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ヤマアラシのジレンマの代替

ヤマアラシのジレンマはご存知でしょうか。ご存知であってほしい。なぜならヤマアラシのジレンマを説明するという行為は、シュレディンガーの猫や夏目漱石の「月がきれいですね」を説明するのと同様の痛さがあるからです。

それでも念のために赤面しながら説明すると、「ヤマアラシのジレンマ」は心理現象のことです。「相手と親しくなりたい、距離を縮めたい」という想いと、「近づいて傷つきたくない、傷つけたくない」という想いの間に生じるジレンマを指します。この言葉をつくったのはドイツの学者だそうで、「ヤマアラシ同士が暖を求めて寄り添いあっても、互いのトゲに刺されて離れる。離れると寒くなり、また寄り添いあう。これを繰り返し、最適な距離感を発見する」という様子を、人間関係に置き換えたそうです。ああ恥ずかしかった。穴があったら入りたい。

なぜこの説明が恥ずかしいかというと、これがとてもミーハーな知識だからです。というのも、この言葉はアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する言葉で、僕も15歳のときにエヴァきっかけでこの言葉を知りました。それからはもう、いたるところでヘビロテ。「それ、ヤマアラシのジレンマやん」「これはヤマアラシのジレンマと言ってもいいかもしれないね」と、教室でもグラウンドでも使いたい放題。恥ずかしい。穴があったら埋めてあげたい。

ヤマアラシのイラスト。トゲを避けて寄り添えそうにも見える。

こういった恥ずかしい事情もあり、この言葉はあまり使いたくないんです。しかし、この「ヤマアラシのジレンマ」はわりと便利です。もしヤマアラシのジレンマという言葉を知らなくても、こういった心理状況に共感できる方はたくさんいらっしゃるでしょう。心理学用語はすごい。僕もこんな言葉をつくってみたい。

そんな思いを胸に生きてきて、昨年ついに僕も心理学用語を開発しました。それがチーズナンです。チーズナンのジレンマ。

これはチーズナンではなくビッグバン

チーズナンはご存知でしょうか。ナンのなかにたっぷりとチーズが入っていて、ぐにょんと伸びるのですが、これがもう、めちゃくちゃにおいしいんです。今チーズナンという言葉をタイピングしただけで、この週末はチーズナンを食べようと思うほど、中毒性があるおいしさです。ああチーズナン食べたい。しかし、このチーズナンには落とし穴があります。

インドカレー屋さんでチーズナンを注文すると、焼き立てのあつあつでテーブルに運ばれてきます。あつあつだから、チーズがぐにょんと伸びます。だからおいしいんです。しかし驚くことに、チーズナンは熱すぎて持てないんです!ナンは手で持ってちぎって食べるのがおいしいんですが、チーズナンは持てないんです。だから冷めるのを待つしかないのですが、チーズは冷めたらぐにょんと伸びないんです。ぐにょんと伸びるからおいしいのに。

チーズナンは、熱いからおいしいのに、熱いから食べられない。これがチーズナンのジレンマです。人間関係でも同じことが言えます。他人に魅力を感じる部分と、その人に近づけない理由が同一のケース。「私のことなんて好きじゃないあなたが好き」とか。「私に振り向くあなたなんてきらい」的な。はい。そんな感じで、あとは適当にやってください。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

ちなみに実際のヤマアラシは針のない頭部を寄せ合って体温を保っているそうです。かわいいですね。

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