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『Nのために』

読んだ本についてnoteを書くなら一番最初はこの本にしようと決めていた。
それぐらい自分にとって大切で大好きな本。

出会いはドラマからだった。
湊かなえさん原作の本がドラマになるらしいと聞いて母と見始めた。

毎週金曜日が楽しみで水曜日ぐらいになると母と共にそわそわしだす。ドラマが終わってもしばらくセリフを日常会話に挟んでくるぐらいハマっていた。ドラマが終わって私は完全にロスになり、本屋に買いに走った。ただ、読み終わって最初の率直な感想は「なんか物足りない」だった。

ドラマでは全ての種明かしがされ、主人公は最後の決断を下してすっきりとした終わり方をする。でも小説では主人公は最後の決断をしないし、登場人物たちはそれぞれ誰が誰のために嘘をついているのか知らないまま終わる(もちろん読者にはちゃんと種明かしはされる)。その結末を知ってから小説を読んだために余計物足りなさを感じた。まだ精神的にも幼かった私は、全ての伏線を回収しない本や映画が苦手だったしハッピーエンドじゃないともやもやしていた。

年をとって、一応大人の仲間入りをして改めて読んでから一気にこの作品の魅力の虜になった。これは、大人の愛のカタチ。こういう愛のカタチもあるのだと気づける作品。それぞれのNのために行動する登場人物たちが愛おしくてたまらない。これが湊かなえさんが書く意味のある小説だと。

幸せが自分のことであるうちはたいした人生ではない、と私は思っています。自分よりも大切な人を持つ人が増えたら、世の中はもっと温かくなるのではないかとも思っています。

湊かなえさんのコメント一部抜粋。

自分よりも大切なあの人、Nのために。自分の思う愛のカタチで。
今まで読んだどのラブストーリーよりもラブストーリーだった。

もう一つ自分にとってこの小説が大切になった理由がある。

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小説にして、まるでビジネス書のような付箋の数。
登場人物たちの言葉ひとつひとつが沁みるのだ。
私は主人公の希美に憧れていた。考え方や行動力やその度胸に。
希美の境遇から生まれた黒い感情や少し他人に冷たいところにも共感できたし、自分の幸せは自分で掴み取る・誰かに頼って生きないという他人にはあまり言えない心意気に通ずるものを感じた。

ちゃんと自分が今いる場所を見届けていられる気がするの。ああ、わたしの足元はちゃんと世界の果てまでつながってる、そんな感じ。生きていくエネルギーだよね。
チャンスがあれば、自分が持っていないものを手に入れている人に逆襲してみたいと思ってる。それをバネにして、自分が高いところに行くの。

わたしは希美のために、今この文章を書いている。
わたしの考え方を肯定してくれてありがとう。

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