変わっていくものと変わらないもの
家に一番近い自動販売機が撤去された。
まるで「最初からここには何もありませんでしたよ?」と言わんばかりのその場所に、一度通っただけでは正直気づかなかった。
頻繁に利用したことはなかったが、家の近くに自販機があるのと無いのとでは安心感が違う。
ふいに炭酸が飲みたい気分になるような“緊急事態”に利用させてもらっていた存在だった。
寂しさを感じつつ、心の中で今までの感謝の気持ちを告げた。
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ある日、久しぶりに小学生のときの通学路を通った。
私の住んでいる地域は区画整理のため、以前の街並みからがらりと変わってしまっている。
唯一の救いは、通っていた小学校の外観が変わっていないことだろうか。
学校帰りによく行った駄菓子屋も、文房具屋も、今はもう無い。
ケーキ屋やスーパーも場所が変わってしまった。
通っていた道も周りの家は建て替えられ、全くというほど面影がない。
最初はもちろん寂しかったが、少しデコボコしていた道がキレイに整備されたり、見通しがよくなったりして良いこともあった。
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変わっていくことは、まるで思い出の風景が無くなっていくようで寂しいものだ。
でも、思い出が無くなるわけではない。
思い出は変わらずに私たちの心の中にあることを忘れてはいけない。
生きることは変わっていくことだと私は思う。
自分自身も、街並みも、周りの人も。
それでも、変わらないものもある。
変わっていくものと、変わらないもの。
どちらも大切にしながら生きていきたい。
そうふと思った、春の日。
家の近くの桜も、そろそろ見納めのとき。
今年も、ありがとう。
また来年ね。
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