『小説 不思議な体験』2021年12月6日もりじぃ的小説。

「ただいま~って誰もいないか…」
毎日毎日仕事に追われる日々。
楽しみといったらTwitterで色々な人たちと喋ること、たまに行ける推し活ぐらい。

今日もTwitterにて現実逃避中に変な記事に出くわす。

[絶対夢が叶う神社があるらしいよ。場所の詳細は知らないけど写真載せときます] 

誰かがRTしたものと思われるものはTwitter上にかなり拡散してるようだった。
「この世の中、みんなそう思うだけでそんなことはない」と自分に言い聞かせシャワーを浴びて寝た。

翌朝、何気にテレビを付けると昨日見たあの神社の話で盛り上がっていた。
[昨日Twitterで拡散されたものですが写真が出回ってるようで真実は分かっていません。場所も全く分からないという人々でいっぱいです] インタビュアーが色々な街ゆく人に聞き回っている。
「また始まったな」とボソッと呟くとテレビを消した。

あの日以来、あの神社を探す人たちで溢れかえる街。その街を自転車で通り抜ける。この世の中が起こした事件と言ってもいい。会社の人たちも近所の人たちも「今」の何かから抜け出したくて必死に探してる。私は相変わらず、あの神社のことを気にしないでいた。

ある日の日曜日。久々に友達がご飯を食べにいこうと誘ってきたので行ってみることに。

友「おー!久しぶりじゃん」
私『久しぶりー!元気してた?』
「してたよー。そっちは?」
『仕事が大変で疲れてるー』
「相変わらずだねー、とりあえず中に入ろ」

久々の外食、久々の友達。若干テンションが上がっていた。
「ねーねー、そういえばあの神社の話知ってる?」
『あー。Twitterで見たよ。あれなんだろうね、気味悪い』
「えー!探してないの?気にならないの?」
『ならないよ。あんなん嘘だと思ってる』
「マジか。案外信じてるかと思った」
『そんなことはない。なんだか怖いし』
「でもさ、もしその神社見つけて願い事するとしたらどうする?あくまでもしもだよ?」
『えー、そうだなぁ。まぁ、ありえないけど前から応援してる芸人さんと付き合いたいかも』
「前から言ってたもんねー。」
『ありえないけどね』
「まぁまぁ。私は大金が欲しいから、あの神社探してるんだ。でも全然見つからない」
『そうなんだ?私はどうでもいいからスルーだな』
「ほんと夢ないなぁ。もっと欲出していかないと」
『もういいよ。とりあえず今の生活出来て、推し活出来れば』
「そっかー。」

友達との食事後、神社を探す人々を通り抜け家に帰る。囚われたかのように、あの神社を探す人々。何も気にしない私。なんだか真逆を生きてるみたいだ。そうやって何も無い1週間が過ぎようとしていた。

ずっと仕事に追われていたので有給を取り、推し活をするため大阪へ。
私の推しは全員大阪。芸人だ。
この為に頑張って働いて、ワクチンを打って我慢した。ここ数年は行けてない。その前は、ことある事に行っていたのに。

事前に劇場チケットを取り、新幹線で向かう。気分は爆上がりだ。
約2時間半。新大阪に着き、小走りで御堂筋線に。ようやく難波に到着。
久しぶりの難波。千日前商店街を歩き、漫才劇場に行く。足取りは軽やかだ。
入口に到着。今回は奇跡的に整理番号が早い方。
番号呼ばれて前列狙いに小走りになる。
上手いこと真ん中付近に座ることが出来た。
今日も私の大好きな芸人さんにたくさん笑かして貰った。
「明日もたくさん笑って帰ろう。それにしても漫才してる姿カッコよかったなぁ」
ボソッと呟きながらホテルに向かう。

次の日も、新幹線の時間ギリギリまで公演に入り満喫していた。大満足のまま、新幹線に乗る。
すっかり笑い疲れて寝てしまった。

終点東京~という車掌の放送で目が覚める。
まだ興奮状態だったので、まだ家に帰りたくなかったからいつもとは違う道を帰ることにした。
道中は推しの漫才のことを思い出しては笑いながら歩く。
かなり遠回りしたところで、なんだか見たことある神社が見えた。
『もしかして。。。』私はすぐにTwitterを開くと、あの神社の写真と照らし合わせた。
どう見ても、あの神社だ。しかも誰もいない。しかも東京にあった。あんなに探してる人いるのに見つからないなんて。
私は神社に入ってみることに。信じてはないけど、あんだけ騒いでるわけだからお参りしていくことに。
『神様。私は大阪の芸人Tさんと付き合いたいです。お願いします。』手を合わせ、多めのお賽銭して、神社を後にした。

次の日。出勤の準備をしているとTwitterにDMが来ているという表示が出ている。
開いてみると、あの芸人Tさんからだった。
内容は昔からファンだったことを分かっていて気になってDMしたとのことだった。
これがキッカケで、後に私たちは付き合うことになる。

私は嬉しくなり、いつもより早く出てあの神社にお礼参りをしたいと思い記憶の通りに道を進むが一向にあの神社が見つからない。周辺を探しても見つからない。しかも、神社があったはずのところは空き地になっている。確かにここにあったはずなのに。なんだか怖くなって、足早にその場所を去った。


街には、あの神社を探す人々で溢れかえっている。

探すと見つからない神社。探さないと見つかる神社。

不思議な体験をした。