ストリップ劇場は、最強の刺激だ。

2021年9月頭、10日中8割は雨だった。8月末までのうだるような暑さはどこへやら。
一気に湿気と気温の変化が押し寄せてきて、偏頭痛と鬱々が身体を包む。
「あーしんどい」
と個人的に思いながらも、それはツイッターから覗く踊り子さん達の書き込みでも如実に伝わった。
毎日ずっと雨だということ。気温の変化や低気圧からの身体の変調、そしてなかなか終わらず規制規制のこの時勢などで、踊り子さん達も大きな声は出せないものの「お越しください」という気持ちと笑顔が毎日流れてくる。
かくいう私も同じで、大きな仕事を抱えて気が滅入っていた。趣味部屋という仕事部屋に籠りパソコンと睨めっこ。
「あー、気晴らししたい...」
そう言う時、浮かぶのはやはりストだった。思えば4月中にSNAに足を運んだ時も同じような気持ちだったのかもしれない。
行きたかったイベントもコンサートも全部駄目になってしまって、周りから「どうした?目が窪んでるぞ」と心配されていた。アクティブ系隠キャなので外に行けないのは辛すぎる。
思えば知らない世界を見たいがために、ストの世界に足を踏み入れたのかもしれない。
目が窪んで、何か疲れ切った自分を変えてくれるのではないかと。

というわけで、疲れ切った身体を温泉のように癒すべく、横浜ロック座へ行ってきました。
というのも、9/1に推しの香山蘭さんのお誕生日ということもあり新作も見たかったし、お祝いもしたかったからという気持ちからでした。

今回は色々と見たので、演目ごった煮感想です!(あ、もつ煮食べたい)


1、椎菜アリスさん

はじめましての踊り子さんのおひとりでした。
「1周年作」
初日はアイドル系の可愛らしい演目で、華のトップステージということで満面の笑顔と華麗なステップ(ほんと軽やかだった)、特に初日は酷い雨だったので場内は非常にまったりしたのですが、それでもお客さんひとりひとりとゆっくり目線を合わせて、まるで恋人のように寄り添うくまのぬいぐるみを抱きしめながら微笑み掛けます、かわいい、とても(語彙力)
ベットではとにかく爆発力が凄かったー、静かに座る観客達の空気すら見事に巻き込みながら決めるポーズ。そして「楽しんでー!」という思いが伝わってくるような演目でした。


「マリア」
9日に拝見したのは、ギリシャの女神を模したような物語ある一作。普段はハープを奏でるような優雅な時間を過ごす翼を持つ女神、でもふわふわの真っ白な羽扇子を手に入れたことで、夜、秘密のパーティへ行き素敵な殿方と恋に落ちる、一時のときめきに心が踊るが、彼女は無垢な女「神」で...。というストーリーに見えました。
最後は翼も取り戻したけど、彼女は幸せだったののかな...なんて少し切なさも感じる作品だったなぁ...。


2、香山蘭さん

前のSNAでは、反戦歌を見ることに集中していたので、新作寅さんは未見だったので楽しみにしてました。それと休業を発表されてからの新作「mon amour」も、特に。

