【短編】 元日本人宿

なぜかよく眠れた。

目を覚ましてから朝食を食べに行く。

「ハロー」と言う。

「Good morning」若い女性スタッフが応じてくれた。

「ブレックファースト」

「OK, Please wait there」

バーの前のテーブルに座り、旅行の予定を今から考える。

朝8時。

ネット情報:カンズへのバスは毎朝6時1本だけ

え?、カンズ行けない?

明日朝6時出発、午後6時到着。
明後

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女性にとって 前戯とは。

女性にとって前戯は、前菜ではないです。むしろ、前戯がメインディッシュと言ってもいいくらいと感じます。前戯で、もっと色々なところをたっぷり触られたい、もっともっと、たくさん舐めて欲しい、そういう気持ちを汲み取ってあげましょう♡ 前戯で気持ち良くなりたいのが、女性にとっての、セックスの楽しみでもあるのです。

しっかりとした前戯があるからこそ、挿入でも、気持ち良くなってもらえることができます。AVのよ

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ハハノカレ #3

リビングに入ると部屋まで漂っていた食欲をそそる甘い匂いはよりいっそう強くなった。キッチンには雪ちゃんが黒いエプロンを着けてフライパンを覗いている。

「雪ちゃん、おはよー」

私は声をかけて、テーブルに上半身をもたれこませながら椅子に腰掛けた。どうやら声をかけられるまで私の気配に気づいていなかったようで、少し驚いたように答えた。

「奈々ちゃん起きてたんだ。おはよう。もうすぐフレンチトーストできる

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【短編小説】山の上のアイス屋さん

「おーい、ぼく。アイス買ってきてくれよ。」

ブロック積みにトタンを渡しただけの古びたバスの待合所から男の声が聞こえた。

「ぼくのことですか。」

ぼくは、道にろう石で絵を描くのをやめて、振り返った。

「君しかいないよ。」

「なんでですか。」

「なんでって。こどもは大人の言うことを聞くもんだよ。おじさん暑くて動けないから、山の上のアイス屋さんに行って、アイスを2本買ってきてくれ。たのむよ。

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不要な要求

文:槻空 翔野

蝉が忙しなく鳴いている。我、我先にと何かを求めて泣いている。彼らには約7日の自由が設けられているはずであるが、それでも何かを欲するとするならばそれは何であろうと我々人間には決してわかりうる事のない事象なのだろう。
さて、そしたら私は何を欲するのだろう。義母に尋ねる。「しらない。」と一言、それからテレビを付ける。あの女は自分にたまたま子供を授かることが許されなかったために私を私の了

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健忘症

最近、もの忘れがひどい。といっても、私に、まったく自覚症状はないのだが。

「社長、以前にも申し上げましたが」
「書類は、お渡ししたはずです」
などと、部下からも、よく言われるようになった。

思い切って、脳神経科に行ってみる。

医者は、くわしく診断した後、「原因は解明できませんが」と言って、一応、記憶力が、飛躍的に回復する薬を処方してくれた。

私は毎日、それをキッチリと服用している。

副作

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短編小説「冬の水槽」裏話②
最後の一行は元々なかった。
冒頭の一文で問題を提示、最後から二番目の一文で問題が解決、それで終わり、の予定でした。
最後の最後の一文が浮かんだ瞬間、テンションが上がって無意味に走り出してしまいました(笑)
https://note.mu/yukino_tsumi/n/nf6244fa3d87f?creator_urlname=yukino_tsumi

橋で祈る2◇その人は、ギターをかき鳴らし

連載小説『橋で祈る ~夜の底を流れるもの~』第2話

  ***

 ここでなにか言うべきなのは自分だろうと、乃々花はじゅうぶん心得ていた。
 けれども、なにを言うべきなのかまるで見当がつかず、立ち尽くしているだけの自分に腹が立った。

 空気を読んでいるのかいないのか、礼が両腕を天に伸ばした。
 全身を弓なりにしてストレッチをし、大きく息を吸い、視線を遠くに投げて腹から声を出す。
「よーし、そん

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うらなか

名声を響き渡らせた遊園地。
 夢中になって遊んで、無邪気に笑っている子供たち。

 史跡名勝の庭園で、
 石の椅子に座って、咲き乱れる花ときれいな羽者を着て、誰かを待っている少女。

 名なしの山のふもとに、
 森の近く寺への階段で、ゆったりと掃除している僧。
  あとは、深い森の奥で、人がいなくて静かな美しさ。

 それらの喜んで、幸せで、のんびりさ、そして美しい。
 一つ一つ、わたしのうらにや

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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.11第二章 海の章

マリは、少し緊張気味にスペースに向かう。一歩一歩、秘かな祈りをこめながら。どうか、カケルの最後の舞台、一緒に共演できますように、と。
 正面を向いて、遠くを見つめる。少し、息を吸い込む。
「花を」
 ここで声の調子を変えよう。
「花はいりませんか」
 まばたきはしない。遠くの、さらに向こうにあるものを見るように、目を開く。
「うん」
「いいね」
 ぽそぽそっと何人かのささやき声が耳をくすぐる。

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