〖余談〗の時間 その九


 最初は『たこ焼屋』からスタート。でもそれが何故『タコ料理専門店』になったのか? 不思議に思う方もおられるでしょう。もちろんこれにも、アレコレ紆余曲折ありました。

「絶対成功する!!」

っと脱サラして始めた店。当初は

「5年後にはクルーザー買うんじゃーっ!!」

とまで豪語していました。しかし僅か最初の数か月で世間の厳しさ、自分の甘さを痛感しました。今更サラリーマンに戻ることはできません。いやできたかもしれないけど変な意地を張っていたかもしれないですね。それに事実、お客様からの評判がすごく良かったこと。これもやめられなかった大きな理由です。

 でも少しは運があったのかTVや雑誌などマスコミに取り上げられ、某大手さん、角〇書店発行の『関西〇ォーカー』にて、お好み焼き、たこ焼き、その他粉モノ店の中で

“関西N.O.1”

に選出していただいたこともあります。そうして何とか10周年を迎えるにあたり、お世話になっている有難い常連さん達向けに特別料理を振舞うことにしました。

『タコのかき揚げ天丼』
『たこめしのドリア』
『スパゲッティ風のタコ入りヤキソバ』

等々、あっ!! オリジナルラーメンもあったかな? とにかく普段出さない料理を変わり種として振舞ったのでした。そしたらどうでしょう。なんと皆さんの評価が予想を遥かに超えたものでした。中には、

「昨日、結構いい(高級な)天ぷら専門店で丼食べたけど、それより美味しいわ。」

なんて言ってくれる方もいました。そして、

「このメニューをレギュラー化したら!? 」

という声も多数。私の心は揺れ動きます。ただ、どうしてもそこに踏み込めない理由がありました。それは

『専門店』の重み

でした。例えば、『うどん専門店』と看板を出している店が『そば』をメニューに入れていたらどうでしょう? 『専門店って書いているくせに!? 』という人が必ずいると思います。私もそうです。私は『たこ焼屋』というのはたとえ看板に『専門店』と書いていなくても『専門店的』な店だと思っていました。だから他の、しかも洋風なメニューの追加には積極的になれなかったのです。他の店にはないタコの旨味を追求したたこ焼『たこ味焼』。店のアイデンティティが崩れてしまうことが怖かったのです。


 ところで、皆さんは『ジンジャービア』という飲み物をご存じでしょうか? ほとんどの人が『ジンジャーエールっぽいけどソレと違うのか?』や『生姜のビール?』と思われたのではないでしょうか? 実はジンジャービアはジンジャーエールのルーツ。そのもととなった飲み物です。2つの最大の違いは『発酵』。ジンジャービアは発酵飲料で、ジンジャーエールは主な材料に炭酸水を混ぜたもの。カクテルによくジンジャーエールが使われていますが、実はこのジンジャービアの代用品として使われているのです。本来、日本人にあまり知られていないこの『ジンジャービア』こそがカクテルに使われるべきものなのです。因みにジンジャーエールが最初に作られた国がカナダ。だから『カナダドライジンジャーエール』という商品があります。

 さて、どうしてこの話をしたかと言いますと、そのジンジャービア、ひょんなことでその存在を知ることになります。

『なんだコレ、面白いっ!!』

『あまり知られていないモノ』が大好きな私。早速調べてみますがなかなか手に入りにくい。無くは無いのですが、イギリスをはじめ海外からの輸入品、しかもバーなどに納品されることを想定されているようで結構単価が高い。とても手が出ません。ただ、調べていくうちにネット上で作り方がありました。英語のページでしたが何とか理解もできました。

「じゃあ、作ってみよう。」

っとやってみたらなかなかの出来栄え。こうなったら納得できるまでやってやると思い、長い時間をかけてレシピが完成。カクテル用になんて書きましたが、もちろんそのまま飲んでも美味しいものです。珍しさも手伝い、店では評判の飲料になりました。ところで、本来カクテルの材料ということはわかっているので、やってみました。

『モスコミュール』

するとどうでしょう。既成概念をぶち壊す、なんとインパクトが大きな極上のカクテルがそこにはありました。なにも誇張していません。どんな場所に出しても恥ずかしくないくらいの素晴らしいモスコミュールが、なんと『たこ焼屋』の店内で完成した瞬間でした。

 その後、モスコミュール本来のスタイル。銅のマグカップを用意し意気揚々と新メニューとして出したところ、これが大評判!! なんと『日本一の、いや世界一のモスコニュール』と本気で評する海外のお客様まで現れました。
 しかし残念なことに立地は郊外の路面店。訪れるお客様は学生もしくは車で来られる人がほとんどです。つまり車を運転しているのでアルコールはNGなのです。せっかくの名物になりかけている逸品。もどかしい思いでいっぱいでした。

 さて、話は戻りますが、専門店だから『たこ焼以外』は提供したくてもできなかったジレンマ。そして車の運転とモスコミュール。そこで一大決心をしました。

 『街の中心部に出て勝負してみっかぁーっ!!』

そして約2年の歳月をかけて探し出した場所、京都のビジネスと商業の中心地『四条烏丸』に移転しました。タコ料理専門店としての再出発なので、屋号も『たこ焼屋』さんのイメージを捨てるため、『BROGLD』と変えました。

B: BUONO(イタリア) 
R: RICO(スペイン) 
O: おいしい(日本)
G: GOSTOSO(ポルトガル) 
L: LEKKER(オランダ)、LECKER(ドイツ)
D: DELICIOUS(英)、DELICIEUX(フランス)

色んな国の『美味しい』がある店、

“日本と地中海のタコ料理 Octpus Bar BROGLD” が誕生しました。


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