水無月、川崎で雨上がる。

「6月頭は神香盤ですわ」

ストリップを見始めてから1ヶ月弱。
私はすっかり劇場とストリップを楽しむ観客の一人になっていた。
4月下旬までストリップの「ス」の字も知らなかった私だが、その激流に潜り込んでいくうちに様々な劇場、十人十色の踊り子さんがいることを知っていく。
そして6月頭の川崎ロック座は大変、暑い、熱い、アツい香盤であることも知ってしまった。オタクがストリップに魅了されるとこういうことになる。
冒頭の一言もその気持ちの現われのようだった。
数は多くは行けないが、できるだけ足を運んで心と目に焼き付けようと気合を入れていた。
さて前半に行った日はひどい雨だった。加えて風も吹いていた。傘を差すと川崎駅を出た時から吹き飛ばされそう。西日本では大雨洪水警報も出ている。
まったく、こんな「晴れの日に」...。
と、むかしから超絶雨女の私は心の中で恨み節を唱えていた。確か前のみぃななちゃんの川崎のときも雨だった。今回は暴風までついてきた。水に何かと縁があり、何かあったら溺れるか沈むか膝や腹に水が溜まるかと占いで言われてきた女だ。楽しみにしてお金も貯めていたのに、雨は無いだろうとぶつぶつ唱えながら劇場前に着いた。
前回の川崎の教訓からせめて座って見たいと思いオープン前に並ぶ。既に常連客が数人傘を差して列を成していた。
雨が酷くなってきたので劇場側が開場を少し早めて入場させてくれた。
列が進むと名物の入口の亀たちは恵みの雨だ!とばかり、少しばかり元気そうに見えた。
前は場内は人だらけで息苦しかったけれど、今回は朝一ということもあり人も落ち着いていていい席に座ることができた。
...盆少し横席。以前はこんな近く絶対無理とか思っていたのに、チャレンジできるようになっていた。というか6月頭楽しみにしてたので、オタクは世界に没頭できる席を狙っていた。客観的にも見れて、主観的にも見れるようになった、それは良いことだ。

「女性なのに盆近くで見るのかよ」なんていう他人の目など知るものか!

そういえば今回気づいたのですが、劇場の照明も色々と特徴があることに気づき川崎は特にドラマティックな色使いやスポットライトの使い方をしているなぁと感じました。
そのことを少しだけ踏まえて読んでいただけると嬉しいです。

定時、ブザーが鳴ると注意事項が放送されついに開演です。


1番 沢村れいかさん

皆さん、覚えていらっしゃいますか?
私が初めてストリップをSNAで見て目にしたのがれいかさんでした。赤西さん、小宮山さん、香山さんと同期組のお1人。私はSNA以来の劇場での鑑賞です。

1回目は華やかな和の装い、傘を片手に嫋やかで鮮やかに舞うれいかさん。踊りの中にぱしっと傘を開くシーンが実にカッコいい。途中で真っ赤な襦袢にステージ上で着替える場面があり、そこで使われていた楽曲がもともと大好きで、一気に「情念」を背負った表情になってドキッとした。照明ももちろん真っ赤だ。
たおやかで会場に目線を配りつつ盆で服をゆっくり脱いだら背中に光る汗、こんなに近くで見れば汗もしっかり見えて、踊り子さんの汗大好き人間としては嬉しいポイント。
帯を解いた後、すっと綺麗に畳んで盆に置くのも上品でいい。
沢村さんの踊りを見てて思ったのが、沢村さんは表情がクールで流し目がカッコよく何より

この方、体幹がハンパない。

くるりと回っても全くブレず安定さが圧倒的。傘を手にしてぐるんと腰を回しても、盆の上で足をバネにぐるんと回ってポーズを決めても絵になり見事に決まっていた。

2回目はTwitterでも噂の「4テンション」
客席を煽りまくり、息もつかせぬほどのダンス!ずっとダンス!とにかくずっと踊りっぱなし!そういえばSNAで見た2回目のK-POPに合わせたダンスもものすごい運動量だったよなと思い出した。背中を伝う汗、盆に行っても勢いは衰えず、むしろもっとボルテージがぶっこわれるくらいに客を煽って「もっとー!もっとだー!!!」と言っている気がした。
沢村さんの汗がぱああっと飛び散り満面の笑顔で彼女が笑うと「まるで太陽みたいだ!」と胸が熱くなった、先程の1回目の演目でも思ったことだが沢村さんの踊りで共通して感じたのは「体温が宿る踊り」だった。
笑顔も、汗も、キレ良いダンスもポーズも、沢村さんのアツい思いがこちらにもじわっと赤外線みたいに伝わってきた!まるで温泉効果!

