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イエローディンギーの思い出02

イエローディンギーを仲間に加えた我々には、もう一つ、得なければいけないものがある。
それは、オールと、あわよくば船外機。笑

海上でアンカリングしたヨットが、どうやって岸まで行くのか。
陸へ上がらないのもアリ、
泳いで行くのもアリ、
遊び方はあなた次第。
しかし、我々は遊びたい。
陸で食材を買いたい。
泳いで行く自信がない(と思っていたのはわたしだけ)
みんな素潜り上等、あそこまで泳いでいこうよっていう距離が。。
ちょっとそこまで、レベルではないと知るのは先の話。笑

まぁ、要するに我々が求めていたのは
『楽して陸まで行きたい=他力で行きたい=船外機が欲しい』が本当の気持ち。

なので、船を手に入れただけではダメ。
走る為の動力を得なければいけない。
『楽して陸まで行きたい』人達はわざわざ、手漕ぎで陸まで行きたくない。
あわよくば船外機と言ってるけど、本気で欲しいのはもちろん、船外機。笑

いつものヨットクラブで、あーだこうだ言ってると
見た目がサンタクロースのおじいちゃんが、天使のような発言をした。
『船外機余ってるよ〜貸すよ〜』って。
私の語学力は、なんて都合のいい訳をするのかと最初は耳を疑った。
しかし、サンタクロースとみんなとの会話が船外機を借りる流れへ進んでいる。
この人、本気なんだ。
本気で貸してくれるんだ!と、私の心が躍る。
Hondaの3馬力のエンジン。
エンジンオイルとガソリンを混ぜるタイプの船外機。間違えないでね〜って話してる。
ここで、彼らの会話にトランサムという言葉が出てきた。
トランサムってあれだよね?
船外機の長い棒の部分だよね?(大雑把に言うと)
と思いながら、話を聞く。
どうやら、、、イエローディンギーと、貸してくれる船外機のトランサムの長さが合わなそう。
『貸すのはいいが、ディンギーに対してトランサムが長いと思う。』と、サンタクロースが教えてくれる。
なんのこっちゃ。
"楽>トランサムの長さ"
だぞ。と思うので、そのまま借りることになった。
船外機を乗せてのイエローディンギーの試乗はせず。
(イエローディンギーが重いので、極力持ち出したくない気持ちから)

船外機だけのチェックをしにサンタクロースのお家へ。

サンタクロースは
『この船外機は今は亡き、僕のヨット仲間が持ってたんだ。売る気はないけど、使わないと壊れちゃうからね。どんどん使ってよ。メンテナンスはしてあるよ。試運転も時々してるから、今日も大丈夫だと思うよ〜』って。
なんだか、涙が出そうだった。

それと、同時に
え!?そんな大切な存在を私たちに貸しちゃうの?大丈夫?
今回が(自分たちで行く)初めての越境だよ?
っていう疑問と、

自分の船ってさ、
自分の分身というか、自分よりも大切な存在というか、何より気にかける存在。人によっては恋人や家族よりも大切な存在。
その一部を、使っていないと言っても借りるのだから気を使う。
なので、その発言で更に大切に使わなければというプレッシャーを感じる。
だから本当は中古でもなんでも、
自分のモノの方が、遥かに良い。

しかし、買うお金はないので。
借りるという選択肢しか残っていない。

初夏の炎天下で、サンタクロースの倉庫から船外機を庭の真ん中まで運び、
その庭を水び出しにしながら船外機の試運転をする。
(強い日差しの下で帽子も被らず作業していた私は、庭になりたい。と、一瞬思った思い出を添えて。)

ヴォォオォォォォンと庭に音が響く。そして、驚いた犬が吠える。笑
船外機は『オレ、絶好調だぜ!』と言わんばかりに上機嫌。我々もYeah!!って喜ぶ。

トランサムの話をしながら、我々が行くのは本土から水平線上に見える島だし、私達だけじゃなくて、ベテランも別艇で来るし。大丈夫っしょ!
という、プレッシャーを感じる割には安易な考えの元、
イエローディンギーはHonda3馬力の船外機と共に正式に旅のクルーに選ばれた。

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