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美術館が休みの月曜日。まちかどで日常のアートと出会う

月曜日は美術館がおやすみなので、テルメミラノに出かけることにした。スパである。昼前に宿を出て、ショッピングストリートで10ユーロしない水着を仕入れてメトロでテルメミラノに向かう。ここは都市部にあるスパとして有名で、アクセスが良いので気軽に利用できるのだ。江ノ島スパのように、水着を着用して男女一緒に楽しめる。

入り口で先にお会計を済ませて、バスローブとバスタオル、それにビーチサンダルを借り水着に着替えてから、スパの中を探検した。室内にも屋外の中庭にも低温から高音までいろんなサウナがあり、室外プールもあるし、屋内には様々な種類のジャグジーがあった。ヨーロッパのスパらしく、ほどよくラグジュアリーで、ご年配のカップルの仲睦まじい水着姿が眩しい。

スパもいいけど、ちょっと日焼けしたいなと、中庭のデッキチェアにゴロンと横になって音楽を聞いたりして時間を過ごした。ベルリンでクリスティーナに「日焼けしたねえ」と言われたんだけれど、芸術祭で歩き回って日焼けしたので、顔や腕だけ黒くなってまだらなのだ。

それにしても、すこぶる体調が良くて元気だ。前日からちっともアートを見ていないからだと思われる。作品を見るときには五感をフル動員するものだし、感じたことを言語に置き換えるために脳もよく使う。こっちでは解説も英語なので、読むのに時間がかかるし、わからない言葉はメモ帳に残しておいて、などしながら、ほぼ丸一日、そうやって作品を鑑賞したりしているので、立ちっぱなし、歩きっぱなしなのだ。気候も地域によって暑かったり寒かったり、雨だったり。アート鑑賞を本気でやろうと思ったら、そこそこの体力が必要なのだ。

スパでの滞在中はお茶やお水とバスケットにどっさり入っている林檎を好きなだけ食べられるので、ランチも取らずに夕方まで、スパを楽しんだ。前日に食べすぎたので、胃腸を休ませるためにもう食事はいいかと思ってはいたが、夕方になるとすっかりお腹が空いてしまった。どこか、食事に行こう。

スパを出て、ネットで見つけたミラノ中央駅近くにあるレストランに向かう。が、残念ながらお休みだ。そのまんまぶらぶらと歩いて、通りの角にあったガラス張りのレストランに入ることにした。

太っちょのおじさんがサービスしてくれて、オススメされた海老のカルパッチョと、ミラノ名物リゾット・ア・ラ・ミラネーゼをいただくことにした。もちろん白ワインも。

海老のカルパッチョは冷菜だとおもっていたら、温菜だった。ふわふわの白いメレンゲの下に、うすーくスライスされた海老が敷き詰められていて、すくいながら食べる。食感も味も素晴らしい。料理に「芸術的」という言葉を使いたくなるのは、久しぶりだ。白ワインともよく合う。

そして、リゾット・ア・ラ・ミラネーゼ。魚介の出汁を吸ったお米がサフランで綺麗な黄色になっている。パルメザンチーズをたっぷりかけていただくのだが、こちらは、まあまあ。ちゃんとしたレストラン(ナプキンも布だった!)で食べてまあまあなのだから、きっとそういうもんなんだろう。名物に美味いものなしという名言もある。

とてもおしゃれなレストランで、働いている人がすごく感じ良く、また、格好がいい。太っちょのサービスマンのおじさまも、上手な英語で「どこから来たの?」「お料理は口に合いますか?」と、うるさくない程度にしょっちゅう話しかけてきてくれる。

白ワインもサービスしてもらった。とはいえ、スパで汗を出してきたばかりだったので、「ほろ酔い」というよりも「酔っ払い」に近くなってしまう。メトロで宿近くまでもどり、24時間空いているスーパーで、お土産のチーズを選んだ。パッケージが格好いいマルヴィスというミント味の歯磨き粉や綺麗な色の石鹸もカゴに入れる。生ハムの種類が豊富なので、持って帰れればなぁとため息をつきながら眺めたり。やっぱりスーパーは楽しくて、ぐるぐると2周以上してしまった。

話は変わるが、ウィークデーなのでメトロや街中でスーツ姿の男性の姿を見かけるようになった。イタリア人の男性はお洒落だとはよく言われるが、スーツ姿が特に美しい。暑いのにネクタイを首元でキュッとしめて、ジャケットも脱がずに涼しい顔で冷房の効いていないメトロに乗っている。着こなしも見事だ。若い男性のスーツ姿もいいが、中年男性のスーツ姿がまた堂々としていて、色気すら感じる。ミラネーゼがいつも素敵なワンピースでお洒落をしている理由がよくわかった。「ドレッシーな」という形容詞まで使ってしまいたくなるようなスーツ姿の男性の隣で見劣りしないためには、どれだけ華やかにしていたって、もの足りないくらいなのだ。

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