ポラダブルだったので香山さんに並んでいることが多くて、沢村さんのに参加できたのは3回目だった。既に最後らへんで行こうかどうか迷ったけど、沢村さんは私を笑顔で迎え入れてくれた。舞台上のクールビューティーはどこへやら。元気で明るく何より優しく話を聞いてくれ、私がSNAで初めてストリップを見れたのがれいかさんで、見れて嬉しかったことを伝えると本当に喜んでくださりました。脱いでいたのに、衣装着れるよー!と気を使ってくれてポラもパチリ。
ありがとうございました、と去ろうとした時にくれた言葉がすごく嬉しかったので、裏覚えですが書き残します。

「何度もストリップ来てくれて本当に嬉しい!これからもまた来て、色んな踊り子さんや演目をいっぱい楽しんでね!」

何気なく言ってくれた一言かもしれないけれど「初めてがれいかさんで本当によかった」と思っていた側からすると、本当に涙が出るぐらい嬉しかったのですよ。何度も勇気を出してストに来て良かった、この方、ほんとあったかいなぁ。

2番 香山蘭さん

SNAではじめて拝見してからすっかり”推し”になった踊り子さん。
蘭さんが川崎に入られたことで「ぃやったぁぁぁぁぁ!」と生きる糧になったのは秘密。
メイドバーで色々とお話ができて嬉しかったのですが、やはり踊る姿が見たいなと思っていたので願ってもないことでした!嬉しい!
川崎で見た感想を総括すると「俳優」でした。蘭さんは舞台を支配し、自らの世界をぶわっと広げる、見た後どっと世界観に没頭しつつ、与えられる情報量の多さからぐったりしたのは蘭さんの演目のあとが多かったかと。

1回目は赤西涼さんの演目を借りた「花魁HR」
3回目までいたので、2回見れたのですが最初見た時と、念願の蘭さんの和服姿での舞いだったのでテンションが上がる上がる。真っ赤な照明ではじめは姿のみが映し出され、妖艶な花魁が登場します。圧倒的な存在感と色気、そして茶目っ気を感じさせる花魁。
ゴリゴリのハードロックで男と女の感情と汗と身体が混じり合う「夢の一夜」を演出する花魁。
花魁にまるで掴みどころがなくて男性を誘い床で致す...という感じに思っていたのです。
盆に乗った時、もう周りが夜も更けて周りは真っ赤な照明と華やかな襖がずらっと並んで布団の上で交わう男女を見ているようで、もう客という感覚じゃなくて、私は襖だったのですよ。蘭さんの目線って不思議なもので空間を感じさせて、目の配り方が盆の上だと一部屋ぐらいしかないんですよね。目だけで感じさせる空間操作、花魁の部屋感が強くなる。
圧倒的な蘭さんの花魁を見ていると私はもう人間ではなくて、空気になりたいと思わせるくらいの迫力。凄まじい。
2回目見た時、違う場所で見たことでまた捉え方がまるで違ってきました。
ここからは個人的主観となります。
主人公は上昇志向が強い花魁、その日の客は商家の女性経験が少ない若旦那。これ幸いと花魁は余裕のある表情で若旦那を誘い込む、酒と美しい舞いで酔わせると湯浴みを経てゆっくりと手を引いて部屋へ。ゆっくりと手解きをするように若旦那に夜伽に導いていく...。
という感じ。見えない男性に抱かれていても表情は余裕で、映画「さくらん」の男性に抱かれながらも妖艶な笑みを浮かべる花魁の姿をふっと思い出しました。この夜を過ぎる頃には、若旦那の心も身体も花魁のもの、いずれは栄光も富も手に入るだろうという立ち上がり。まさにウイニングラン、花魁の完全勝利。
女の業と欲が隠れ見えて「花魁、すっごい怖い」と思えてしまった作品でした。個人的主観終わり。

3回目、後日見た時は蘭さんの目線でまるで空間操作が幻ではなかったかと注意してみてました。例えば初めに周りを見渡した時は客席を含めて。夜の男性と接し踊りなどを見せる時は彼だけに目を配り、盆で男性に抱かれる時は彼と敷かれた布団、盆の外には全く目線はなし、むしろお客さんともあまり目も合わせず。だから余計に盆が部屋で真ん中に布団が敷かれ、男性に抱かれている気がしたんですよね。目線の魔力って凄い。

