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肥満化小説 修学旅行 part4

【第4話 まりんの過去 中学卒業編】

あれから2年が経った。

桜が満開になっていた。綺麗な桜がひらひらと舞う蓮花中学校にも新しい新入生が入ってくる。
進級した3年生の教室にまりんの姿はなかった。

薄汚れた部屋。食べかすがのったお皿や、もう着れない服が散乱している。そして、むしゃむしゃと馬のように何かを食べる音が聞こえる。
XLのジャージを身にまとい、うずくまるように座っている。
まりんだった。
顎にはさらに肉がつき二重顎になっていた。
でっぷりとしたお腹がジャージからはみ出ていて、その上に、さらに成長した胸が乗っかっている。
お尻は椅子と同じくらいの大きさになり、太ももからは隙間が失われていた。

あれから2年、痩せようと努力はした。
食べる量を減らすと、その分反動でたくさん食べてしまう。
間食を止めようとするも、誘惑に勝てずつまみ食いを繰り返した。
運動しようとしても、体にまとわりついた贅肉が邪魔をしてきて、長続きしなかった。
入学式の経験から、男子にはからかわれ、女子からもハブられてしまい、1人も友達ができず1人ぼっちになっていた私は徐々に引きこもりになっていき、学校に行ったり行かなかったりする日が増えた。
そんな私を見たお母さんも、独り身であることや、私が半ば引きこもりになり育児がうまくいかないストレスからどんどん太っていった。エプロンをしていると背中の贅肉が強調される、いわゆる中年太りの体型になっていた。

重い腰をあげ、部屋から出て、階段を降り洗面所に行くと体重計があった。一体何キロあるんだろう。
そう思って体重計にのった。

78kg

また太った。
どうしたらいいんだろう。


そんなある日、高校に関する特集番組がテレビで放映されていた。

「本日ご紹介するのは水蓮女子高校です。あの有名な水蓮学園の女子校で、少人数制授業による語学学習に力を入れており、1学年2クラスで1クラス20名。あの有名な天楽を企業した牧谷氏のようにエリートを数多く輩出している水蓮大学にもエスカレーターで進学することができます!何より、特殊なのはこういった少人数制授業の質を高めるため、本当に学力のある生徒が欲しいという観点から内申点は一切考慮せず、一般入試の点数でのみ合否を判断するというシステムですね。小中高と一貫ですから、高校の一般入試での合格者数は例年3名ほどしかいないそうですが、チャレンジする気のある方はチャレンジし甲斐のある高校だと思います。では在校生の…」

高校か。高校デビュー…。
ただぼんやりと眺めていただけだったが、少しずつまりんの闘争心に火がついてきた。
女子校であれば、入学式のときからかってきたような男子もいない。
こんな堕落した生活から挽回したい。
そして何より、誰も私のことを知らない高校でやり直し、エリートの集う大学ではたくさん恋愛したい。
私は水蓮女子高校を受験したいと思った。
大して頭は良くないが、意思はとても固かった。

お母さんにすぐ自分の思いを伝えた。
お母さんは喜びで目が涙に濡れていた。
お母さんは私が変わりたいというのを本気で喜んでくれたんだと思う。学費も何も気にしなくていいから頑張ってほしいと言われた。

それからというもの、乱れた生活は一変させた。
自室を整理し、ちゃんと学校にも行った。内申点は考慮されないが、私立中学に通っていたちめ、ある程度は行かないと退学になってしまう。
精一杯学業に打ち込んだ。来る日も来る日も勉強した。
その一方で、ダイエットにも取り組んだ。
1日2食のみにし、食べる量を減らしたのである。
一切、お菓子は食べなかった。食べないことでその味を忘れることにした。
すると、徐々にではあるが体重は落ちていった。
そうなってくると空腹が快感になる。空腹になっていると痩せている気がする。
そうしていくうちに、ダイエットに対する知識のないまりんは徐々に歯車が狂ってきた。
2食でも体重は減っていたのにも関わらず、さらに1日1食に減らし、しかもヨーグルトやサラダなどの低カロリーなものしか食べなかった。
学校に行くこと以外は自室で勉強している毎日のため、当然運動もしない。
体重はみるみるうちに減ったが、それに呼応するように筋肉や体力もなくなった。

こうして1年前の春。
見事、難関と呼ばれる水蓮女子高校に合格。
これからの毎日はきっと輝いている。そう確信した。
入学式の翌日、健康診断があった。
保健室から出るまりんの顔は自信に満ち溢れていた。手には159cm 43kgと書かれている診断表がある。

私は痩せたんだ。
こげ茶の緩やかなウエーブがかったロングの髪にクリッとした目つきの可愛いらしい小ぶりな顔。
理想的なお椀型をしていると言える胸。
小さなお尻から、すらっと伸びた色白の脚。

保健室から戻り、教室に戻り、体操服から制服に着替えようのしている途中、肩をたたくのと同時に、後ろから甲高い声が聞こえてきた。

「すっごく、綺麗なウエスト〜!!アイドルみたい〜!」
振り返ってみると、
バッサリと切ったショートの髪。快活な少女のように、笑顔が眩しい。
体操服の下からは、茶褐色がかった健康的な肌が見て取れた。
胸はかなり小ぶりだが、下半身は筋肉がうっすらとついておりがっちりしている。
「え、そうかな〜?」
「そうだよ〜あたし、陸上部の速水さやか(はやみさやか)!仲良くなりたい!LINE交換しよ♪」
「うん、わたし彩木まりん(さいきまりん)。陸上とか運動はできないんだけど、仲良くして欲しいな…。」
「仲良くなるのに陸上は関係ないでしょー!笑 まりんちゃん運動しないのになんでそんなアイドルみたいに痩せてるの〜!」
「ありがとね。あ、LINEのQR…」

この日以来、さやかの部活がある日以外は一緒に登下校したり、休みの日は遊びに行ったり、さやかの家に泊まりに行ったりした。
お互い親友と呼べるくらい仲良くなった。
私に笑顔が戻った。
なじめなかったり、からかわれていた、1人だった過去とはさよならした。太っていた時期を闇に葬り去り、その全てを隠しながら高校生活を送っている。
もちろん、またいつ食欲が爆発するか分からない。食事制限を続けて抜群のプロポーションを維持していた。

(あ、いけない。こんなこと思い出してる場合じゃない!
はやく荷造りしなきゃ。)
そう思って、手に持っていたXLのジャージを投げた。
ベッドの下に吸い込まれるように入っていった。
楽しみなオーストラリア。高まる気持ちを抑えながら、荷造りをしているまりん。
オーストラリアで再び肥満化の道に引きずり込まれることを知らずに。。

つづく。

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