オオムラ

コピーライターです。実家の仏壇屋が潰れました。

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迷わず、迷う という生き方。

中学3年生のとき、原稿用紙1枚分のエッセイを書くという授業があった。「誰が読むわけでもないのだから好き勝手書こう」と、あることないこと書き連ねたら、原稿用紙をはみ出すくらい大きな花丸をもらった。ちょうど進路に悩んでいた時期だったので、「俺には文系の才能があるのかもしれない」という自信が生まれ、公立高校の文系クラスを目指すことにした。 ちょっと成績が足りなかったので、けっこう一生懸命勉強して、なんとか合格した。当時の自分は非常に楽観的な人間だったので、将来の夢を「男版さくらも

    • 660文字のフリ

      この話、YouTube Shortで偶然流れてきたのを見ただけなので本当かどうかは知りません。ただ真偽なんてどうでもいい。僕はこの話を知って、日本人で本当によかったと思ったのです。こんな限られた文字数で、しかも婉曲的な表現で、大いに心を震わすことができる。なんて素晴らしい文化を持つ国なんだろう。日本に生まれてよかった! 今や何文字だろうが、写真だろうが動画だろうが、自由自在に届けられる時代。それなのに、どうしてこんなにも意思疎通がうまくいかないのでしょう。例えばあなたは、ビ

      • ヤマアラシのジレンマの代替

        ヤマアラシのジレンマはご存知でしょうか。ご存知であってほしい。なぜならヤマアラシのジレンマを説明するという行為は、シュレディンガーの猫や夏目漱石の「月がきれいですね」を説明するのと同様の痛さがあるからです。 それでも念のために赤面しながら説明すると、「ヤマアラシのジレンマ」は心理現象のことです。「相手と親しくなりたい、距離を縮めたい」という想いと、「近づいて傷つきたくない、傷つけたくない」という想いの間に生じるジレンマを指します。この言葉をつくったのはドイツの学者だそうで、

        • ニンジンスティックをあたえたい

          5年ほど前、大阪で働いていたころは好きな道を選んで通勤していた。中之島の、中央公会堂前を通るルート。中央公会堂のビジュが良いというミーハーな理由が主だが、クリスマスシーズンは街路樹がイルミネーションされるのもかわいくて好きだった。しかし残業後の深夜帯は消灯されており、せっかくイルミネーションされているのに真っ暗な道を通るというのが、これまた得も言われぬ気分になり、たいへん心地よかった。当時はカップ麺しか食べないようなひもじい生活を送っていたが、平安貴族みたいな価値観で生きてい

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          挨拶の不思議

          日ごろ使う挨拶には、たまに意味不明なものがある。「ただいま」はわかる。「ただいま帰りました」の略だろう。「おはよう」もなんとなくわかる。一応、語源を引くと「お早くから、ご苦労様でございます」の略らしい。わかる。だから寝坊した人に「おそようございます」と挨拶する超高等ギャグも生まれた。 しかし、例えば「こんにちは」とか「さようなら」の語源はどうだろう。普通に使っている言葉だが、なぜこれが「出会いの挨拶」「別れの挨拶」に使われているのか、考えてもわからない。考えてもわからないこ

          挨拶の不思議

          マンデラ効果などについて

          そこのキミ、マンデラ効果をご存知だろうか。ざっくり説明すると、「本当はなかったことなのに、なぜか不特定多数の人間が事実として記憶を共有している現象」のことである。詳しくは説明しないので、詳しく知りたい人はWikiを読めばよいと思う。ただし、もしあなたが親切な人の場合のみ、この記事をX(旧:Twitter)などでシェアしてからWikiに遷移するのも良いだろう。 具体例をピックアップしてみよう。たとえば「巨人の星」というアニメのオープニングで、主人公の星飛雄馬が整地ローラーを引

          マンデラ効果などについて

          【急げ!】まだ間に合う、プライムデーにやるべきこと

          年に一度のAmazonプライムデーがやってきました!誰だっておトクに買い物したいのは当たり前。何がお買い得か、今回の目玉商品は一体何か、ポイントを増やす方法は。少しでもおトクに買うために、いろんなメソッドが各メディアで紹介されていますね! そしてお得情報と同時に、直前に定価を上げた「悪質な見せかけ値下げ商品」の情報も…。さらには「それを省くためにはURL末尾にこんな文字列を入れて検索すればよい」となんだかテクい攻略法まで紹介されています。トクするため、損しないため。とにかく

          【急げ!】まだ間に合う、プライムデーにやるべきこと

          アートとコピーおもろすぎワロタ  | アートとコピー Vol.04

          AYONDの佐々木俊さんの話、聞いてきたぞ!ということで、佐々木俊さんに課題をいただき、それに1ヵ月取り組んだうえで佐々木さんの講義と講評を聞いてきたで。めっちゃくちゃめっちゃくっちゃ面白くて、足をパタパタさせながら話を聞いた(行儀悪いし、もう30歳だからやめた方がいい)。今日はその講義を聞いていた2時間のテンションをそのまま、エンジン全開のアクセルベタ踏みでお伝えします。頭文字はOです。 本当なら録音して文字起こしをそのまま、素材の味をシェアハピしたいところですが、もちろ