そんなことをいつものようにあたふたと伝えると、またポラではいつものようにふわふわした笑顔で「どう捉えるかは人それぞれですよ、うふふ」と言われて、花魁のときとポラの蘭さんとまるで別人で「一体、蘭さんって何人いるんだー!!」と混乱する私。
ポラも沢山撮ったので、可愛い姿や背中、立ち姿、妖艶な姿、笑顔と沢山残せて、オタクは凄く嬉しい。

2回目は「RAiN」
傘を差して、雨が降る空にそっと手をかざす女性。
その日もリアルで雨、しとしとと降る冷たい雨に少し顔を曇らせる。しかし傘を片手に踊り出すといつしか雨は暖かな雨に早代わり。
この演目も和装で青い羽織が少し切なく。あんなに裾が長いのに巧みな足捌きで華麗に舞うスキルが凄過ぎる。
羽織がふわっとはためくと、蘭さんの纏う香水の香りが空から降ってくる。
盆へ移ると、寝転がり動きがスローモーションのように天に向かって手を伸ばし、自らを抱きしめる。
青い照明も相まって、まるで金魚鉢のような丸い水槽に澄んだ雨水が溜まっていって気持ちよさそうに蘭さんが泳いでいるようだった。青い羽織をすっと落とすとするんと水が流れていくみたい。
真っ赤な高いヒールが盆の外でまるで「憧れ」の象徴のようにあり、それを見つめる瞳がキラキラしていた。最後は立ち上がりでヒールをゆっくりと履いて舞台にすっと立つ。
雨に最後まで打たれていたけど、最後は憧れを身にまとい満足げにポーズを取ると希望が最後に見えた気がして、泣けた。これはヒールを履く機会がある女性だからこそわかる感情かもしれない。
ちなみに後半verでは髪飾りはなくて、ショートカットの地毛のままで踊っておられました。髪の毛のふんわりと掻き上げる大好きな仕草が見れて実に眼福でした。しあわせ。

3番 武藤つぐみさん

蘭さんの余韻を楽しむ暇もなく、突然現れたエンターテイナー武藤つぐみ。
浅草で劇場を教会(個人的主観)に変えた彼女は、今回どんな演目を見せてくれるのか!?
不思議な魅力で引き込まれ、すっかり推しのお1人に。

1回目は「GSM」
「無糖」と銘打たれた学生服とギラギラの学帽、猫の写真がバチバチ貼られたスクールバックを被った少年がいた。その側には椅子が置いてありデカいスケッチブックが置いてある。
右手には何やら星と包帯。なんだろう、オタクの黒歴史をぐいぐいといい感じの指圧で押してくるこの感じ。さて無糖くん、カバンが突然重くなったり、動かなくなったりとパントマイムを見せ登校、スケッチブックを手に盆へやってくると唐突に観客の絵を右手の疼きと共にさらりと書いてキスマークをつけてプレゼント。
そのあと舞台に戻り椅子に座るとそれまでのコミカルな雰囲気とは一変。急に学帽を脱いでポーズを決める。
...なんだ、少年。突然むわんと色気出してきたぞ。嫌いじゃない。
そのままダンスへ移り、勢いよく盆へスライディング。洋服を次々と脱ぎズボンを丁寧に畳む。嫌いじゃない。
ぶっきらぼうに洋服を脱ぎ捨てると、男装とか女体化とかでありそうな包帯が胸に巻かれており、ショーツはボクサーパンツ。すぐ近くで靴裏が見えたがとても小柄だと思い知った。

嫌いじゃないよ!!!!!!