「寅さん」
寅さんのイメージがコミカルだからどんな作風で来るかと思ったら、まさかのスタイリッシュイケメン寅さんだったー!!(口ぱかーん)
いや、格好はめちゃ寅さんだし、草履も帽子も腹巻きもお守りも全てあるのに、なんていうか2.5次元寅さんなんです。(伝われ)
ぽかーんとしていると、御本家の見事な口上に合わせたコンテンポラリーダンス。この時、口上って落語みたいだしラップ見たいだなぁって響きと踊りを合わせる蘭さんを見て思ってました。蘭さんって後にも書きますが選曲が本当に物凄くて、その曲の解釈を何倍も膨らませて表現する踊り子さんだと思うので、その後の多分、さまざまな街を闊歩するロックダンスも華麗で、綺麗な女性に声を掛けられたか照れた様が可愛いすぎ。ジャズアレンジが横浜に合ってて非常によかったー、その後、書き下ろしの「横浜ロック座」の前で右往左往して入っていく様がコミカルで、口が「3」になってる感じで。「ぐぅぅぅぅぅ」って座席で悶絶してました。おりゃあね、入りませんよ、入らないんですからね、でも舞姫...。み、見ていくかーなんて思いながらさっと暖簾をくぐる様が見えるようで。
それからは蘭さんは衣装変えして美しい「YHRに入ってきた寅さんを完全魅了する」踊り子に早変わり、女性の色気と美しさを思い切り醸し出しながら、まるで扉から入ってきた寅さんが動けなくなるぐらいに。盆で微笑みながら見事にポーズを切る蘭さんに寅さんがメロメロになるってラストに見えました。
そのあとは寅さんは鼻の下を伸ばしながらポラに並んでいる姿まで見えるようで、凄く魅せられて楽しい演目でした。

「mon amour」
テーマは「愛」
とんでもなく大きなもので、表現するには気持ちと覚悟、そして技量も試される一作だと思います。誰もがやろうと思ってできる演目ではないと、いまだに思っています。
使用される楽曲は3曲、しかしそのどれもとても難しく先程言った「楽曲の良さを増幅させ観客に伝わるようにする」ようにしないと、とても内輪向けにしかならない感じになったのかと思います。
3曲とも私的にとても曲自身が持つ力が強く、特にM2は前もって調べた候補の中にありましたが「まさかこのバージョンでは来ないだろうな、難しいし...」と思っていた曲でした。しかしそれができるとしたならとんでもないとも思っていました。蘭さんは挑んできたと思います。正直、ビックリした。
M1では「親子愛」
子を思う愛、親が子を思う愛、そして苦労ばかり掛けたと嘆きながらも大成した息子が思う愛、沢山の愛があって。蘭さんが頭を覆う一枚の手ぬぐいが時にねじり鉢巻になって、綱となり、夜なべする母のほっかむりとなり...と次々と見せる情景描写は見事。衣装がシンプルな黒だからこそ曲の力強さや泥臭さが如実に伝わってきました。M1から圧倒。
最後に母が口ずさむ優しい歌、息子の心に残る優しいお母さんなんだろうな...と。
M2では「激愛」
とにかく曲が強い、物凄く強い。そしてとんでもなくリズムが難しい。これを見事に10日間で進化させてきた蘭さんの心に拍手。愛を歌いながら、貴方と一緒にいられるなら...と全てを捨てる覚悟を持つ女性。先程は舞台が日本だったけど、一気にヨーロッパにやってきた気持ち。彼女はフランス人か、それともドイツ人か...エッフェル塔が勝手に頭に浮かんで、何だかいろんな思いが駆け巡りました。楽曲の力強さにまるでセッションするように邪魔をすることなく、波に乗るように踊る蘭さん、凄いです。
M3では「巡り来る愛」
なのかなぁなんて思いました。舞台は一気に南の方になり、穏やかで光ある楽曲へ。
衣装は白になり(M2から)美しくはためかせ盆で微笑みながらポーズを次々と切る。

「しばしのお別れ」

そんな切ない気持ちで見守ってました、とってもキラキラとした照明でしばらくはもう見れなくなるかななんて思ったら急に寂しくなってきて。

今回の楽曲には「平和」が軸にされた楽曲が多い気がします。特にM1、M2を歌われている、製作された方は同じ方で被爆体験をされたり、様々な愛について問いてこられた方という共通点が。M3では舞台となった地の悲しくて忘れちゃいけない戦争の記憶が。
反戦歌ではストーリーがあったけど、今回はあまりにスケールが大きくて「自分たちで調べてみること」にも意味があるのかと思いました。
激戦地となった地には「50年、地に草も生えない」と言われていましたがその後、新芽が芽吹き、緑が戻りました。
蘭さんは一度、舞台をお休みされるけど、きっとこの最後の楽曲のように「返り咲く」のだろうと勝手に信じております。

