー集「ボカロ三昧2」の魅力 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (natalie.mu)

【39chインタビュー】ツミキさん/TSUMIKI【39ch Interview】 - YouTube

NOMELON NOLEMON「感覚派」特集|メンバーインタビュー&MV出演俳優・未菜ソロインタビュー - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (natalie.mu)

(すべて2023/5/12閲覧)


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