悔しいが武藤さんの掌で転がされてる感が否めないが仕方ない。
少年は厨二病を煩わせて手が疼くようできっと言動も痛い。しかし脱いでみると小柄な女の子なのだ。「見る?」とお客に聞きながらも、音に当ててショーツを抜くと見事にポーズを決める。
そして袖に引っ込むと某パーカーを羽織り刀を持って現れる。青く透けるショールで「呼吸」を表現しているのだろう、おもむろに刀を抜くとそのままばしっとポーズを次々決めていく。
きっと某主人公を表しているのは分かる。しかし”わざ”と完璧ではない「厨二病に憧れるがなりきれないダサさ」を目一杯出してくる。姿鏡の前でアニメやゲームの主人公に憧れてポーズを取ってみた、きっと誰もが体験している「気恥ずかしさ」「青臭さ」である。「スト2やりに行こうぜ!」と駄菓子屋に誘いたくなるあの感じ。
男でも女でもない、謎の生命宿る生き物感が溢れ出てるように感じた。

2回目は「mu-天流王」
ビジュアル系バンド風のウィッグと某少年漫画誌に出てきそうな肩パットが凄い衣装を身につけて登場。ちょっと懐かしいビジュアルバンドの曲を口パクで歌う。
武藤さんのポラ館の演目は初めて見たが、目が爛々としてて面白そうに踊るのが見ててノってしまう。ストーリー性のある演目ではあたし空気になると言っておきながら、こういう楽しめそうな演目では客としてイエーイ!!と楽しみたいのだ。
曲が終わるとウィッグと衣装をポーンと袖に取ると、下にはこれまた少し懐かしいカゲキなナツ系の衣装が。この曲といったら爆風なのだが、武藤さんが持つのはちっちゃなハンディ扇風機。

ちっさ!ちっさ!めっさちっさ!絶対、風足らん奴やん!

大爆笑しつつ見つめていると、自らにとにかく小さな風を当てて演出している。きっと私たちに見えなくても彼女の周りは、リアル外で吹き荒れてるような爆風で吹き飛ばされそうなのだ。と、いいつつも客席に扇風機を当てて風を送ってくれた。私も送られた、オタク嬉しい。
そのあとは扇風機をぴょーんと置くと舞台上で一際輝いていたエアリアルリングへ飛び乗る。私はまだ回数は見ていないが武藤さんがくるくると回る時の頭の動きがとても好きだ。妙なリズムがあって目が離せない。これから始まるんだな!と期待感が上がっていく、ポールの上で腰あたりで回りながらバランスを保つと照明が、彼女を逆光のように映し出す。
ドラマティック!
ポールから降りると、盆へやってきてリズムに合わせて洋服をゆっくり脱いでいく。自らの武器でもある身体の柔らかさを使ったポーズ。私がどう逆立ちしたってできないポーズを次々と決め楽しそうに目を輝かせる。それから本舞台に戻るとまたマイクスタンドで、はじめと同じバンドの曲を歌いながら終わり。
武藤つぐみという世界が織りなす少し不思議な世界(SF)を体感できて大変楽しかった。

後半の新作「May Blue」
6日からmu-天流王が天界に戻り、代わりに舞い降りてきた一作
幕が開くとエアリアルリングに乗る裾の長い真っ赤なドレスを着た少女が現れる。
武藤さんは長い襟足をしまいショートカット姿になり、ぐるぐるとリングの上でポーズを取ったり高速で回ったり。その時、自分が劇場ではなくどこか雲の上にふっと浮かぶような感覚。武藤さんはキャンドルに宿る一本の炎のよう。
リングと遊んだ後、地上に降りると真っ赤な衣装を脱ぐと袖で衣装変え。ロングドレスとヘッドドレス。イメージ的にミレーのオフィーリア。
コンテンポラリーとバレエを掛け合わせたような優雅な踊り、燃えた炎をそっと見つめ、身体を大きく使いドレスがはためくと目を奪われる。盆が青く光りうつる前にそっと水を掬うように手を伸ばす。
盆に移ると表情が一変した、苦しさと悲しみと嬉しさと色々な感情がこもった表情。うまく言葉にできないが胸が苦しくなる。そして近くでドレスを脱ぐと少女だと思っていたのに大人の女性であることがわかる、炎から少女へ、少女から成長して女性へ。立ち上がりでは劇場内がシロツメグサの花畑に変わったかのような気がした。
武藤さんのダンススキルの高さや言葉にできない感情が押し寄せ、結構盆に近いところに座っていたのに涙が溢れ出た。
「私が私を形作るのではなく、支える何かが私を形作っていく」