本当に素敵な演目を、ありがとうございました。


3、早瀬ありすさん

今回、はじめましての踊り子さんのおふたりめです。

「ナポレオン」
色んな踊り子さんのお衣装を見た中で、中世とクラシカル、キラキラという女子が大好きな要素をてんこ盛りで颯爽と現れたありすさん、すっっごくカッコよかったです。
コーデュロイのマント、真っ青なハット、ドレス、ブーツ、そして馬。
早着替えというよりも、どんどんお洋服を脱いでいくような演目で途中では鞭を手に持つと元気に振り回すという、自由奔放なナポレオン像を表現されてました。

鞭の音、すごかたねー...。

個人的に帽子を脱ぐと、月桂樹のキラッと光る王冠が見れて胸がときめきまくりました。ああいうの弱い...。
ベットになるとナポレオンの苦悩を表現するように、初めに着ていたマントを羽織り下はショーツ以外は身につけないスタイル。こういうの凄く好き。
マントの使い方好き、盆で脱いだ後にそっと床に広げるのですがまるで赤絨毯かベットシーツみたいになって、一人で苦しむナポレオンの心が伝わってくるみたいでした。
最初の楽曲と最後が全く同じという感じなのですが、それがとても強いテーマというか、心に強く沁みました。

2つ目の演目は、お買い物とパジャマパーティの女の子のお話。
とっにかくかわええ!!「しゅきぴよ」「ぴえん」「ぱおん」なんて普段使わない勢からしたら、何?あの原宿とか歩いてそうな子はー!!!(鼻血)って感じでした。
キュートなゆめかわ系の女の子の夜を、まるっと覗き見にしているかの様な謎の罪悪感。
ふわふわの部屋着に着替えたら、ベットに横になるけど夜になったら何だか...脱ぎたくなって的な感じで。この演目では髪の毛を解いてロリっ娘度がとにかく凄かったので、破壊力はばつぐんだ!!
あ、そういえばフィナーレで蘭さんのお尻をこっそりつついてて、微笑み合っているのがめっちゃ眼福でした!!!


4、ゆきなさん

6月中、川崎以来の二度目ましてでした。
ゆきなさんと言ったら、サイダー星人!というキュートでポップなイメージが強かったので、今回拝見した「待夢輪舞」と「あたらよ」のあまりのギャップにビックリした一人です。
そして初ポラも行ったぞ、うぉぉぉぉぉぉぉ〜(謎の雄叫び)

「待夢輪舞」
実にしっとりとした演目。
個人的にしっとりゆきなさん、とても好きだなあと心奪われた演目でした。
はじめはゴスロリ系のドレスで、盆の上では何かに閉じ込められたかのように悲しげに「外に出して」と手を叩く仕草をする少女。
衣装変えをすると真っ白なヒラヒラのドレスを纏う少女、そのはためかせ方がねぇ...なんていうか一枚の絵画みたいに見えて。だから浅草で真珠の少女の題材の演目をされたと聞いてここで初めて凄く納得したというか。
水音も演出上、音にあったというのもあるんですが、ずっと少女が美しい川辺や森に降り注ぐ緑の中に佇んでいる様に見えて。
ポーズのひとつひとつが本当に綺麗で魅入っちゃいました...。

「あたらよ」
先週、初出しをされたという新作でした。
先程の待夢輪舞がとてもカラフルで淡い色合いのお衣装が多かったのに対し、こちらは髪のリボン、靴、ストッキング、衣装ぜんぶ「黒」!
シンプルな衣装でも、その長い手足が凄く映えてめっちゃクールでした。テンポの早い楽曲をすっすっすっと軽やかに踊るゆきなさん、でもゆっくりの見せるところでは悪戯っぽい流し目で客席を一瞥。
なんというか、独特の緩急が凄く心地よくて癖になりそうでした。

