見出し画像

素敵な夜は心の闇に寄り添う

おしゃれなレストランで、3年来の友達と食事をした。

カクテルは可愛くて美味しいし、お料理も一つ一つ手間がかかっていて、見た目も美しい、口に入れた瞬間、うまってなる旨味の凝縮されたものばかり。
雰囲気も最高で、お正月明けで財布の紐が固くなりがちなこの時期にもかかわらず、店内は常に満席だった。

私たちは半年ぶりにあった。溜め込んだ話を、どちらからともなく吐き出す。その友達はいつでも元気だ。わたしと話すときは、元気に愚痴も話すし、元気にわたしの話も聞いてくれる。たくさん笑うし、言いにくい話もあっけらかーんと話すから、わたしもついつい恥ずかしい話まで、なんでもぶちまけていた。

でもそんな彼女は心理セラピーを受けている。
不安障害で全く寝られず仕事にも行けなかった時期がある。
パニックを起こし、精神安定剤の薬に頼って暮らしている。

素敵なレストランで元気な彼女と楽しく話すひとときは、私から見る思い出の1ページだ。その幸せな画面から全く読み取れない、彼女の心の傷。

わたしが見えている世界は、全く不完全である。

外に出ると雪が降り始めていた。
寒いけれどわたしの足取りは軽かった。

彼女から一緒に撮った写真が送られてきた。

今夜わたしの見えている世界は完璧だった。

ただただ、彼女が今夜の記憶を幸せなものとして心の引き出しにしまってくれることを願う。



素敵な夜は、何度訪れてもいい。
素敵な夜は、心の暗闇に寄り添う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?