そしてポラのお時間。
もちろんはじめましてでした。そろりと行くと毎回ほぼすっぽんぴんで現れる武藤さん。
洋服なんて飾りだ!といわんばかりに自然体で迎えてくれました。話すと普通の可愛らしい女の子、しかしオタクはどこか感じる、特有の奥底に同じような香りを。
ということは置いといて、演目のお話や某鬼を滅する作品についてや私が最近好きなむとーさんのナイトルーティーンの「ヨガデモスルカ」の話とか。しかし予期せぬうちに、ほぼすっぽんぽんなのでポーズを取ってもらってもなんかけしからん写真みたいになってしまって、衣装ポラしか撮ったことなかったのに、スト歴1ヶ月で奇しくもエ◯ポラっぽいのデビューになりましたとさ!武藤さんにはエロ◯ラになるーと焦った姿を見られて「おお、おめでとうー」と言われたけど。
武藤さんはポラがとても面白くて、個人的に写真を撮ることが好きなので被写体として想像力が掻き立てられる方だなあと思いました。何度も撮らせてもらったけど「もっと!」という気持ちになる方でした。

4番 友坂麗さん

6月頭で17周年を迎えられる友坂さん、おめでとうございます!
今回の川崎組で唯一はじめましての踊り子さんでした。でもツイッターで繋がった方が押していたり、ツイッターも拝見していたのでとても楽しみにしていました。印象ではカッコいい見た目だけど、文体や動画では非常に品がある方だなぁと思っておりました。

1回目は「弦月」

周年作です。
真っ白な和服で現れた麗さん、すっと現れた長い黒髪の友坂さんの目つきは実に涼やかで巧みに和服で踊る姿は、楽曲も相まって凛々しくもどこか切ない印象。
でも、次の曲で和服を脱ぐと現れたのはゴールドの華やかなドレス!楽曲も明るくなって本舞台、花道、盆と縦横無尽に長い手足と、印象的な長い髪の毛を揺らしながら激しいダンスを行きつく暇もなく踊っていきます。
ふっと音楽が終わると、何やら本舞台に薄い布がすっと引かれた。川崎のドラマティックな照明がふっと当たり、布の向こうで友坂さんがドレスをざっと脱ぐ。ドレスの音と、照明が当たると、さながらゴッホの絵画のようで、私は色合いが映画の「バグダットカフェ」みたいなぁだと思いながら見ていた。
一死纏わぬ姿に白いひらっとした短いドレスを着ると、布で自らを巻きつけて静かに佇む。
布と共に花道までやってくるとすっとポーズを取る。
友坂さんといったら長い黒髪というイメージがあって、美しい髪の毛をいかんなくぶんっと振り乱しながら盆でひとりひとりに目線を合わせていった。
その時に、それまでの涼やかな感じではなくて凄く優しく本当に客席を見ていて、見つめられると不思議な気持ちになった。
皆の瞳を奪うように盆でゆっくりとポーズを着る友坂さん、髪の毛が盆に広がる。まるで生き物のようで不思議な気持ちになった。
何度も不思議な気持ち、と言ったがマジで見てもらえたらそうなると思う。
楽しいでも、悲しいでも、切ないでも、綺麗でもそういう感情を全部ひっくるめてなんだか見入ってしまいました。

2回目は「Junming!!」
白と黒のふりっふりのドレス、黒いロングブーツで登場した友坂さん
先程の周年作とは全く違う、髪の毛もポニーテールに括り一気に可愛さ大爆発。
昨年めちゃ流行ったなわとびダンスを難なくさらりと踊りきり、そこからもずっと踊りまくり。お客さんも巻き込んで友坂さんの大人っぽさと少女も感じさせる悪戯っぽいスマイルが劇場めいっぱいに広がっていった。途中で腕に飾っていた飾りを手首に移動させると見た目が「シュシュ」にも「応援用のポンポン」見える小道具の魅せ方の不思議
盆に着く前に衣装変えでポニーテールを解き、黒髪を下ろし衣装を脱ぐと、下から現れたのは裾の黒いアシンメトリードレス。えっ!そんな衣装、どこに隠れてたの?!と思いつつも、しっとりしたナンバーで花道を寝そべり、転がり、時にはお客さんと瞳を合わせながらゆっくり盆にたどり着くと、真珠が連なった見た目が凄いTバックのショーツを取った。
ポーズを切るときの曲は一気にテンポ良いポップ曲に変わり、盆でも舞台でも曲に合わせてジャンプジャンプ!汗をたっぷりかくハイカロリーな演目でした、見てて楽しかったー!
弦月が美しくどこか絵画的だったのに対し、Jumpng!!が可愛くて元気が貰えそうな、麗さんの演目のコントラストがとても魅力的でした。

