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フードエッセイ | パスタはおあついうちに

どうしても気になってしまう
すぐに食べてもらえない熱々のパスタが

パスタは絶対にできたてが美味しいから
レストランや喫茶店で
目の前にパスタが運ばれてきているのに
お喋りやスマホに夢中になって
手がつけられていないままのパスタを見つけてしまうと
ハラハラドキドキしてしまう

思わず「あつあつのうちがいいよ!」
なんて声をかけたりはしないけど
固唾を吞んで
じっとそのパスタの行方を見守ってしまう

パスタからのぼる白い湯気がだんだんに消えて
パスタがくたっとしてしまうのを見てしまうと
『あ〜・・・。なんてこった。』
とても悲しい気持ちになる

やがてパスタをコーティングしているオイルやソース、チーズなんかの艶めきも失せて
乾燥して色気のない姿に変わり果ててしまうと
ほんとうに居た堪れない気持ちになってしまう
自信満々にテーブルに登場したであろうパスタも
さぞかし悲しいだろうと同情してしまう

お家でパスタを作るときには
一緒に食卓を囲む夫に
できたてあつあつの瞬間を味わってほしくて
仕事をしている夫に対して
「今からパスタ茹でるけど大丈夫?」
「あと3分でできるよ!」
「今から盛り付けるよ!」
と、カウントダウンのごとく
せかせかと調理の実況中継をしてしまう
健康に気を使って
普段はサラダから食べるなんて習慣も
パスタを目の前にしては
なかったことにしてほしい

パスタは鮮度が命だから
調理中、色々なことに気をつかうと思うんです

パスタが茹であがる時間にあわせて
ソースを作ったり
ソースとあえる最中の余熱を考慮して
茹で時間を少し短めにしたり
できたてをすぐに食べられるように
お皿やカトラリーの準備も抜かりなくして

それがプロの仕事となれば
こんな素人の気遣いとは比にならないほど
パスタと食べ手への心遣いがあると思うのです

できたて熱々が美味しいのは
ピザだってラーメンだって
だいたいのものがそうなんだけどね

でも、できたてあつあつのパスタを
美味しそうに頬張る人が増えたなら
世の中の幸福度はあがりそうです
それくらい、できたてのパスタって
ほんとうにほんとうに美味しい

パスタといえば
私は圧倒的にトマト系支持者ですが
お店で食べる大好きなパスタについて
考えていたら
案外トマト系を頼んでいないことに気づきました
(なんでだろう)

パスタではなく"スパゲッティ"だけど
老舗「ハシヤ」や代々木上原「スパザウルス」の「うにたらこ」はもったりした舌触りと
ハイカロ万歳な組み合わせが
驚くべき中毒性の保持者で
数ヶ月に一度無性に食べたくなるし

神泉の大人気イタリアンバール
アウレリオ」のパスタは
神的センスで食材を組み合わせた
季節ごとのお色気むんむんのパスタが
いつ行っても美味しくて楽しい
(最近美味しかったのはイカスミとカラスミの組み合わせ。神センス)

愛すべき生まれ故郷の平塚で
幼い頃から祖父母と一緒に通った
イタリア館」の「ボンゴレ」は
私にとってボンゴレの唯一無二の存在で
あさりがどっさり入ったスープは
最後の一滴まで飲み干したくなる
必ずLサイズで

お家で何度も真似して作っている
三軒茶屋「ナティーボ」の「レモンパスタ」は
初めて作ったときに
素手で青唐辛子をきざんで
指から火を吹くほど痛くて苦しんだことがある
そんな悪夢さえも凌駕する
シンプルイズベストな毎日食べたい美味しさ

伝説のイタリアン
麹町「ROSSI」の岡谷さんが振るう「ジェノベーゼ」は
鼻から抜けるバジルや松の実の香りまでもが
あまりに美味しくて
鼻息を荒くせずにはいられなかった
名ソムリエ粟田さんのワインとの相性も抜群で
陶酔絶対不可避

鎌倉の名喫茶
カフェロンディーノ」の「ツナトマト」は
あのケチャップの香ばしさと濃厚さが
ほんとうに病みつきで
鎌倉を訪ねるとき
昼食も夕食も店が決まっているときですら
おやつに駆け込んだりするほど
昨年末に舞い込んだ閉店のニュースには
心が折れかけたけど
最近ご主人がお一人でお店を再開されたと聞いた
ほんとうにうれしいなぁ

お家で作るパスタも
お店で食べるパスタも
どちらもいいけど
兎にも角にも
パスタはあつあつのうちが美味しいね


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