ポラにも初めて並びました、とにかくお客さんとの会話が楽しそう!行ってみたい!という魅力が詰まっていて、お客さんが多いのも頷けました。
実は次のことにゃんさんのポラで緊張する事案を自分が作ってしまい、演目の感想と共に一言励ましてもらおうとお願いしました。
すると、真っ直ぐな瞳と声で「がんばって!!!!!!!」と言われ、オタクは吹き飛びました。
いや、あんなに真っ直ぐに人を励ませるとか...。おかげで頑張れました、この場を通じてお礼を土下座で申し上げます、ありがとうございました!


5、星崎琴音さん

5月の横浜以来の2度目ましての、ことにゃんさんでした。
以前、一度ポラも撮らせてもらった時に、何だか凄い勢いでコメを書いていただき圧倒されていたのです。あんなに綺麗で人気もあって客対応も良くてコメまで凄い。物凄く努力の人なんだろうなと思って、ぜひ機会があればまた拝見したいと思っていました。

「レイン」
最近、出されたという新作でした。
実は日を跨いで後半に見た時に、登場された時に顔を多い尽くすヴェールで悶え死にそうになった人はこちらです。
クールな琴音さんを存分に堪能できる一作だと思います。和服で和傘、クールな眼差し、でも琴音さんって凄く愛らしい感じの方なので、隙を見せつつも傘に仕込んだ刀とかでばっさり敵を殺りそうだとか思いませんか?(突然の問い)
M3では、もうはじめ聞いた時は鳥肌が立って...。推している作品の「勝ち確」曲がまさか流れるなんて...。そしてその間に帯を解いてお衣装変え。
ベットでの琴音さんって、優しそうな顔をしつつも突然アクロバティックなポーズに移ったりして見てて凄く面白い人だなあと思ってて、その色んな面に面白みを感じた一人でした。
ちなみにその後のポラで作品のことを話すとお互いに好きなことが分かり、オタク嬉しい、ちなみに推し被り、オタクめっちゃ嬉しい(同担歓迎)

「サマータイム」
ある意味、私の9月頭のスケジュールを全て書き換えたといっても過言ではない人気の一作。
内容は夏の女神が黒ビキニで白いシースルーシャツを羽織って、イヤリングカラーを光らせながら終わりゆく夏や、夏って楽しい!って全力で楽しむ演目...だと思います。
しかし私にとってはある意味、偶然のタイミングで演目途中で「カッ!」となる事案になり、その後は演目も全て吹っ飛んでしまい、頭の中が仕事モードになってしまったんです。
今まで祭音の六景の二次創作作品などを書いたことがありましたが、踊り子さんの個人演目でなるなんて(完全プライベートだから)初のことでしかも演目見ててなるなんて、まるで思わなくて...。
ストってある意味、身体の全てを拝見できる機会なので表情、髪の動き、骨格、瞳など限られた時間でありながらも見ることができて、やはり想像力を強く掻き立てるきっかけが大きいのだと思いました。
私はまだことにゃんさんのことをそれほど知っているわけでもないし、演目だって拝見しているわけではないけど、その日見た演目から感じられるイメージなどが大変参考になり、ポラ対応やTwitterで拝見する限りの「少しやんちゃで可愛い琴音さん」ではなくて、ほぼ初見から見た踊りから感じた「美しさ」や「セクシー」「カッコいい」をより強く汲み取ることができたのかなと思います。
作品は10日間で仕上げました。ただただ、ことにゃんさんに感謝です。
(ご本人には既に通達済みです)


そんなこんなで私の10日間は終わりました。蘭さんとのしばしの別れと、まさかの想像力が掻き立てられ「ほらやるよ!」と自らの尻を叩くような事態になりましたが、自分への挑戦となって大変でしたが、面白かったです。
まだまだ湿気が強くて、暑くて寒い。そんな中でも、私はまた劇場へ足を運ぶと思います。

スト劇場は、最強の刺激である。

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