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マンデラ効果などについて

そこのキミ、マンデラ効果をご存知だろうか。ざっくり説明すると、「本当はなかったことなのに、なぜか不特定多数の人間が事実として記憶を共有している現象」のことである。詳しくは説明しないので、詳しく知りたい人はWikiを読めばよいと思う。ただし、もしあなたが親切な人の場合のみ、この記事をX(旧:Twitter)などでシェアしてからWikiに遷移するのも良いだろう。

寝ながら走る犬のイラスト(アイキャッチ)

具体例をピックアップしてみよう。たとえば「巨人の星」というアニメのオープニングで、主人公の星飛雄馬が整地ローラーを引いてトレーニングするシーンの記憶。当時の視聴者に尋ねれば、かなり多くの人間が「そんなシーンあったなあ」と思い起こすらしい。よかったらママやパパ、お兄さんお姉さんおじいちゃんおばあちゃんお隣さんにも聞いてみてほしい。事実、僕の父と母は「あったあった」「思いこんだら~試練の道を~♪のところやな」と具体的に歌詞をなぞらえながら懐かしそうに話していた。が、巨人の星のオープニングにそんなシーンは一切存在しない。当該歌詞の部分では、ただ星飛雄馬が走っているだけ。怖。奇々怪々やん。回怪奇譚やん。特級呪物やん。

寝ながら走る犬のイラスト(アイキャッチ)

話は変わるが、僕は仕事で日夜せっせと広告をこしらえてる。短くか細いキャリアではあるが、その中で身につけた哲学として「共通の記憶にアクセスできる広告は強い」というものがある。たとえば青春18切符の広告のいくつかも、このアプローチが取られていると思う。「どこかで見た気がするエモい記憶」は、たとえ本人が体験しておらずドラマや映画で見たシーンだとしても「あったな」と共感するし、その筋に乗りさえすれば細かい説明なんて不要になる。説明のない広告は気持ちがいいし伝わりやすい。

分析心理学に「集合的無意識」という言葉がある。みんな大好きユングが提唱した概念で、超ざっくり説明すると「誰も経験していないけどみんなが思うこと」である。たとえば太陽を崇拝したり、自然に安らぎを感じたりするような事である(焚火を見て心が落ち着く=1/fゆらぎの話もここに関連付けられそうだなとか思う)。心理学にはいろんな教科書があると思うが、僕が読んだ本には「本能と言い換えてもよい」と書いてあった。わかりやすい!ぜひ言い換えよう。最初から言い換えて書け。

寝ながら走る犬のイラスト(お気に入り)

つまるところ「社会背景とか時代とか無視して本能に訴えるアプローチができる広告は強い」ということが言いたい。が、それができない商材もある。むしろ、この資本主義競争社会において「本能にアプローチするだけで語れる商材」なんてほとんどない。たまにあるようだが、僕の手元にはない。

それでも何とか、それこそ背景や時代を組み合わせて共通の記憶をつくれないかと模索することもしばしばある。その中のアプローチのひとつとして、先に挙げたマンデラ効果を使えないものかと思う。みんなが勘違いしている怪奇現象を引っ張って、あたかも本物の記憶のように仕立てることで興味を掻き立てる。駄目だろうか?もしチャンスが巡ってきたときのために、都市伝説をたくさんストックしておかなければならない。そこまで出来の良くない頭に都市伝説をねじ込むと思想が偏り、あげく頭にアルミホイルなどを巻き始める恐れもあり、いささかリスキーな気もするが、気にするまい。

さて、これは完全な余談だが、マンデラ効果の有名な事例のひとつに「ファンタ ゴールデンアップル味」というものがある。1970年代に発売されたファンタのフレーバーで、金色に輝くファンタとしてCMも大々的に展開され、「実際に飲んでみるとリンゴジュースに炭酸が入っただけでがっかりした」、「うちのスーパーで仕入れていたが、飛ぶように売れた」なんて証言も集まったのだが、実際のところそんなフレーバーは発売されていないのだとか。怖。奇々怪々やん。回怪奇譚やん。五条悟しか勝たんやん。この事例は結構な議論を呼んだそうで、そのあと騒ぎに便乗して2002年には「ファンタ ゴールデンアップル味」が実際に発売したらしい。面白いなあ!

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