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記憶の水平線

昔見た夢の続きを、唐突に見ることがある。 そんな夢を見たことは忘れているのに、夢の途中で「あ、これあの時の続きだ」となる。 それはちょうど、水平線から昇る太陽のように。じんわりと、でも確実に目に焼きついてくる陽の光。海の表面に反射して眩しくて、思わず瞑ってしまった瞳のシャッター。捉えた一瞬は記憶にも記録にも残らず、それでもいつの日かまた思い出すまで脳の片隅に仕舞われる。明けない夜はないなんて言うけれど、思い出せない記憶は無数にある。何を覚えてないのかも思い出せないけれど。 どんなに怯えても、どんなに楽しみにしても、また同じ夢を見るかどうかなんてその瞬間が来るまで分からなくて、それでも私は今日も思い出せないあの日の夢の続きを願って眠りにつく。決して暖かいとは言えない薄い布団、首に合ってない高さの枕、隣室のいびきがうるさい部屋が、太陽を半分隠した水平線に変わるとき、それはこれから昇る夜明けなのか、これから沈む夜更けなのか。夢の始まりか、夢の終わりか。 今朝の夢の続きをまたいつか忘れた頃に見るのだろうか

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