小屋に集いし師弟関係、それは踊り子も客も。

その日、横浜で用事があった。
某アニメグッズイベントへと病院にいく合間に行った後、一息。

そうだ、スト活しよう。

某緊急事態宣言も訪れそうな日々、横浜でもいつそうなるか分からない。
まだ新宿ニューアートに足を運んで一週間ほど。劇場の熱気を反芻させていたが、やはり体感したいという欲があった。それにまだSNAしか私は知らない。
個性豊かな小劇場やミニシアターがあるように、様々なストリップ小屋が私を呼んでいる...かもしれない(多分まぼろし)

今日、訪れたのは横浜ロック座。ロック座系列のひとつ。
横浜では少し前に「浜劇」というストリップ劇場があったことは知っていた。野毛はよく通っているし、何より公道から丸見えで存在感が昼から夜までしっかりあったので存在はずっと知っていた。
京急日の出駅から徒歩3分、JR、地下鉄桜木町駅から徒歩、多く見積もって15分(方向音痴で歩くの遅いので大体この位)
こんな目立つところに誰が入るのか?と思っていたら、数年後、私が入った。
入り口は丸見えという訳ではないが、やはり入る姿は誰からも見える。車に乗ってる人、歩く人、見ようと思えば見られる。
しかし私は見にきたのだ、既に一度は自分でSNAにも行ったのだ。イケる!やればできる!
とんとんと丸い石畳を大股歩きで通り過ぎ、入り口の扉を開ける。
以前、間違えて開演前に客の列に並んだという記憶があったので、今度は用事が終わって昼食を終わらせた昼下がりにお邪魔した。
すると扉を開ける前にスタッフの女性が顔を覗かせた。
「ご利用ですか?」
と言われ、そうですと答えあたふたと3千円を払う。入場券と横浜ロック座の注意事項が書かれた頭をもらった。そしてピンクのカード。どうやら横浜ロック座には女性用のポイントカードがあった、一回入場ごとにスタンプを押してくれるシステムで5回でドリンクサービスされ、10回で入場無料という大盤振る舞いだった。女性向けにこういう風にしてくれるのは嬉しいなぁと思いつつロビーに入った。
どうやら踊り子さんの香盤が始まっており、ロビーに手拍子と曲が流れてきていた。
その曲を聞いて私ははっとした、休憩中にでも読もうかと思っていた手持ちの本関連のものだったのだ。休憩に入ったら入ろうかなと様子を伺っていたら
「どうぞー、今なら原美織さんの一曲目が終わったところかな?」
とスタッフさんに、あっさりと途中入場を勧められた。恐る恐る私が扉を開けて真っ黒なカーテンをくぐると、そこに...

犬耳をつけぬいぐるみを抱き、頬擦りしている踊り子さんが見える。
ファーストインプレッション!
初めて目にする、横浜ロック座のインパクトはめっちゃ強かった。

劇場の広さはSNAよりも狭い。席数は多く見積もって40席ほど。今は間隔も取られているのでもっと少ないかもしれない。盆を囲むように丸く席が2列、立見席やベンチもいくつか置かれていた。
そして平日だからきっとお客さんは落ち着いて席も座れるだろうと、てっきり舐めていたがなんとほぼ満席。マジかよ。
私は小さくなるように入り口近くの立見席で手拍子に加わる。踊り子さんの原美織さんは、はじける笑顔で愛嬌を振り撒きながら、既にするりと衣装を脱いで盆の上でポーズを決めていた。とにかく舞台や盆との距離感が近く感じるため、目がどこか合ったような錯覚が起きる。踊り子さんからは暗闇の中でお客さんはどのぐらい見えているんだろう、ふと気になった。
この演目はどうやら新作だったらしく「犬と猫、どちらも飼いたい」だった。
とても愛らしく可愛らしい演目だった、拍手を送りポラタイムになると妙に肩身が狭い。今日は間違いなく女性はわたし一人の超ぼっちだった。
すると、受付の女性スタッフさんが
「あそこ」
と左奥の後方にあるぽつんとある座席を指さした。
「あそこ、女性優先席だから。どうぞ」
と言ってくれた。どうやら私が来るまで男性客が座っていたらしいが気を遣ってくれて、席を立ってくれたらしい。これは本当にありがたかった、女性にも少しは居場所があるんだと思えて素直に腰を掛ける。そして何かの縁だと思い(音楽のことも)千円を握りしめポラ列に並んだ。原さんははじめて、しかも途中から入ってきた私のこともとても喜んでくれた。演目の感想を伝えると、くるんとした大きな瞳でわーっと喜んでくれる、こうしてくれると私は嬉しい。来てよかったなぁとちょろいので素直に思ってしまった。
その後、1順目を終えた5人の踊り子さんが登場した。この横浜では踊り子さんが最後に登場し数分、オリジナルダンスをするという。
盆の上に5人の踊り子さんがぎゅっとひしめき、くるくる回る盆の上でお客さんにアピールする姿は圧巻だった。思わずマスクの下の口がぽかーんと開く。
そして5人の踊り子さんは美しく礼をすると、劇場の幕が閉まった。
昔の映画館のように幕があるとは思わなかった、すごく風情があってショーが終わるんだなと妙に感傷に浸ってしまった。
次の演目までまた劇場の明かりがついた。私は改めてこの劇場の設備などを見ることにした。以前、SNAでは舞台の端に設置されていたスモークマシーンは横浜では客席より高い2階部分(?)みたいなところに置かれていたので、踊り子さんと客はスモークを浴びる感じになる。そして2階部分に照明を操作したりアナウンスする部屋があるらしい。構造的には映写室みたいな印象を受けた。
そしてSNAの客層に比べると、客層は高い。若い人も幾人か見えるが常連客が強い感じ、だからといって一見を邪険にする感じでもなさそう。実際、こちらから何かを聞かなければ話してきたり、絡んでくることも全くなかった。形違えど、皆、紳士である。
特に最前列にずらっと並ぶ重鎮たちの迫力は凄かった。ポラタイムで消毒液などをすっと用意する人、客から慕われる主みたいな老人、後ろから力強く拍手を送る人...などなど。
前も思ったけどストリップ劇場は面白い。主観的に踊り子さんを見るのも面白いけど、客観的に劇場を楽しんだり踊り子さんとお客さんの視線が重なるところや、見つめる目を見るのも面白かった。

