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マユズミの夢


「ねこの広告代理店になる」

―はい、それでは本日はどうぞよろしくお願いします!(笑)
はい、お願いします(笑)

―今はネット広告の仕事の傍らで「ねこ」の活動を色々やっているよね。
やってるね。在学中に「chát」っていうねこの広告代理店を立ち上げたり、今はクラウドファンディングに挑戦してる。

―いつもすごいなと思って見ているんだけど、そもそもどうしてそれをやろうと思ったの?
知ってると思うけど、僕はもともと、広告が好きな大学生だった。広告が好きだから、とにかく広告業界に行きたかったし、広告業界を目指して就職活動をしていた。そんな時に出会った業界の先輩に、こう聞かれたんだよね。
「【志望動機】ってどういう意味だと思う?」
僕の志望動機ではなくて、志望動機という言葉そのものの意味。
「【その会社に入りたい理由】じゃないですか?」
少し考えてから、僕はマニュアル通りの答えを出してそう言った。
「いや、そういうことじゃない。志望動機っていうのは、その会社で何をして、何を成し遂げたいのか。その会社に入りたい【理由】じゃなくて、入る【目的】だ。マユズミくんは、自分の好きな広告を使って何がしたいんだろうな」
自分の好きな広告を使って、やりたいこと。今までは漠然と、「かっこいい」広告を作りたいと思っていたけど、それはなんだか違う気がしてきて。そんな時に思いついたんだよね。
「ねこを助けたい!」と。

―なるほどね。なんでそこで出てきたのが「ねこ」だったの?
世の中には、解決しなければならない問題はたくさんあると思っている。
例えば貧困や難民問題とか、あげたらキリがないくらい。
きっとそういった問題に本気で向き合おうとすると、どこかで自分を犠牲にしなければならない瞬間がやってくるんだよね。
だから義務感で取り組んでいたら絶対に成し遂げられないし、そこには必ず無償の愛が必要になる。
そう考えたときに、僕が無償の愛を注ぐことができる存在、見返りを求めずにフルコミットできる存在が、「ねこ」だなって気づいたんだ。
昔からねこは好きだったし、「好き」な状態が常にベーシックなのね。別に今がすごく盛り上がっているわけでもない。「すごいねこ好き」みたいな扱いをされるけど、気付いたらみんなが僕よりねこが好きじゃなかっただけだと思っている。
それに、殺処分などの解決しなければならない問題が起きていることも知っていた。
自分の好きな「広告」を使って、自分の好きな「ねこ」を助ける。直接「ねこを助ける」ことをするのではなくて、自分の得意分野を使って、世間の人々に「保護ねこを取り巻く現状」を知ってもらう。
こんなこと、やらない理由がないじゃん(笑)
そう思って学生時代にねこの広告代理店を立ち上げたり、ドイツに視察に行ったりと、具体的な行動に移し始めたかな。

―「やらない理由がない」と思えたとしても、やっぱり新しいことに挑戦するのって不安も伴うと思うんだけど、どうだった?
もちろん、葛藤はあったよ。
やらない理由はないと思っていても、やっぱり恥ずかしいなって思う気持ちはあるし。それに、遊びたいなって気持ちとか、わざわざ自分に負荷かけてやる必要あるのかな、とも思ってた。
だって動かない方が無難じゃん、やらない方が安全なんだよ。でもやってみたいな、いやでもな、みたいな感じでぐるぐる悩んでた。
部活も引退してあとは卒論だけっていう学生生活になったら、遊びたいなとも思うわけじゃん(笑)

―確かに、それまでアホみたいなスケジュールだったもんね(笑)それでもやろう!って思えたのは、何かきっかけがあったの?
将来のために今の自分にできることってなんだろうって考えてみたんだけど、やっぱり広い目で見たらやった方が良いよなって思ったんだよね。
丁度そのとき内定者バイトでお世話になっていた先輩に、将来こういうことやりたいです!って言ったのね。そしたら、「なんで今やってないの?」って言われたわけ。そのときに、あ―確かになーって思って。やってない理由を考えたときに、「時間がないから」とか「遊びたいから」みたいな、ネガティブな理由しか思い浮かばなくて。
「別に失うものなにもないでしょ?」って言われたのが、すごい刺さったな。
社会人の先輩に比べたら、自分が今まで守ってきたものとかプライドとかってめっちゃ小さいじゃんって思った。そこに固執するくらいならやってみようって。

―そうだったんだね。その時に最初にやってみたことはなんだったの?
学生らしく(笑)まずは色々な保護ねこ団体さんにインタビューした。
そのときはまだねこの広告代理店っていうビジョンもなかったし、とりあえずねこの活動をやっている人に聞けば、なんかやるべきことが出てくるかなと思って。
最初は、色々な団体さんをググってはメール打ってアポ取って話を聞きに行って、とかしてたね。
そうやって聞いていくなかで、「情報発信が弱い」「横のつながりが弱い」っていうところが出てきたから、あー課題はここなんだなって思って。ここに対して、自分が何かする必要があるなって感じた。
そのときに考えたのは、社会人になったらどうせ忙しくなるし、僕のことだからどうせ昼夜問わず働き続けるじゃん(笑)
そういう状態になったときに、名刺代わりじゃないけど、自分の思いをすぐに伝えられる方法を持っている必要があるなって思ったんだよね。URLさえあればやりたいことが分かるものが欲しいなって思って、最初に話したねこの広告代理店「chát」を作った。
ロゴは内定者の同期のデザイナーに頼んだんだ。

ねこの広告代理店「chát」のロゴ

おじいちゃんになるまでに叶えたい夢

―話を聞いていると、今はわりと順調に目の前のやりたいことを頑張っているようなイメージなんだけど、もっと遠い将来の目標はあるの?

