見出し画像

2021年の脱炭素や気候変動に関連する大きめのイベントのまとめ

脱炭素!
コロナが落ち着いてきたら次の流行りは脱炭素です。
今年は、国際的に気候変動対策をもっと厳しくすることが合意されたり、日本でもめちゃめちゃ難しい脱炭素目標が掲げられたり、それなりに動きがあったので、ざっくり大きなイベントだけでも振り返ってみましょう。

2100年までに海面が2m上昇するかも

今年のイベントふりかえり

昨年末:2050年カーボンニュートラル宣言

2020年10月、菅総理(当時)は2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言しました。
温室効果ガスの排出量を可能な限り削減し、かつ空気中の温室効果ガスを吸収することで、温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを目指します。

ちなみに排出量の削減は、排出量の多かった2013年度を基準に考えます。
2013年度の排出量は、CO₂換算で14.1億トン。
2020年度速報値では、CO₂換算で11.5億トン。

7年で2割ほど削減できていますが、2020年はコロナの影響があるので単純に排出削減とは喜びにくい数字です。(コロナが落ち着いたら増えます)

温室効果ガス放出量推移
出典:https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/ondanka/ghg-mrv/emissions/material/honbun_sokuhou_2020.pdf

また、排出量が減るほど、さらに減らすのは大変になります。
たとえば、月の食費が10万円なら半分にするのは簡単ですが、月の食費1万円からさらに半分にするのはかなり難しいです。
排出量削減は徐々に難しくなっていくことを念頭に、取り組みを進めていく必要があります。
カーボンニュートラルについて、詳しくは以下リンクを参照ください。

今年4月:2030年温室効果ガス排出量46%削減を宣言

2021年4月、気候サミットにおいて菅総理(当時)は2030年時点でも温室効果ガス排出量を大きく削減することを宣言しました。

2050年カーボンニュートラルの長期目標と整合的で、野心的な目標として、我が国が、2030年度において、温室効果ガスの2013年度からの46%削減を目指すことを宣言するとともに、さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていく

https://www.hkd.meti.go.jp/hokpp/cn_society/1st/data04.pdf

これまでは26%目標だったのですが、倍近い46%まで引き上げられました。目標の引き上げはポジティブでよいと思うのですが、実現できるかどうかが問題です。

もとの26%目標は、実現のための計画を立てたうえで、これなら達成できるという現実的な目標でした。
しかし削減目標を46%に引き上げた際は、達成に向けた計画を立てられませんでした。各省庁が絞り出した排出削減案を並べたものの、実現できるかどうかわからない案が入っていたり、各省庁が同じ内容の案を提示していたり、なんとか形にしました!という状態。

2030年目標が厳しくなったことで、すぐに排出を減らすことのできる技術が優遇され、結果として2050年に向けて”長い目で育てるべき技術”が潰れてしまうことが心配されます。
また、上で挙げたように排出削減は進むほど難しくなるので、2050年まで直線的に削減を進められる可能性は低いです。

何が有望な芽なのかもわからないですけども

総じて、国際的に十分な水準となるように、リップサービス的な目標設定と感じられました。
ただ、日本は先進国として気候変動対策を引っ張っていくべき立場ですし、省エネ技術を売りにしたい点でも高い目標を掲げるのは良いことです。
実現に向けた取り組みがどこまで進むかが勝負です。

7月:G20

真面目に追っていなかったので、あまり覚えていません。小泉環境大臣(当時)がいじめられて帰ってきた気がします。
日本は石炭火力の使用を続ける方針なので、格好の標的になります。しばらくの間、環境大臣は国際会合に出るのがしんどいでしょう。

日本の石炭火力はとても高効率です

8月:IPCC第6次報告書

IPCC報告書では以前より「気候変動はどうやら人間のせい」というスタンスが取られてきました。そして今回の第6次報告書ではさらに踏み込んで、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。」として、人間の社会活動が地球温暖化を引き起こしていることを明確にしました。
また、温暖化によって自然災害が激しくなっていることが指摘されています。すなわち、地球温暖化の影響が、大雨、干ばつ、激しい熱波や森林火災というかたちで現れつつある可能性が高いとされました。

最近は毎年豪雨被害がありますね

和訳された超概要は以下リンクからどうぞ。

英語でも平気な方は、以下リンクから原文が読めます。

また、国立環境研究所から解説動画も出ています。

10月:第6次エネルギー基本計画

2030年までに温室効果ガス排出量を46%削減。
2050年までにカーボンニュートラル達成。
このふたつの目標を踏まえて、エネルギー基本計画が定められました。
エネルギー基本計画は、読んで字の如く、日本のエネルギー政策の基本方針を定めるものです。

2030年目標として、以下の電源構成が挙げられました。なお、括弧内は2019年実績です。
再エネ:36~38%(18%)
原子力:20~22%(6%)
火力:残り(76%)

要するに、低炭素電源(再エネ+原子力)を24%から約60%まで増やそう!という目標です。かなり意欲的な目標です。

再エネの主力として期待されるのはふたつ。
太陽光発電と洋上風力発電です。

じつは、日本は太陽光発電の導入容量が世界一です。
ただし、導入が進んでいるということは、太陽光パネルを大規模に設置することのできる空き地が減ってきているということでもあるので、今後は上手く空き地を発見して設置していく必要があります。
また、しばらくすると太陽光パネルが大量の廃棄物として現れるので、リサイクル体制を整えないといけません。

耐用年数も問題です

洋上風力は、北海道、東北、九州で大規模な導入が期待されています。
欧州に比べると適地が少なく、風も弱いとされており、やや使いづらい印象です。各地で発電した電気を各地に運ぶための送電網整備が必要なので、まだまだ手間もお金もかかります。
海外メーカーの技術を取り込んで、まずはひとつ、成功例ができてほしいです。

