世界行きの待ち合わせは自販機で

こちら2013年に執筆した百合小説第2弾です。

キーワード

・中学生

・盲導犬

・塾のぬけがけ

・自販機

・秘密基地

それでは下線より始まります。

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いつもの道いつもの町いつもの人。

そしたら、私も他の人から見たらいつもの人の一人なんだろうか。

変な気分だ。

塾にいく途中の道で、そんなことを思いながら歩いている。

塾が始まる時間にはまだ早いが、散歩をするのが好きなので、いつもゆったりと歩いている。

早く着いたらついたで自習をしていればいい話だから。


どんなに見ても、ここは古びた町だ。

小さいころ賑わっていた商店街は、大型スーパーができた途端さびれてしまった。

そのおかげでポツリポツリと店を営んでいるところがあるのみで、シャッター通りとなっている。

私の小さい頃はもう毎日が楽しかった。

商店街を歩けば顔見知りのおばさんたちが声をかけてくれる。

お母さんと買い物に行けば、お店のおじさんがこっそりお菓子をくれたりする。

そんな素敵なやり取りがいっぱいあった。

あのころの輝きはもうない。

あるのは、シャッターの埃と、不良が書いた意味不明の落書きだけ。

それすらいつもの光景になった。

本当につまらない。

いつか私も、この風景の一部になるのかな………。

もうなってるか。

あーあ。

つまらない人生。


商店街を抜けて、駅の近くまでやってきた。

駅の向こう側に塾がある。

私の散歩ももう終わり。

勤勉な中学生になろうとして、塾の方角を見据えた時だった。

ん?

私の風景の中に、違和感が書き込まれた。

その違和感は、駅前の自販機のところにあった。

女の子が犬を連れて自販機の前に立っている。

黒いラブラドールレトリーバーだ。

ご主人の隣にいて、ご主人の顔を覗き込んでいる。

ここだけなら、まあ普通の光景だ。

しかし、その犬は、首輪とリードだけではなく、ハーネスでもつながれていた。

盲導犬だ。

彼女は、目が見えないらしい。

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