見出し画像

パリ7日目:1/30(mer.) 晴れのち雨

最終日。カーテンを開けると、滞在中いちばんの晴れ。メールや日記を書いて、お土産を買う旅もしないといけないことに(大事だけど)ちょっと鬱屈となる。11時すぎにホテルを出てサンマルタン門から4番線に乗り隣の18区のシャトー・ルージュへ。昨晩に少し積もったっぽい雪が日陰でぐちゃぐちゃ。シャトー・ルージュはアフリカ人街だ。コンゴ、ナイジェリア、セネガル、ギニア、コートジボアール、カメルーン、モロッコ…と、フランスがかつて宗主国として支配した国はアフリカにたくさんある。地上に出ると歩いている人もほとんどアフリカ系(と中東系も)。黒い看板が目立ち、アフリカンな髪型見本写真を入り口に貼り付けた美容院も目立つ。一番多いのはどの国のルーツの人だろう。モンマルトルへの丘の中腹にあるからだろうかこちらのほうが雪が多く、路面全体に染み出る水たまりに正午前なのに東京なら15時くらいの傾きの陽光が反射してまぶしい。坂を登って、ロス・バルバドスのお二人に教えてもらったアフリカ料理店を2件(Restrant Tarifというセネガルレストランと、Diego Musicというコンゴ音楽CD屋の隣のレストラン)回るがどちらもまだ閉まっていた。諦めてポワッソニエ(魚屋)通りを逆に来た方向へと降りていく。立ち並ぶ八百屋スタンドにダンボールの品が忙しく出入りしている。軒先におばちゃんが座り「サプパンガ、サプパンガ、サプ、サプ、サプ」とラップ調で呼び込むので見たらタロイモのような芋だった。Tissus Africainsというアフリカ独特のテキスタイル屋もカラフルな布地を積み上げガラス窓越しに誇示している。

バルベス・ロシュシュアール駅から東駅に向かい、マップ上ではもう開いているOh Africa!へ。ここも教えてもらった。見当たらないと思ったらSaint Quentinというマルシェの中にあって(しかも入口すぐ)、レストランというよりスタンドという感じだけど赤い椅子などおしゃれな内装。音楽もロス・バルバドスのよう。女性ひとりでやっているのかと思いつつランチ三種の中からマッフェ(カレーのようなソース)のピーナッツソースのセット。蒸したインディカライスとガーリック風味のチキンが付いていて、これがすごく美味しい!ジンジャージュースもついて10ユーロ。カリブ経由で入った珍しいギネスもすぐなくなりCastelというアフリカンビールも追加。食べ終わる頃男性がやってきて彼がオーナーのよう(カメルーン男子)だが、どこのアフリカ料理ですか?と聞いたら「アフリカン」との答え。ひとりだったのがもう満席。

スられた日に行くのを断念したモンマルトルのアウトサイダー・ミュージアム、アル・サン・ピエールに歩いていくことにする。チロチロと雪解けのお音がかすかに聞こえ、上からは水滴が降ってくる。途中、チェックしていたワインバーのTerre et Selに寄って白ワインとサラミ。壁にずらっと並んでいるワインもすべて飲めるんだろうか。ニルヴァーナが好きです!みたいな兄ちゃんがやっていて音楽はハードロックかメタル。ノリがすごく良い。さらに坂を登り、みんなはサクレ・クールへと向かうのにすり抜けてその右のHalle Saint Pierreへ。3年前はちょうど”HEY! modern art & pop culture PART III”展で都築響一さんがキュレートした見世物小屋の絵看板を見たが、今は2回目となるアール・ブリュット・ジャポネ展をやっている。メインビジュアルが強烈だ。フォルムの歪つな人形、彩色の鮮やかな絵画など、全体的にアフリカ美術の展示を見ているよう、というか展示の文法がそのように感じる。櫛野さんにメッセージしたら、日本は東京の愛生会がコーディネートしている、と。これを見たフランス人の感想が聞きたい(平日昼間なので人はまばら)。2010〜11年の第一回目は12万人の来場があったそうだが、今回はどうか。書籍スペースにも日本のアート作品集(浮世絵関係多し)が並ぶ。『HEY!』関連本は重そうなので断念。

