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2023_10th_week(3/6-3/12)

私の心身の健康を支えてくれているZWIFT走っていたら、突然の恐竜の着ぐるみである。バーチャルだから楽しいけど、リアルだと空気抵抗がえらいことになりそうだ。

今週のロードレース

パリ~ニースとティレーノ~アドリアティコというステージレース2本立ての週。総合系はグランツールに向けての脚試し、クラシックライダーは3月下旬からのビッグレースに向けた調整で全員しっかりと走るので、観ていて楽しい。

ティレーノを走るテイオ(・ゲイガンハート)の調子が良くて嬉しい。2020年にジロ・デ・イタリアを勝った後、落車や病気で本来の力が発揮できない時期が続いていた。ようやく長いトンネルを抜けられたのだな、と感じる。

そんなテイオのインタビュー記事がRouleurからタイムリーにリリース。これがまた読ませる内容で、流石Rouleurさんなのである。自転車にまつわるアレコレを美しく、文化的・哲学的に演出することにかけては右に出る者がない。

テイオのインタビュー記事は、webで全文無料で読むことができる(2023年3月12日時点)

陽気で気さくなテイオは、プロ意識と成熟した精神を兼ね備えたアスリートである。それはロードレースというスポーツの魅力について、そして自身のキャリア最大の成功となったジロ制覇について語る言葉に滲んでいる。

Geoghegan Hart’s biggest memories of the race, however, were more specific and under-the-radar moments. On the uphill finish of stage two in Agrigento, his job was done before the climb and his instructions had been to sit up at the bottom, but he noticed that team leader Thomas only had Jhonatan Narváez for support near the front.

しかし、ゲイガンハートにとって、このレース(2020年ジロ・デ・イタリア)での最大の思い出は、もっと具体的で水面下の出来事だった。第2ステージはアグリジェントでの登りフィニッシュ、彼は最後の登りの手前で仕事を終えて踏み止めるように指示されていたが、先頭付近にいたチームリーダーの(ゲラント・)トーマスのアシストがヨナタン・ナルバエスしかいないことに気付いたのだ。

“I thought, Narváez rides a size 48 or 50 bike, and G rides 56. If something happens, he’ll have to wait for the team car and he’s going to lose two minutes, so I thought maybe I should just follow. I don’t need to be in the front group, but I could be near enough if something happens and I’ll be able to give him my bike straight away,” he says.

「ナルバエスは48か50のサイズのバイクに乗っていて、Gは56サイズに乗っている。もし何かあったら、Gはチームカーを待たないといけないし、2分も失うことになるから、ついて行くべきだと思った。先頭集団にいる必要はないけど、何かあったときに近くにいたらGにすぐ僕のバイクを渡すことができるからね」と言う。

“At the bottom, we turned left and 30 or 40 riders at the back of the peloton all sat up, so I had to go around all of them. Jon Dibben (Lotto Soudal rider) texted me later saying something along the lines of, ‘I saw what you did at the bottom of that climb and you still finished top 50. You’re absolutely effing flying.’

「登る前、左に曲がると、集団後方にいた30~40人の選手が皆踏み止めてしまったので、僕は全員を迂回する必要があったんだ。ジョン・ディベン(当時ロット・ソーダルに所属していた選手)から後でメールが来た。『あの登りの手前までの君の仕事ぶりを見たよ。それでもステージ50位以内でゴールした。君は本当にカッ飛んでいたね』ってね」

“And that one moment defined the whole race because I could have lost five minutes that day. Instead I finished not many wheels behind G and stayed with him. And nobody in the world knows about that. Little things happen, but these are the margins of cycling. That’s the best explanation I can give of how close you can be between complete anonymity and success, but that’s life and cycling.”

「あの瞬間が、レース全体を決定づけた。だってあの日、僕は5分失う可能性があったんだ。その代わりに僕はGから何ホイールも離れずにフィニッシュし、彼と一緒にいた。そしてそのことは、世界中の誰も知らない。ちょっとしたことだけど、これがロードレースにおける差を生む。これが、名を残さずに埋もれることと成功をどれだけ近づけられるかという、僕ができる最高の説明。だけど、これが人生であり、ロードレースなんだ」

Rouleur

2020年ジロstage2はこんなステージでした。

Geoghegan Hart is philosophical about the disappointment. It comes, he says, with the territory of being a cyclist. “I don’t think there are many characters in cycling who aren’t able to deal with disappointment, because I don’t think you would become a cyclist if you weren’t able to,” he says. “Maybe many of us did grow up winning a lot when we were much younger. But there’s always going to be a stage in sport where you are going to face the reality that you definitely don’t win every race that you line up to. And there are sports where the chances of winning are much higher.

ゲイガンハートは(病気や怪我で良いシーズンを送ることができない)失望感について哲学的である。自転車選手である以上、それは付き物だと彼は言う。「失望に対処できない人は、自転車選手にはあまりいないと思う。それができないなら、自転車選手にはなれないから」と彼は言う。「僕らの多くは、もっと若いころにたくさん勝って育ってきたのかもしれない。だけど、スポーツの世界では常に、自分が出場するすべてのレースで勝てるわけではないという現実に直面することになる。そして、勝つ確率がもっと高いスポーツだって他にある」

“That’s inherently a big part of cycling and it’s probably why so many people are drawn to it in quite a unique way because they see the ups and downs. I always find it fascinating how adored Thibaut Pinot (Groupama-FDJ) is. I’m not sure but he seems to have much more of a fan base now than he did perhaps a few years ago when his results were much better. I think that speaks volumes for the types of personality and fans that are interested in cycling as opposed to other sports where it’s much more glory, glitz and glamour.”

「それは本質的に、ロードレースの大きな特徴であり、人々はそうした浮き沈みを見るからこそ、独特の魅力に惹かれるのだろう。僕はいつも、ティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ)がいかに愛されているかということに魅力を感じている。よくわからないが、彼の成績がもっと良かった数年前よりも、今の方がずっとファン層が厚いみたいだ。それは栄光や華やかさを求める他のスポーツとは対照的に、自転車競技に興味を持つ人の性質やファンを物語っているように思う」

Rouleur

テイオの言葉はこのように面白く、示唆に富んでいて、素晴らしいのだ。どうか自分の拙い訳ではなく、原文を読んでほしいと思う。

拙い英語といえば、テイオが活躍するとFacebookのメディア記事に私たちが運営しているファンページ(一応本人公認)がタグ付けされる。日本人の友人が日本語と怪しい英語の二本立てでヒーコラ頑張っているようなページでいいのか?と思いつつ、そんな謎の多様性もテイオらしいかな、と考えている。

テイオが頑張っているのが嬉しくて、いくつかレース映像のスクショを本人をメンションして送ったら、彼のInstagramストーリーに使われていて笑った。

今週のロードレース以外と今週読んだ本

  • 眠れぬ夜はケーキを焼いて(午後)
    不眠に悩んでいた時のことを思い出した。誰しも自分だけの眠れぬ夜の過ごし方を持っている。

家のトイレの電気が切れた。「今ならトイレでマインドフルネスできるで!」と夫。何というポジティブシンキング!この人と結婚して良かったな、と時々思う。