【タコの目利き】


 ここで一度、良質のタコの選び方を考えてみます。これも私はしっかり勉強したわけではなく、あくまでも経験上そう思ったことなので専門家が読めば、

「間違っている。」

と言われるかもしれませんが、この際気にせず自論で行かせてもらいます。また、ここでは市場に出た時点で茹でてあるものは除外します。私なりの『生のタコ』の品定め方法を書かせていただきます。

 まず『外見』というかパッと見た時の状態。どういう形で置かれていても立体的なものがベター。筋肉が発達しているとタコの全身が盛り上がって立体的に見えます。足(腕)が円柱状、丸太みたいに見えたなら筋肉質のタコだと判断できます。反対に台や床に『ペタッ』と平べったくなっているようなものは身が痩せていて水っぽい。歯応えもなく、味も薄いものと疑ってみます。

 『色』は結構白っぽいグレーから赤茶色、黒っぽいと様々ですが、どれもそれ自体悪くないです。タコの色は原色こそないもののカメレオン同様、周囲の色に合わせて激しく変化します。〆られた時に最終的にどの色をしていたか? その絶命するタイミングで決まっちゃうのかな? と思います。ただ、『艶のない赤色』が全体的に広がっているものは鮮度が悪いと考えていいでしょう。特に吸盤のある側、足(腕)の内側を見るとわかり易いです。生き物の体表面が劣化した場合の赤色、生命力が感じられない赤です。イメージ的には水周りのカビを連想させる赤。誰が見てもわかり易い色だと思います。ところでどの色のタコも茹でると個体差はありますけど、だいたい濃い小豆色になります。茹でると赤く(小豆色)になるのは、タコが持つ紫黒色、赤褐色、黄色の色素が熱で化学反応を起すとか、煮汁のアルカリ性で紫黒色が溶け出すからとか言われています。どちらが本当なのかはまだ決定的な解明はされていないようです。

 『触感』。見た目にある程度比例します。弾力があり固く引き締まったタコはわざわざ説明する必要はないでしょう。ホントに、

『ボディビルダーかよ』

という固い筋肉質のタコもいます。そしてヌメリ。塩揉みしていない新鮮なタコならヌメリがあるのは当然。逆にないのは冷凍と解凍を何度か繰り返しているものか鮮度が悪いもの。胴体については立体的で厚みがあるものがいいですね。皮が余ってたるんでいるものは基本的に肉質のよくないタコの可能性が高いです。また、やたらと頭(胴体)が大きくてその皮が薄っぺらいといった特徴のタコがいます。卵が胴体の中にあり成熟しているタコです。この特徴のタコは栄養が卵に持っていかれている場合があります。エサが豊富にある場所で生息していた場合は問題ないですが、肉が痩せて水っぽくなっているものもあります。胴体が分不相応に大きいものは気をつけたほうがいいでしょう。卵を食べてみたいならいいでしょうけど、卵の重量分だけ値段が上がることがあるのでコスパを考えれば避けたほうがいいかも知れません。

 次は『切り口の色』。あまり見かけませんが、スーパーなどで生タコの切り身があった場合に参考にして下さい。ずばり、いいタコの場合は『透明過ぎない乳白色』。切り口の表面にちょっと透明感があるのは瑞々しいとみていいのですが、透明感が強すぎるのは『瑞々しい』を超えて『水っぽい』ということです。『筋肉が痩せて水っぽいから透明度が高い』ということです。筋肉の表面が艶々しているのはOK。だけど切り口より0.5mm、1mm先まで半透明みたいな感じ... こうなると新鮮かどうかなんてレベルの話じゃありません。旨みのエキスも少ない。コリコリした歯応えがない。肉を噛んだ触感は殆どないのに、皮は噛み切れず出来損ないのグミのようです。

 お次は、『スミで汚れている』という場合。肉質の良し悪しには関係しませんが、スミが体表について黒くなっているタコは新鮮と思っていいと考えます。スミがついていてヌメリもしっかりあるのはGOOD。〆られる直前まで元気で生きていたことの証拠です。また、〆てからすぐに冷凍されていたり、生ならすぐに出荷されていた可能性が高いと考えられます。ただし、最初に書いたとおり肉質がいいとは限りません。鮮度の目安の一つと考えて下さい。

 そして旬について。前述もしましたが、一般的にはタコの旬は夏と言われています。ただ、人によっては冬。なんだか良くわかりません。瀬戸内地方は夏、三陸は冬と言う人もいます。ただ、間違っていたらゴメンなさい。これも私なりに考えれば、夏に獲れるタコは比較的小さくて数が多い。小さいタコは大きいものより柔らかいので煮炊き料理につかうと美味しい。逆に冬に獲れるタコは大振りなので薄く切ってお刺身や寿司ネタにいい。つまり料理方法によって旬を決めてもいいのではないかと思います。何度も言いますが、漁の後にどれだけ大切に扱われて消費者に届けられるかが一番大事だと思います。

 あと、最後ですが、大きさについて追加します。今までも何度も書いてきましたが、基本的には大きなタコは身(筋肉)が硬く、小さなものは柔らかい。だから大きなものはお造りやシャブシャブ、つまり薄く切って食べるスタイルがお勧めで、小さなものは煮炊きするのに適しています。

 では、具体的にどのくらいの大きさが、

『大きなタコなのか小さなタコなのか...?』

これはなかなか難しい...。主観的な判断だとかなり個人差があります。それぞれの地域・産地、また季節毎の違いもあります。でっ、申し訳ないですがここでも私の主観で判断させていただきます。

 一般消費者が目にするスーパーなどで並んでいる茹でダコ、おそらくその殆どは500~700g 程度のタコを加工したものでしょう。これはいわゆる『小さなタコ』といって差し支えないでしょう。少し大きくなって800gくらいなら... まだ、これも小さいかな...? でも微妙ですね...。ただ、800g くらいなら家庭用のまな板の上でも調理は難しくないでしょう。でも、家庭の主婦が見たら800g のタコも『大きい』と感じるのではないかと思います。マダコの場合、流通するものの中で大きなものは3kg を超えることがあります。これは相当大きいものです。まず一般消費者が目にすることはないでしょう。このレベルだと別格の大きさです。しかし1.5kg や2kg は業務用では普通に流通します。先程800g が微妙な大きさと書きましたが、その1.5倍の重さ、1.2kgを超えるとかなり印象は違います。このサイズだとお造りやシャブシャブ用に調理することも余裕でしょう。足(腕)の太さも人間の手の親指と中指の輪より大きくなります。

 ここで結論。何度も言いますがあくまでも私の主観です。

小さいタコ 800g まで
中くらいのタコ 800g ~1200g 
大きなタコ 1200g 超

こんな感じでしょうか。中くらいのタコはお造りにも煮炊きにもどちらも可能と考えていいでしょう。あと漁業関係の常識ですが、2kg を超えるようなもののことは知りませんが、大きなタコの方が単価は高くなります。例えば合計で3kg タコを買ったとします。その時、1.5kg のタコを2ハイで買うよりも600g のタコを5ハイで買うほうが安いということです。これはお造りやシャブシャブ、寿司ネタなど単価の高い料理に大きなタコの方が適しているからです。また、獲れる数も小さなタコの方が圧倒的に多いというのもその理由でしょう。


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