そしてまたアナウンスと共に幕が開き、2巡目が始まった。

1.白石さやかさん

スラッとしたツインテール姿のさやかさん、どうやらケーキを作ろうとイチゴ柄のエプロンに身を包み、ボウルと泡立て器を手に持ち生クリームを立てているようだ。ピョーン、ピョーンと無邪気な笑顔でお菓子を作っている、そして3段重ねのケーキを作るとデコレーションしそっと指先でつまみ食い、だけどその時、クリームがエプロンが汚れお着替えタイム。青いドレスに舞台上で着替えていく。そして何やら盆にやってくると悪戯っぽい笑顔で手持ちの小さなかごの中から手を消毒した後、飴や駄菓子を次々と客に振る舞う。
最前列だけではなく、後ろにいる私にもふっと投げてくれた。上手く掴み取るとめっちゃ喜んでいる、こういう何気ない気持ちのキャッチボールができるのが、この劇場の良さの一つなのかもしれない。お菓子を配っている間にするりといつの間に脱いでいた。
何気にびっくり、いつ脱いだの!?と目を丸くしている間に、盆でポーズを決めていく。
前よりも距離が近いので指先の美しさにも目を奪われた。


2.椿りんねさん

はじめのご挨拶タイムで出てきた時、美人な人だなー!と第一印象で凄く思った。
「銀河鉄道」
きめ細やかな指先と目線で、劇場に銀河が広がっていく。小さな汽車が飛んでいくような感覚、ひとつひとつ星座を「これはね、こういう星座なのよ」と優しく愛おしげに説明されているような印象を受けた。
暗転の際にパラリと夜光式の星を盆にばら撒いて衣装変え。暗くなって星が盆の上で光る、小さなプラネタリウムのようで、こういう暗転時の工夫と演出があるのだなぁとノスタルジックな気持ちになった。
盆の上でポーズを決めるたび、手指と足先が震えている、これは前には気づかなかった。あの無理な体制を維持するのは何半端じゃない。全身に力を入れて凄く耐えている、改めてすごいなあと心の中で感動した。
あとでポラタイムの時に、この演目は新作で広島のために作ったとお客さんに告げていた。
これは5月で閉館する広島第一劇場のために作られたものだったのだ、その劇場では劇場の周りに鏡が沢山あるそうなので、星は一際輝いたろう、そして劇場に向けた銀河鉄道は、椿さんの強い愛のような気がした。


3.ののかさん

ショートカットの見た目かっこいい!女性。しかし、踊り出すととてもキュートになった。
ふわふわとピンク色のミニスカートがダンスでちらりとお尻がのぞく。その時、とても綺麗で大きいと素直に思えた。
大人っぽい!と思わせて、盆に滑り込むと寝転がりお客さんに挨拶している、前に座っている常連の長老は目尻の皺を深くさせ微笑む、ののかさんのフリを客席ではお客さんも踊る、盆に登る前にオレンジ色のロングドレスに衣装替え、盆に登り洋服を脱ぐとナイスバディ。スレンダーというより、より女性を感じさせる肉感的で同性なら憧れるちょうどいう”塩梅”の女体だった。胸も大きく綺麗だ、胸は大きいと重力の力で維持は難しい、鍛えが違うんだろうなと努力してるんだなぁと思った。