後半、参加した時にはじめてポラに並びました。OPショーでは本当に丁寧に一人一人の目を見つめているので、まだ恥ずかしくってなかなか見れない私は申し訳なく思っていたのです。すると友坂さんはいいんですよーと微笑んでくださって、なんだか話してて妙にここが劇場ではなくて「会社のオフィス」感が強くなって、優しい先輩に話を聞いてる後輩のような気持ちになりました、物腰しがとにかく上品。ポラでは、あのう、笑顔もらいました。

5番 小宮山せりなさん

はじめて見たSNA以来の小宮山さん。「宵闇は開く」「市」を拝見して、あまりの迫力に私は感想も言えず演目が終わっても衝撃で立ち上がれませんでした。。今回はその雪辱を晴らすべくポラに行きましたよ!

1回目は「OL」
みなさま、覚えていらっしゃるでしょうか?SNAで香山さんが踊ってらっしゃったのがこみぃ姐さんからお借りしたと伺っていたOLの演目でした。つまり今回、やっと御本家のOLが見れる機会が来て感無量でした。これでまさにコンプリート!
蘭さんのOLがとにかくセクシーで会社の男性全てを骨抜きにする系OLだったのに対し、小宮山さんのOLは一見普通の可愛い総務部のOL(個人的主観)がものすごく実は脱いだら凄いんですよ!的な要素を強く感じました。
業務をしたりしながらも、お客さんの顔を描いて渡すサプライズがあったりする楽しい演目。しかし制服をゆっくり脱ぐと普通のOLとは、絶対的に何か違う筋肉の美しさが目に入ってチカチカ。制服の下にはますますミニスカートとガーターベルト、確か香山さんの時にはタイトスカートだったはず。。小宮山さんのガーターベルトは、見た目が普通のOLなので余計に「見ちゃいけないよ」という罪悪感が半端ない。そんなOLが椅子の上をぐるんぐるん周り、回る盆に椅子を乗せながらアクロバティックなポーズを次々と!!
小宮山さんの良さのひとつが「汗」。背中に、額に飛び散る汗が本当に綺麗。照明に映し出され、とても今回も輝いていました。
ありがとうございましたー!と退場後、一考。

OLとは?(宇宙猫)

2回目は周年作です。小宮山さん10周年おめでとうございます!
幕が開くとドレス姿の小宮山さんがいつものように微笑み、側にはダンスポールとエアリアルシルク、、、!!!
なんと小宮山さん、ポールダンスとエアリアルの2種に挑戦!
さすがに震えましたな、これはお客さんに向けた演目でもあるけど、小宮山さんご自身との戦いのような演目なのだと感じ入りました。
1曲目はダンサブルな曲ではじめからフルスロットル!舞台を大きく使いはじめから汗をかいていく小宮山さん、2曲目になるとポールに飛び乗りポーズを決める、考えれば太ももとかあれ痛いよね、慣れているからあれだけど痛いやつだよね、と思いながら見守ってました。そこから盆へ移り汗だくで笑顔を絶やさぬままポーズを決める。曲が移るとまとっていた衣装をほぼ脱ぐとシルクに身体を巻き付かせる。ずっと動きっぱなし、なのに最後にシルクをもってきたー!!!布を身体に巻き付かせぐるぐる回る、次第に動きは高速回転に。そして汗がぱあっと飛び散る。汗も衣装のひとつ、とっても綺麗、思わず拍手を忘れるくらい。つられるように大拍手。

OPショーでは少し恥ずかしげにタオルを持ってきて床に流れ落ちた汗を拭き取る小宮山さんが非常にキュートでした。
今回は初ポラに参加してエコバックを頂きました。その時にSNAでの感想を伝えると、凄く恐縮されていて、舞台ではあんなにパワフルな演目をいかんなく見せるのに、ポラになると一気に腰が低い可愛らしい方できゅんとしました。ちゃんと伝えられて良かったなぁ。

6番 赤西涼さん

川崎のトリを飾るのは、浅草ぶりの「人魚姫」赤西さん。10周年おめでとうございます!キラキラとした瞳が特徴的な踊り子さん、今回は10周年ということでどんなお姿見れるのか楽しみだったのです。