もちろん陸上風力も大事です

国は再エネの増加を促進するために地域共生、規制合理化などの方針を掲げています。これをただの方針で終わらせず、うまく事業者や自治体の背中を押せるような制度や補助金の制度を組み立てる事が必要で、同時に地元住民と信頼関係を構築することが重要です。住民の反対で撤退するケースもちらほらあります。

原子力は既存原子力発電所の再稼働を前提とした数字です。また、2050年以降も使うなら発電所を新設しなければならないので、さすがにそろそろ真面目に考えるべきタイミングです。原子力には頼らない!という方針にするにしても、腹を決めるなら早いほうがよいです。

こういうタイプの原発は日本にはないですね

全体として、これまでのエネルギー基本計画の流れを組みつつ、再エネは妙に強気、原子力はしれっと使っているわりに具体案がないな、という印象の計画でした。

11月:COP26

各国の代表が集まって、気候変動対策を話し合う会議。それがCOP。
そしてその26回目は……COP26です。

政治パワーがめちゃめちゃにせめぎ合う場です

以前は、2050年までの気温上昇を2.0℃までに抑えることが目標でした。しかしCOP26では、さらに厳しく、2050年までの気温上昇を1.5℃までに抑えることを目標とすることが合意されました。

COP26までに各国が掲げていた気候変動対策では、すべて実施したとしても2050年までに温室効果ガス排出量は増加し、気温は2.0℃を超えて上昇してしまうということが指摘されていました。つまり、2.0℃目標も達成できない状態でした。
しかし、気温上昇2.0℃と1.5℃の間では、環境被害に大きな違いがあるということがIPCCにより報告されています。自然災害の発生数や激しさ、動植物の絶滅など、0.5℃高くなるだけで明らかに違いが生じるのです。
特に気候変動の影響を受けやすい途上国としては死活問題です。災害対策や医療体制が脆弱ですし、島国に至っては沈みます。比喩ではなく、本気で人間および動植物の生死に関わります。

というわけで、2.0℃目標もクリアできない現状ではありますが、さらに厳しい1.5℃目標を目指すことが合意されました。

これについてはもう、賛否様々。環境畑の人は「まだ経済のことを考えて甘い目標を立てている!」と怒り、経済畑の人は「そんな目標達成できるわけねぇだろ!経済壊れるわ!」と怒っています。
仲良く妥協点を探していきましょうね。

仲良くしろ~~

また、気候変動自体は止められないので、それによって被害を受ける地域に向けた対策野必要性や、途上国に向けた金銭的支援の増加についても合意されました。日本も、途上国に向けて今後5年間での100億ドル資金支援を約束しました。

その他

だいたい大きなイベントは以上です。
あとは追加で、日本で行われている脱炭素に向けた取り組みをいくつかご紹介。

100か所の脱炭素先行地域

日本各地に、集中的に脱炭素プロジェクトを進める先行地域を作る試みが行われています。
再エネ利用や省エネ強化、それに資源の再循環など、新しい取り組みを次々試すことで、地域単位の脱炭素パッケージを開発します。成功率の高い手法がパッケージ化できてしまえば、他の自治体もドミノ倒し的に脱炭素を進められるという見込みです。

脱炭素事業への支援(仮)

まだ(仮)がついていますが、脱炭素事業への投資を活性化するための体制づくりが進められています。目指せ年間投資額8兆円!
脱炭素関連のビジネスにはどんどんお金が流れ込むので、投資家の方にとっても重要ですね。

電気自動車の購入補助金(東京都)

電気自動車の購入補助金が45万円もらえます。
これは東京都の例ですが、各自治体で補助があると思うので探してみてください。

Fridays For Future(通称:FFF)

代表的な環境団体のFridays For Future。
金曜に活動していたことから、この名になったようです。

こういった活動は過激になりすぎるきらいがあり、すこし心配な気持ちで見ていますが、しかし未来を良くしたいという気持ちはすばらしい。
日本でも各都市で活動されているようで、地域ごとの問題に声を挙げておられます。
この活動そのもので成果を出すというより、環境問題への周知や、多様な立場の人間が混ざり合う場として機能してくれることに期待しています。

まとめ

国際的に脱炭素競争は加速しており、先進国は達成困難な目標を掲げることになりました。
最大の温室効果ガス排出国である中国は一歩引いた態度を示していますし、お金がないのに脱炭素しろと言われる途上国はさらなる支援を要求しています。世界は一枚岩ではありません。

しかし現実問題、気候変動によって地球環境はめちゃくちゃに壊れるかもしれず、すでにその兆候が現れているという意見もあります。
それに対して、どれだけの対策をすれば十分なのかはまだわかりません。いつまでにすればいいのかもわかりません
そんな不確かな状況のなかで、世界規模の課題に対処しなければなりません。

そんな状況なので、あまり課題ばかりに目を向けていると疲れてしまいますし、やる気も萎えてしまうので、なるべくポジティブな気持ちで取り組めるように、気候変動という問題の見方を変えていきたいですね!
シンプルに、気候変動対策は儲かる!となるのが手っ取り早い気はするものの、それをしてしまうと富裕層の総取りゲ~~~ムになってしまいます。資本主義も変化を求められます。

いち住民の立場から、楽しく、前向きに取り組めるようなモチベーションを持てるように…………具体的には何も思いついていませんが…………まぁ、いろいろ考えていきましょう!

ご覧いただきありがとうございます! 知りたい内容などあればご連絡くださいね。