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うたたねぼうやとパンケーキ

子どもたちのこと
宝物のようなカフェとオーナーのこと
友人やその場所で繋がった大切な人たちのこと
皆のことを思いながら感謝の気持ちをこめて
小さな物語を描いてみました。

『うたたねぼうやとパンケーキ』

お母さんが子どもたち言いました。
もし、とても心に悲しいことがあったら、このお話をおもいだしてね。

朝、一人の少女が優しい太陽の元にいて想いました。
なんて素敵な朝
なんて優しい太陽のひかり
なんて一人一人こんなにも輝いているの
美しいな 美しい世界だな…

少し前に少女には心がこわれる出来事がありました。
『わたしの心はこわされてしまった』
けれど
『ほんとうのほんとうの私の心はこわれてなんていないのだわ!!』
太陽の光はまるで蜜になったように少女の身体にしみこんでいくようでした。
そして、ほんとうの心の中には壺があって蓋をあけたら、蜜があふれてくるようなのかしらと想いました。

そう思った瞬間、不思議なことに少女の身体は太陽の蜜をたっぷりうけたパンケーキにかわっていました。
それから、ぽっこり ぽっこりと音を立てながら輝く蜜がパンケーキになった少女からあふれてゆきました。

ふと、みるとそばに小さな小さな子どもが、ねむっています。吐息からは甘い蜜の匂いがするのでした。
目をさました小さな小さな子どもは『ぼくはうたたねぼうやだよ』そう言ってゆっくりと唄い始めました。

うた うたうように
たね 夢の種をまくよ
ああ なんだかあたたかくて もぐっていきたいな
うたたね うたたね パンケーキ!!

パンケーキになった少女も一緒に唄っていると、小さな小さな青い蜂、黄色い蜜蜂 蝶々、うさぎや熊やふくろうたちが、ぐるりと囲んでいます。
森の住人たちは、嬉しそうに笑いながら、あたり一面に輝く蜜をそっとを持ち帰り、家族や大切な友人たちと一緒に おもいおもいの食事にかけて食べました。
そして 口々に唄いだしました。

うた うたうように
たね 夢の種をまくよ
ああ なんだかあたたかくて もぐっていきたいな
うたたね うたたね パンケーキ!!

森の住人たちの心からも、ぽっこりぽっこり 蜜のあふれる音が聞こえてくるのでした。
あたたかいね 幸せだね 口々に話すたび、花々がふわりふわりと咲き始めました。
そして、花の蜜をあつめ、少女とうたたねぼうやのところにもってゆき、たっぷりとかけてあげました。
なんてよいかおり、虹のように輝く蜜は、世界一あたたかい味がしました。

お母さん それから、パンケーキになった少女はどうしたの??
うたたねぼうやは??
子どもたちが聞きました。
お母さんは、静かに話します。

しばらくして、パンケーキになった少女はだんだんと だんだんと小さくなってゆきました。
そして蜜たちがいいました。
わたしは、これから太陽のひかりになるよ
わたしは、星になりたいな
わたしは、たんぽぽの花びら
わたしは、陽だまりのなかに
最後の蜜は、
わたしは愛するひとの涙の一粒になるの
と言いました。
うたたねぼうやが唄いはじめると、蜜たちはおもいおもいの姿となりました。

そうして、唄い終わると、うたたねぼうやは消えていました。
少女はパンケーキになったことも少女が少女自身だったことも忘れてしまいました。
森の住人たちのうたが聞こえると、蜜たちはそれぞれの場所で、懐かしいきもちになるのでした。

どこからか、うたたねぼうやのうたが聞こえてきて少女は、涙を流しながらゆっくりと身体を起こしました。
その涙は、世界一あたたかい味がしたのでした。

少女は、夢のことは覚えていました、けれども悲しい出来事は忘れてしましました。

子どもたちが、世界一あたたかい蜜の味はどんな味なのかな??
お母さんの笑顔みたいな味なのかな…
パンケーキを食べて、口のまわりに蜜やクリームのひげをつけた子どもたちが、きらきらと笑いながら言いました。

そしてお母さんが、唄います。

うた うつくしいうたが目の前にみえたよ  
たね 愛のたねをありがとう
ああ なんて輝く蜜にもぐったのでしょう
わたしが わたしにかえって 目覚めたとき
わたしは、うたたね パンケーキ!!

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