1回目は「白」
コンセプトは白。登場の際、華やかな真っ白なドレスに身を包んだ赤西さん。メッセージ性があるバラード曲で感情豊かに踊られています、赤西さんははじめて見た時からやはり瞳の力がとても強く、ネイルがとても綺麗で指先の表現力が特に高いと感じました。
決して言葉に出して何かを言うわけではないけど、表情で語れる踊り子さんの1人だと思います。途中で白いドレスを脱ぐとゴールド柄のラテン風のビキニ!ヒールで舞台上を踊りながら会場を赤西涼色に変えていく。
衣装変えすると真っ白な長いドレス。ここで曲が「多分思い入れがあるんだろうな」と伝わる熱い曲に。一日一日を大切に、希望を持ってというポジティブな思いがまっすぐ伝わる盆でのポーズ。スタイル抜群すぎるのでひとつの動きが映える映える。
後日会ったいばらきさんから、周年イベントでの赤西さんのコメントを教えてもらって余計に胸にぐっっと来る一作。この演目はストリップを愛するすべての人に伝えたい一作なのだと思いました!

2回目は「赤」
個人的にとんでもなく衝撃を受けた演目です。
先程の聖女のような白とは真逆の赤西さんの「目力」が炸裂した毒々しさ。登場したのは、豪勢な着物に身を包んだ頭に彼岸花と真っ黒な簪を差した女性、瞳は冷たく、恐ろしく、射抜かれそう。
なにか情念を持った一癖ありそうな女性。と思っていたら、とあるセリフが流れた途端にぞわぞわっと寒気が。
「”あの”お方だ!」
心の中で叫ぶと、もうその人にしか思えなくなってきて「まさかその表現できたかー!」とぞくぞくしました。”あの”人は徹底的なヒールなので、その人の目線から語られるなんて「面白い」としか思えなかったのですよ。
着物を脱ぎ捨て衣装変えすると、薄手の赤襦袢と何やら手と足に真っ赤なリボンがいくつも絡まっている。これは多分、完全形態の「触手」だなと思い鳥肌が。
盆の上で客席を睨みつける”お方”、多分目が合うと頭から喰われてしまうと本気で思うほどの緊張感。リボンを手繰り寄せパッとポーズを取る、足を掴むよりヒラヒラするリボンの方が難しく見えるのに...。
後半に移ったとき、正面から見ると盆に乗った姿は、きっと自分を倒そうと集る蠅を振り払うような気持ちでありながら、段々自分が弱らされ消える恐怖を感じていくのを表情で表現していたと思います。最後にぐっと右手を握りしめるところがあるのですが自らの後継を「優しき剣士」に植え付ける感じが伝わりました。そして最後は「消える」ところまで。
見事に「ヒールの半生」を表現したなと震えた一作でした。

白が「生、希望」ならば、赤は「死、絶望」を思わせる対極な作品で赤西さんの2つ合わせの周年作の拘りを感じました!

後半ではじめてポラに並ぶと、どうやらツイで述べた「解釈」が合っていたそうでホッと一安心で嬉しかったです。先程の緊張感などどこへやら。笑顔が印象的で可愛い声の方でとても優しい方でした。せっかくなのでポラの時に「あのお方」の目線でとかなり無茶なお願いをすると応じてくださり、すごいお写真が撮れたのがめちゃ思い出です、大切にします。


3回目の演目が終わった後、私は劇場を出た。1回目は人がまばらだったのに帰る頃には沢山のお客さんが席を埋めている。
さすがに演目をエンドレスで見ていたため、頭がぱんっぱんになり手持ちのレッドブルもチョコも食べてしまい水だけで耐え切ったけれども、やはり半日は疲れた。数十年前、劇場に篭りきりで1人芝居のオムニバスを見ていた頃を思い出す、その時も疲れたけど心は満たされてた。並々と、まるで雨が降り注いだように。
超絶雨女の私が帰る頃、屋外ではあれほど荒れ狂っていた雨風はやんでいた。少し涼しげな帰り道、駅へと歩いていくと「本当に楽しかったな」とぼんやり思う。
会いたかった推しの踊り子さんたち、二度目ましての踊り子さん、そしてはじめましての踊り子さんまで、みんな揃って見たい人ばかりの「神香盤」だった。
ストリップを好きになって1ヶ月ほどだが、こうやって好きな踊り子さんを見に行ける幸せはプライスレスである。

六月。川崎は暑いか、雨だったが、それでも人はたゆまず集う。
ストリップは、実にどうしようもなく魅力的なのだ。

その後、お腹空きすぎてロック座近くのうなぎ屋に駆け込みました。
久々のうなぎはめっちゃ身体に沁みましたわ。とても美味しかった。

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