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目的をもつということ

昨日、若者の就職活動の支援センターでエントリーシート作成セミナーに参加してきた。

受験や就職、アルバイトの面接などで小論文や履歴書、エントリーシートを書く機会が誰にも訪れる。
書くことが不得手な聴覚障害児は多く、そういった相談を受けることもあるし、トレーニングのバリエーションの引き出しを増やすという意味でも何か役立つ情報を得られるのではないかと考え参加してきた。

参加定員12名のところ2名の参加だったので講義形式の予定をディスカッション形式に切り替えて行われた。人の考えに触れながら進むセミナーは予想以上にあっという間に過ぎていった。

このセミナーを通して強く思ったことがある。

「なんのためにそれをするのか」
「どうしてそれをするのか」
「そのことを通して何がしたいのか」
すなわち、「目的をもつ」そして「目的を見失わない」ということの大切さである。

エントリーシートの場合、その目的は「自分とはどういう人間であるか」を伝えることにある。
たった一枚の紙に自分という人間を投影する。
エントリーシートとか履歴書とは、「自分がいかに色々なことをしてきたか、いかにすごかったか、自分がどのように成功してきたか」を書くものだと思っていたこともあった。
けれど、そうではない。
社会で求められることは様々だ。
学生の世界で培った大切なことももちろんたくさんある。
けれど、それはあくまで「学生の」感覚だ。社会はそうではない。
とてつもなく広い。
もしかしたら、自分では失敗だと思っている経験がプラスになることだってある。経験というのは、自分が得たもの、自分の変化を裏付ける要素ではある。しかし、それは本質ではない。
その経験を通して「何を」自分の中に残したのかこそが重要なのだということを改めて考えた。

どんな経験も自分のプラスに変えていく。
そのバイタリティこそが生きる力なのかもしれない。

そんなバイタリティを一緒に育てていくことこそ、教育の仕事なのかもしれない。知識は学校でなくても自分である程度は得ることができる。
学校という同年代の人たち、大人たち、地域に暮らす人たち、色々な人と出会える中継地点のような場所で、色々な人から自分の見方を教えてもらう。
そんな場所であってもいいと思うのだ。

そして、私の生業、言語聴覚士としての活動ではどうだろう?

同じだと思う。
大切なことは、利用者とともに
「何を目指すか」だ。
補聴器の使用、言語聴覚療法の実施など、言語聴覚士による種々のリハビリを「通して」、「どのような未来を描くのか」。

自分で描いた未来を実現する道のりは、苦しいこともたくさんあるが、何より楽しい。それが利用者のモチベーションであり、リハビリの出発である。


苦しくても楽しい。
そう思えるようなプログラムを提案して、長期的に支えていくのが私の役割の一つだと思っている。


手段は問題ではない。
そこにたどり着くためにできることを提案していく、より効果的に実施できるように道筋をエスコートする。
10人の言語聴覚士がいれば、一つの症例に対して10通りのアプローチがあっていい。それはどれも利用者と向き合った結果だ。
むしろ、人の数だけアプローチがある世界の未来には可能性の海だと思う。
そこから螺旋状に一緒にブラッシュアップを重ねていく。
そのサイクルにこそ価値があるのではないだろうか。

一見すると違うことにも、大切なことが通底していると感じた時間だった。

大切なことは、目的を見失わないこと。
自分の目指す場所を見据えていること。
目の前にあるものに取り組むこともとても大切だ。
その積み重ねの向こうに何があるのか、それがある程度分かっていると走りやすい。

私が向き合う人たちと望む未来に向かって一緒に走れるよう、どのような手段で目標に向かうことができるのか、考え続け、声を出せる人でありたい。

読んでいただきありがとうございます!頂いたご支援は、言語指導に使用する教材開発や勉強会への参加費用に充てさせていただきます!