さくら
さくらが咲いた。
おんなじ場所で、おんなじようなわたしが、おんなじように咲くさくらを見上げている。
仕事を辞め、自分を労ることに決めて日々を過ごし始めた頃。
「よかった」と初めに思ったことは、季節ごとに咲く花を思う存分眺められること。
よく覚えている。
うんと心配、不安がつよいわたしは“これでよかったのかな、間違えてないかな、責められやしないだろうか、これからどうやって過ごせばいいのかな、日常を生きられるだろうか”毎日そんなことを頭いっぱいに考えていた。
無理もない。気づいた時にはもうフルマラソンに参加していて、ゴールが見えなかったから。
走り続けていることにすら気づいていなかったから。
身体がおかしくなって、心がちぎれた。
海の底か狭くて暗い部屋の中か。
息をするにも苦しくて、元の自分なんかわからなくなった。
うーん。そんなことを書き始めるとちょっと遠回りすぎるからここらでおしまい。
そう、あれから一年とすこしが過ぎた。
あの時新鮮に眺めていた花が咲いている。
おんなじ季節が巡ってきたのだ。
新鮮だった花々は「また会ったね」に変わった。
また。
また。
時間の経過にハッとして、あまり変わらない自分に「しっかりしてよ」と呟いた。
また会ったさくらにうっとりしたことは事実だ。
さらさら落ちる花びらを目で追って、ほんのり甘い空気を吸いこんで、すべてを閉じる。
おんなじかな。
すこしはちがうかな。
さくらもわたしも。
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