          アートとコピーおもろすぎワロタ  | アートとコピー Vol.04

          企画書風  | アートとコピー Vol.03

          効率的に、汎用的に、スピーディに。実務をこなすうえで、売上は重要な評価軸で、そのためには量をこなさないといけない。最近は「誰にでも通用する企画書をつくれ」=「クライアント名だけ差し替えて通用する企画書つくれ」みたいなことを言われたりもする。悲しい話。通用してたまるか。 と、平日の悶々を片隅に、表参道に向かう土曜日夕方。向かう先は宣伝会議のセミナールーム。アートとコピーは、これでもう3回目。半蔵門線への乗り換えも手慣れたもんで、SuicaじゃなくてICOCAでスイスイ。 今

          企画書風  | アートとコピー Vol.03

          気の持ちよう  | アートとコピー Vol.02

          さすがに業界内なら誰しもが知る副田高行さんの講座。てっきり今日は、広告のつくり方を学ぶのだと思っていた。あの広告はどう生まれたのか。今回の課題は、どこに目をつければよかったのか。どうすればもっとよくできたのか。そんな講評が聞けると思っていた。でも学んだのは、面白い広告のつくりかたではなく、面白い自分のつくり方だったと思う。 コピーライターになってから、いろんなところで「キャッチコピーの全盛期は終わった」と耳にした。それで、別に広告のメインストリームにいたわけでもないくせに、

          気の持ちよう  | アートとコピー Vol.02

          初期化  | アートとコピー Vol.01

          思い返すと、会場まで向かう自分がかわいくて仕方がない。卸したてのスニーカーを履いて新大阪駅へと向かい、新幹線では文庫本を開いては閉じ、開いては閉じた。わかりやすく、ワクワクしていた。手垢まみれの表現だが、何かが始まる予感がしていた。 しかし現実は厳しい。「何か」はもうとっくに始まっていたし、僕は既に乗り遅れていた。それに気づかず優雅に駅弁をほおばる自分は、やはり振り返るとかわいくて仕方がない。 アートとコピー3期。憧れていた講座がついに始まった。初回のテーマは、「仕事が集

          初期化  | アートとコピー Vol.01

          ホラー映画を観れない人、やべえぞ

          今週は、あるプロジェクトのチームミーティングがあった。メンバーは3人で、そのうち2人が女性、1人が自分だった。女性2人は仲良しなので、終わり際に雑談が始まることもしばしばある。今回は、ホラー映画についての話題だった。 2人はやたら怖い映画が好きなようで、互いにお勧めし合っているような関係のようだった。僕はハッピーエンドの映画が好きだし、好き好んでホラー映画を観ることはない。だから「すごい暗い人たちだな」と思っていた。 しかし、何が彼女らを駆り立てるのか、には興味があった。

          ホラー映画を観れない人、やべえぞ

          生活のそこ此処 06

          今月、30歳になりました。何も変わってなくても変わらなくちゃという焦燥感と、驚くほどの日差しで肌が真っ黒こげになりました。夏期休暇中は、東京の年下の社員が関西に遊びに来てくれ、年上なりの立ち居振る舞いを考えたり、初めて他人に「若さ」を感じたりしました。良い夏を過ごせそうです。

          生活のそこ此処 06

          未来を占うことなど不可能 説

          チームミーティングが長引き、定時を1時間ほど過ぎたころ。ようやく議題の着地点が見えたところで、自然と雑談に移行した。こういうダラッとした時間は放課後みたいで好きだ。ピンポン玉が跳ねるように次々と話題が切り替わっていくなかで、占いの話になった。 占いを信じるか。この質問に関しては、持論がある。面倒くさがられるだろうからあまり人に話したことはない。しかし、こんな末端ライターの書く記事を好んで読む奇特な人は、きっと共感してくれるだろうと思うので、今日は思い切って書こうと思う。この

          未来を占うことなど不可能 説

          小説家にはなれなかったよ

          夢見がちな少年だったころは、小説家になりたかった。物語を描いて、文章を綴って生きていきたかった。あわよくば売れて名誉を手に入れたかった。ここが僕の浅はかなところで、好きな作家たちとの大きな違い。名誉を得る手段としての「夢は小説家です」。格好悪すぎる。でも太宰治にはちょっとそういうフシがある。だからかわいい。 あいにく、僕はセンスと努力と覚悟が足りないまま大人になったので、小説家にはなれなかった。それから紆余曲折あって、コピーライターになった。自分がつむぐ言葉でお金をもらえる

          小説家にはなれなかったよ

          犯行は昨夜未明、容疑者は東京

          生まれてこのかた、西日本でしか暮らしたことがないせいか、東京に対してのイメージが偏ってしまっている。「東京」と聞いて頭に思い浮かぶのは、ネクタイを締めたビジネスマンがスクランブル交差点で行き交う映像である。もちろん彼らは全員7:3で前髪を分けているし、銀縁のメガネをかけている。 カツカツ、コツコツと、革靴でアスファルトを鳴らす音だけが、規則正しく、そして空しく響く。この街には一切の余分がなく、優しさもない。哀しみの摩天楼。 もちろん、本当は知っている。東京がそんな街ではな

          犯行は昨夜未明、容疑者は東京