4.高崎美佳さん

初めに見た挨拶タイムで、クールな微笑みを讃えていた高崎さん。
始まる前に「鳴り物はお控えください」と一言アナウンス、何かストーリものなのだろうか。個人的に作り込まれたストーリーものが大好きなのでワクワクした。
演目の名前は「蝶」
照明が当たると盆の上に、繭をまとい羽化しようとする一匹の蝶がいる、彼女は何も纏わずこれから外の世界を見られる喜びをポーズで表現する。
外の世界は危険だらけで、雷雨に打たれ蝶は羽を傷つけてしまう、もう飛べはしない、落ち込む蝶。一度は羽を捨ててしまうが少し成長した彼女は新たな衣に身を包み喜びの舞を踊る。盆の上で全てを脱ぎ捨て生きる喜びに震えているようだった。
そのあと、かつて自分が捨ててしまった羽を纏い、再び飛び立っていった。
短い時間で描かれた「蛹」から「蝶」になった彼女のはなし。
とても良かった、最後の羽のショールを拾ってどこか誇らしげに纏ったときに少し泣いた。
こういう「強さ」を見せられると、弱い。
そして今まで着衣→脱ぎの流れだったので、とても新鮮だった。
高崎さんの表現力の高さを、1度目で感じてしまった。

5.原美織さん

「Blooming!」(教えていただきました!)
園芸少女は今日も花が咲かないかと、拾った花の種を植木鉢に水をたっぷりやり観察している。でも目が出ない、毎日毎日、まだ出ないと見守り続けている。
するとそこに悪戯好きの小さなてんとう虫が手の甲にやってきた、衣装変えしたてんとう虫は、どれどれ?花を咲かせてみようじゃないかと色々試す、するとぽんっと花が咲いた。嬉しそうな顔をして去っていくてんとう虫、花と少女のキューピットになったのだろうか?
次に現れたのは何やら気品がある花の女王様。花が咲いたことで彼女も目覚めた。
盆にのぼると嬉しそうな顔をして次々とポーズを決めていく、初めの演目でも思ったが、原さんは寝転びのポーズから反動で三点倒立のようなアクロバティックなポーズを決める。
体幹と身体の柔らかさがないとできない技だと思う。
月並みな感想すぎるが、やはり凄い。
最後は花が咲いた植木鉢を抱きしめ少女が嬉しそうに笑った、ハッピーエンド。

先ほど撮ってもらったポラが帰ってきた時に、私は感想を軽く伝えて踊り子さんが天井や遠くを見る眼差しがとても好きだと告げると、原さんははじける笑顔で応じてくれた。
帰ってきたポラを見ると、いつもなら絶対にありえない「ちゃん」呼びや、自分の名前を呼ぶ女の子と話したことはあまりなかったのでとても新鮮だった。
原さんの最後の挨拶では多分、結構な人が目が合っていた。ひとりひとり丁寧に見つめていて凄いと思った。
私も目が合ったが、普段目を合わせてそれほど話したことがなかったので、免疫がなさすぎて耳が真っ赤になった、実にちょろい。

最後の挨拶で出てこられた5人、最初に見た「あまり知らない踊り子さん」が「演目を見せてもらった踊り子さん」に変わった時、気分がとても高まった。それぞれの良さを見せてもらったので余計にだと思う。
再び幕が下がり、私は劇場を出ることにした。その時、消毒液を出し密かに手伝いをしている「主」のようなダンディな男性に話しかけた。凄くシャイで決してスタッフではなくファンだということも告げられた。
踊り子さんたちの間で「姐さん」関係があるように、お客さんの間でもどこか不思議な師弟関係があるようだった。今日は踊り子さんの写真を撮る際に写真の指南をしている男性がいて、彼の手先を見るようにじっと数人の男性が後ろで見つめていた。それを見て面白いなあと思えた、芸が継承されていくように踊りも、マナーも、写真の指南や継承も時代を超えてきちんと受け継がれていくんだなぁと見つめていた。
踊り子さんも、お客さんも人を通じてきちんとあるということは、アナログではありつつも大切なことだと思う。


と思い出に浸っていた矢先、テレビのニュースでは総理大臣が「緊急事態宣言」を4都道府県に発令された。
「緊急事態宣言、ここはどうなのかなぁ?」
一人の踊り子さんはポラのお客さんにそう告げていた、顔は微笑みながらもどこか不安そうだった。
いつかは解除される、いつかはきっと終わる、そう思って踏ん張らなくちゃいけない、と思いつつ。
これから見たい踊り子さんは沢山いる、Twitterを見たりとかしている。
近場だけになるかもしれないが、行きたい劇場も沢山ある、まだポールダンスやエアリアルを見ていないので是非見たい。噂に名高いリボンさんやタンバさんの活躍も気になる。



私の家には一ヶ月ほど先に香盤予定の、とある踊り子さんへの差し入れが棚にそっと入れられている。
実は面識もない、noteやTwitterや色んなレポを見ただけだ、しかしストリップというものに興味を示させてくれた人なのだ。ぜひ会いに行きたいと思っている。
それは少し値が張り、自分ではとても買わないものだったとしても、劇場に足を運び、踊り子さんに届けてもらうことが「生活の張り」になる。
今の明日がどうなるか分からない事態だと、ちょっとした目先の目標が欲しい。
実に浅はかかもしれないけれど、私にとってその踊り子さんを見に行けることも「大切な目標」の一つなので。
というわけで、ひとつ。
どうか、なるべく安全に、そしてなるべくはよ、緊急事態宣言明けてね。


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