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銭湯ってめちゃくちゃ美しい

かぽーーーーん。

はぁ〜〜〜。

なぜ人は湯に浸かると声が出るのだろう。

肉体労働のバイトで死ぬほど汗をかき、
どれだけ水を飲んでも、ちっともトイレは近くならない。

それなのに、仕事終わりにまた汗をかいている。

少し熱めの湯に足をつけ、ゆっくりと座る。

少しビリビリした感覚に慣れた時、
なんともいえないくらいに気持ちが良い。

肩まで浸かる。

タオルを頭の上に乗せる。

先程まで体を流していた人がいなくなり、
自然に止まるシャワー。

すっぽんぽんで会話する親子。
その身長差や全てが小さく、
丸々とした風貌が子供っぽい。

浸かりながらストレッチをするおじいちゃん。

または水の中で筋トレをするおじいちゃんもいる。

野球中継と新聞を広げるおじいちゃんもいた。

その全てを、湯に浸かりながら、見ていた。


正直、日本に帰ってきて(わずか2ヶ月しかイタリアにいなかったくせに)
なかなか日本の好きなところを見つけられずにいた。

イタリアの文化や人柄や街がすごく好きだった。

だから、どうしても比べてしまって、
日本のこーゆーところが好きじゃないんだよな。
めんどくせーなぁー。

なーんて思っていた。

具体例を出すなら、
残業は当たり前にするし、
歩きスマホをして、プリウスミサイルくらいぶつかってくるし、
すぐ嫌そうな顔で「すみません」って言われるし、
細かいし、
黙っているのが当たり前だし。

その日本人らしさというか、
他人に迷惑をかけてはいけません。
そんな文化に少し嫌になっていたところだった。

東京に出てきたものの、好きな場所はない。
疲れたらここに来ようと思うところも、
好んで何度も足を運ぶところも。

悔しさだけでは飽き足らず、
気持ちまでイタリアに置いてきてしまったみたいで。

つまんねぇなぁ、って思ってた。

別に日本食を食べても、馴染むけれども感動はしないし、
化学調味料や保存料にイヤイヤしていた。

なんだか生きにくく感じていた。

日本は海外で過大評価されていると思う。
そーんなに、いい国ではないよ。

そんな生活で、やっと見つけた美しいところ。

銭湯ってめちゃくちゃ美しい。

露天風呂って、本当に気持ちがいい。

迷惑そうな人も、スマホに夢中な若者もいない。
全員がのんびりとしていて、
そこには物理的にも、感覚的にも、
暖かい空気がある場所だと感じた。

落ち着くんだよなぁ、銭湯。

きっとさ、全員がリラックスしていて、
急いでいる人なんていないからだと思う。

その日の疲れを落とす、癒すための時間なんだと思う。
その連鎖が、銭湯全体を暖かくしてくれている。

わざわざお金を払って風呂に入るのに、
忙しくしている人なんていないだろう。

いたとしたら、そいつは骨の髄まで日本人だ。

そんなこと考えていたら、
もうホカホカの茹で蛸になっていた私は、
惜しみながらもシャワーで体を流し、
体を拭いて外に出る。

体重計で体重を測る。
少し重くなっているなぁ、もう少し絞るか。

渇いた喉をそのままに、
ゆっくりと着替え、番頭さんに挨拶をして、外を出る。

「ありがとうございました、おやすみなさい」

いえいえこちらこそ。
「ありがとうございました、おやすみなさい」

一語一句違わず返答し、外に出る。
そして、アイスとコーラをコンビニで買った。

湯上がりはビールより、アイスっしょ。
って思っている私は、半分溶けかけを楽しみながら、座って食べる。

風呂に入ったのに汗をかきながら。

猫が2匹寄ってきた。
私を挟んでその2匹は会話しているようで、
ごめん、邪魔したね、
って声をかけたら、茂みに行った。

日本は猫までシャイなのね。

赤提灯の出ている焼き鳥屋や居酒屋が2、3軒ある細い通り。

「お、重くなったなぁ!」

父親が息子をおんぶしていた。

静かで、優しくて、私はうっとりしてしまっていた。
ここには電車の音も、車の音も聞こえない。

よし、焼き鳥を買おう。

昔からある、持ち帰り専用の焼き鳥屋で、
串を3本買い、また座って食べる。

イタリアの友達に、イタリアでパンチェロッティなるものを食べていた時に、
「日本の有名なストリートフードは何?」
と聞かれて、

「日本人は歩きながら食べるのは
 良くないと思ってるから、ない。」
「だからこんなにたくさんベンチが至る
 ところにはない。」
そう答えた。

次、また会ったら、教えてあげよう。
「やっぱなかったわ、おれは食べるけど。
 それとね、寿司より焼き鳥の方が美味い」

気がつけば、蚊に3箇所も脚を食われていた。

持ってけ泥棒!

時すでに遅し。

ポリポリとかきながら、タバコの火を消し、
また歩き出した。

もし、海外にJAPAN TOWN を作るなら、
銭湯と焼き鳥を作ろう。

裸の付き合いって、気持ちいいぜ。

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