うん、将来的には、「ティアハイム」を作りたいと思ってる。
「ティアハイム」っていうのが、ドイツの田舎にある保健所のような場所。「動物を飼いたい」と思ったら、ペットショップではなくここにいくのが常識なくらい、国民の間では当たり前の空間になってる。
この日本版をつくることが、最終的な僕の夢。そして、そこでねこに囲まれて暮らしたいな(笑)
ただ、これの実現はとても難しいんだよね。ティアハイムは基本的には田舎にあるから、日本で開こうとすると、わざわざそこまで来る理由が必要になってくる。
「(ペットショップに行くよりも)ねこのためになる」というソーシャルグッドな意味だけでは足りない、もっともっと色々な人に「来たい」と思ってもらえるような空間デザインが必要になってくる。だから自然と人が近寄ってくる空間やコミュニティ、人が集まる仕組みなどを勉強している最中です。

今のマユズミが挑戦していること

―「ねこを助けたい!」とよく言うけれど、「直接助ける」みたいなことはしていないよね?
うん、確かにやってないね。ちなみに、あゆ(筆者)は、保護ねこ団体って聞いてどういうイメージがある?

―うーん、なんだろう、寄付を呼びかけたりしているイメージかな、、、?
うんうん、そうだよね。実は「ねこを助ける」にもフェーズは色々あって、TNR活動(トラップ=捕まえる、ネイチャー=避妊去勢、リリース=元の環境へ返す)など、基本的には分業制で行っている。でもこの業界、圧倒的に人手が足りない。ねこのために一生懸命なのに、目の前の命に精一杯で、なかなか世間の人たちのところまで活動の周知が出来ていないんだ。
だから僕は広告代理店として、「保護ねこ団体」の活動のPRを、かわいくおしゃれに、もっとイケてる形でやっていきたい。
関わっていくなかで、「あ、この子たち保護ねこだったんだ」って、興味喚起ができればそれで良いと思ってる。
そしてゆくゆくは、「ねこを飼いたいな」と思ったときの選択肢に、ペットショップと保護ねこが並べば嬉しいな。
今はまだやっぱり保護ねこの受け取りは簡単じゃない。なぜなら、ペットショップは売り上げをあげることが目的だけど、保護ねこ団体はねこが幸せでいることが目的だから。もう二度とねこに辛い思いをさせないために、飼い主の人をちゃんと選ばなければいけないんだよね。

―なるほどね。まさしく、自分の得意なことを使ってねこを助けるって感じだね。
そういうこと。そして、自分のやりたいことが明確になってきたからこそ、まわりの色々な「得意」を持っているひとたちをうまく巻き込めるようになってきたかな。例えば、「今度こういうことをやりたいから、この部分を手伝ってほしい」ってクリエイターさんに頼んだりね。

最後に

―それでは、最後にメッセージをお願いします!
はい!まだまだ保護ねこ業界は課題が山積みで、だからこそいまの自分にできることをコツコツやっていくしか道はないと思っています。
そのために始めたことが、ねこの屋台「NECO STAND」をつくるためのクラウドファンディング。
「屋台」という場さえあれば、そこに人が集まる仕組みをつくって、なんだって出来ると思ったから。
保護ねこ団体さんたちの雑誌や広報誌を置かせてもらって情報を発信することもできるし、動く場として移動式カフェをつくることもできる。そこで活動に協力してくれるアーティストさんたちの物販もできるかもしれない。
「ねこの広告代理店」というポジションだからこそ、まずは「保護ねこ団体さんをいろいろな人に知ってもらう」という目的に向けて、ねこ×◯◯にたくさんチャレンジしていきたい。
そうやって、ときに手段やPR方法を生み出しながら、今の自分にできることをやっていきたいと思っています。

現在クラウドファンディング挑戦中
「NECO STAND」 (https://camp-fire.jp/projects/view/103315)

―はい、わたしも応援しています。今日はありがとうございました!
こちらこそ!ありがとうございましたー!

大学卒業時の写真。
左:筆者、右:マユズミ

【プロフィール】
黛 純太(まゆずみ じゅんた)
1994年10月24日生まれ。2017年3月に成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科を卒業後、インターネット広告代理店の株式会社オプトに就職。在学中は映画祭やmy Japanなどの運営に携わり、ねこの広告代理店「chát」を立ち上げる。好きな食べ物はからあげとバナナ。

#インタビュー #クラウドファンディング #ねこ #保護ねこ

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