アベス駅からメトロに乗り、巨大デパートのギャラリー・ラファイエットへ。お土産ツアー。一気にアジア人の世界になる。おもちゃ売り場、そして食品売り場。Fさんにボルディエのバターを買ってこい、と言われていた。ここの飲食スタンドもおいしそう。吹上のステンドグラスの円形屋根が18世紀のよう。そこから歩いてマドレーヌ寺院前のチョコレートのパトリック・ロジェ。惑星みたいなチョコは日本では売っていないが前回来た時よりも店のオーラが薄くなっていた。客はすべて日本人。荷物を置きに一度ホテルへ。メルシーにも行ってみたかったけど疲れて諦める。

仮眠しようにも眠れず、パッキングを半分ほどやって、19時半ごろ再び外出。なぎささんが自宅でクスクスパーティを開いてくれるというのだ。古門さんにワインを任せ、僕はビールを買って、凱旋門に近いエリアのなぎささんの自宅へ。フランスの家に入るのは初めて。コードを押して大きな扉を開けると中庭があり、その奥にも扉、扉。幅50センチの階段を登っていくと各フロアの両サイドにアパルトマン。エレベーターなしで5階にたどり着くと九螺さんと古門さんも来ていて、恒例の九螺さんからなぎささんへのプレゼントラッシュ。黄色いベスト(Gilets jaunes)に彼女も大ウケ。エプロンがわりに着たそれがオレンジ色のセーターによく似合っている。僕には昨日オペラ座で買ったという、バッハのオルゴール…。テーブルの上にはすでに白アスパラガス、フムス、生ハム、サラダ、バゲットなどが乗っていて、乾杯。どんどん平らげていった先に、ドカン!と来ますよ〜とのとおり、大きなル・クルーゼの鍋に入ったなぎささん手製のクスクスがやってくる。クスクスってあの小麦粉の極小パスタのことを言うと思ったら、このシチューとのセットのことを言うらしい、と一同「へぇ〜」。料理も教えていたお母さんから習ったというなぎささんのクスクスは大きな牛肉とジャガイモがほだされてトマトソースの上に浮かぶ、これまでのどんな店よりおいしいものだった。どんどん食べしまう。「お金払いたいくらい」とまた一同。仕事もあるのに昨日と今日仕込んでいたらしい。話題は今回のパリの印象を聞いたはずが九螺さんよりDA PAMPの右から三番目のピンクの人が一番キレがいい、池袋サンシャインのときにISSAが曲をレジェント停止させた瞬間、レコ大でなくメンバーを受け「気持ちの入ったコメントでしたね」とまったく気持ちの入っていない返しをする安住アナ、など日本でやればいいDA PAMP動画祭り、からの定番の松居一代と泰葉との比較、古門さんスパイ疑惑(羽田で靴まで脱がされても動じない姿に)など、笑いに笑った。最後のほうで自分も九螺さんからもらったものを着てなぎささんと黄色いベストツーショット写真。黒の上に来たら東京でもいい感じのファッションになるかなあ…。話でもお腹いっぱいになってチーズは食べられず。古門さんが眠そうなので配車アプリでタクシーを呼んで(こちらに向かってくる過程もすべてGPS表示される)急いで階下へおりる。なぎささんも入口まで出てきてお別れの挨拶(明日ドゥマゴでのJAZZライブに3人は行くそうだけれど)。

窓に流れるパリの夜景が曇ったガラスであまりよく見えない。あっという間にサン=ジェルマンに着いて2人は先に降りて、さらなるお別れ。そのままひとりでタクシー。九螺さんは今日は一日部屋で読書をしていたという。窓からはかのデカルトも眠るサン=ジェルマン教会なわけだからそれも贅沢なパリの過ごし方だ。Je pense, donc je suis. 今回はあれこれ行かず一日カフェでぼっとしよう、と思っていたが結局いろいろ欲がでてしまった。ので持ち込んだ仕事もあまりはかどらず。「レピュブリック」と言うときの口をすぼめる感じともしばしおさらばだと思うとなんだか切なく、口寂しい。東京でも今晩、雪が降るかもしれない、と聞く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?