真綿をかけ、座繰りをする。そんな神事。

今日は工房で、まゆ祭りの神事が行われた。今年で42回目になる。

着物をはじめとする絹織物は、カイコ(蚕)あってこそ。桑園を管理し、蚕を飼育し、繭を収め、糸としてはじめて織り上げることができる。一部をのぞいて、糸をとるためにほとんどのカイコは死んでしまう。それと引き換えに糸をもらう。その感謝と供養の儀式。

11月23日(勤労感謝の日)は宮中祭祀のひとつ、新嘗祭の日。1年の収穫に感謝するその日と時期を重ねている。

神事の出席者は関係者のみと規模は小さくなっているものの、神棚を用意し、鯛や野菜果物を備え、神官さんにもお越しいただく。式の次第では祝詞の奏上はもちろん、座繰り製糸した糸枠と真綿かけをした真綿を奉納する。式の後には直会の席も設けられる。

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手作りの神事ではあるし、規模も小さくなったから1時間もかからない。けれど準備はもちろん丸1日かかるし、お供えもするし、宮司さんを呼ぶから時間もお金もかかる。

でも、それ以上に大事な時間。

70代から80代が中心の、かつて宮崎の養蚕を支えた、そして今も現役であったりアドバイスをしてくれる皆様が来てくれる。年に数回しかない機会。

普段は作業着や普段着のみなさんが、この時ばかりは背広やジャケットを羽織ってこられる。

先生も着物と袴でお出迎え。僕も作務衣で司会をする。

式の前後の雑談で、ある人は病を患い耳が遠くなり、ゆっくりでしか話せないと言っていたのに養蚕や桑園の話題になるとびっくりするほど流暢になっている。今年養蚕50年を迎えた農家さんは、うちに余ってた養蚕道具を持ち帰り、来年に備えるという。若手の養蚕農家さんも嬉しそう。

そんな姿を見て嬉しくなる。


普段の工房にはない少し厳かで、ユニークな雰囲気。御祓の音、笛や太鼓、祝詞の声も心地良い。

少し話は戻るけれど、式の最後には主催者の挨拶がある。隣の畳に先生が上がり、参加者への御礼を伝える。その時、僕と先生は横並びのようになる。

今年もなんとも言えない気持ちになった。嬉しいようで、悲しいような。ほっとしたようで、気が引き締まるような。歯を食いしばっていないと泣き出してしまいそうな。いろんな感情が渦巻く。

手仕事の業界も世間と同様、効率化・合理化は必須な世界ではあるけれど、それはそれで、効率や合理では補えない意味/価値を持つものもある。

1年に1度。大事な意味を持つ1時間。来年も無事に神事ができますよう。



今週末は、#綾工芸まつり です。

木工・陶芸・染織・ガラス・鋳金・ワークショップ・木のおもちゃ…。

気になったら連絡ください。遊びに来てね!

【第38回綾工芸まつり】インスタ(@ayakougei38

会期:2019年11月22日(金)〜24日(日)

時間:9:00〜17:00 (最終日は16:00閉場)

会場:綾てるはドーム(〒880-1302 宮崎県東諸県郡綾町北俣445−2)


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