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よろこびをひらいてゆくこと

わたしのよろこびをひらいてゆくこと
祝うことが祝われることでもあること
あなたがうれしいとわたしもうれしい
巡りゆくものの中でどこまでも惚けながら
この星にてよろこびをひらいてゆくこと

何か大事なことに立ち会っているのだと、わかりはじめてきたこの感覚を心に延ばしてゆくよう散歩した。
あなたを見つけた。
知らなかったわたしが見つかって、この世はすこし違う横顔を見せ始めた。それは時に今まで見てきたものを覆すほどにうつくしく、圧倒的だ。この口腔が言葉を失えるほどに。
おおらかな土間でお祝いを真ん中に置き、彼女と話していると互いの胸の内にあるうれしい気持ちの端と端が繋がっているような気がした。それは理解や共感という仕草を越えて、内側からただただ溢れる祝福の感触だったように思う。わたしのうれしいもあなたのうれしいもうれしい。ひとかたまりになってこんなにも春に晒されている。

わたしもこの星のできごとだったのか。
来たかった場所であそび尽くして帰るつもりだったのに、それだけに留まらない光芒の只中にてひとり泣きたくなる。
観光はさみしいものではなかったはずなのに、ここに生きることは確かにわたしを変えてゆく。
手の中でやがて溶けゆく氷水みたい。いつしかそれはこの体の内の水と同じあたたかささえ得るだろう。
すべては、この星のできごと。
すべては、この星の思い出。

「おめでとう」と言われるうれしさがわかってよかったね。
ありがとう。
おめでとう。

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