見出し画像

東京會舘とロマンティックなお菓子と、私。

昨日の朝、テレビで東京會舘がリニューアルオープンしたニュースが流れていた。建て替え工事のために閉館した当時、最後にと思って(でもそれが私にとっての東京會舘デビューだった)訪れた時の記憶が蘇ってきて、iphoneの写真をひたすらスクロールして過去を遡った。

冬の陽が傾いていて、ひんやりとした空気の感覚は今もよく覚えてる。休日の夕方、ひとりで地下鉄に乗って日比谷駅で降りて、初めて目にした東京會舘。歴史を背負った気迫あるクラシカルな佇まい。おそろいの制服を着たドアマンの人たち。私は恐る恐る中へ入ってティールームへ(レストランだったかも? よく覚えてない)。

私のお目当ては、東京會舘伝統のお菓子”マロンシャンテリー”。そのお菓子は、生クリームの絞り方がとにかくロマンティックで美しい。白い山をイメージしているケーキのようで、白い雪山の中には、裏ごしした栗がたっぷり入ってる。山のテッペンから絞り器で放射状にひと筋ひと筋、きっちりとクリームが絞られていて、仕上げに周囲とテッペンがクリームで品よく飾られている。

その姿にひとめで釘づけになって、憧れを募らせていたら閉館だという(実際には他の東京會舘の系列のレストランでも食べられるんだけど、それを知らなかった!)。それでいそいそとマロンシャンテリーを味わいに出かけたのが初めての東京會舘だった。
ひとりでドキドキしながら温かい紅茶と一緒にいただいたマロンシャンテリーは、私をロマンティックな気分でいっぱいにしてくれた。そのお味は想像とはちょっと違ったのだけれど、それはぜひ実際にあなたにも味わってもらいたいと思うから触れないでおく。



初めてのマロンシャンテリーの興奮とこのレトロな建物の最後を思って少し感傷的な気分で東京會舘を後にしたのはよく覚えている。同時に東京會舘の建て替えが終わる頃、私はどうしてるだろうか? そんな少し先の未来へ思いを馳せて、数年先の自分の未来が想像できないでもいた。

あれから、薄情な私は東京會舘のことはすっぽり頭から抜けていた。私は私で自分の日々を精一杯生きて、その間に東京會舘はまったく新しく生まれ変わった。
2015年1月31日。私のマロンシャンテリー記念日。あれからもう4年が経っていた。4年という月日は、重みのある時間の長さであって、でも一瞬で過ぎ去っていった。
ひとつの大きな建て替え工事が行われている間に、私も当時の自分が想像もしていなかったところへ来た。2015年の私は、初めての転社を経験し、新しい環境へと飛び込んだばかりだった。ハイファッションの編集部に配属となり、右も左もわからなかった頃。それからの私は、その1年半後にはまた会社を辞め、フリーランスへと転身した。

人生って何が起こるかわからない。こんな陳腐なフレーズが、しっくりくる。それが東京會間舘のリニューアルオープンを知った私の実感。
近々、またマロンシャンテリーを味わいに東京會舘へ行ってみよう。

今の私にはあのロマンティックなお菓子はどんな味わいがするんだろう?

※写真はどちらも閉館した際に訪れた時のものです。


#小さな営み #東京會舘リニューアル #マロンシャンテリー #ロマンティックなお菓子 #エッセイ #東京オリンピックまであと561日 #その頃の私は何をしているだろう#コラム


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?