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懐かしい場所が再び出会わせてくれたのは、過去の自分

夏真っ盛りの休日。
久しぶりにかなり入念に掃除に勤しんだあと、
午後からは1年ぶりにあのカフェへ行こうと車は走らせた。

高速も使いながら、約1時間半。
そこは、隣県に位置する、自然豊かな場所にある喫茶店。

いつもそこのコーヒー豆を注文させてもらっている。

夏になると、なんだかドライブがてら行きたくなって、思えば去年の夏以来の訪問だった。

好きな音楽をかけて、青空の中、
久しぶりの遠出。

お店に着くと、変わらず穏やかなご夫婦の姿。
そして、変わらないお店の雰囲気。
変わらない手書きのメニューにホッとする。

いつも注文している豆とは違う、ブレンド2とケーキと。そして、コーヒーアイスと。

それらを待つ間、本を読んで待つことにした。

私の好きな類の本が並ぶ本棚から一つ目についたのが、杉浦さやかさんの書いた、小さな、ふんわりとしたやさしさが漂う本。

可愛らしいイラストが描かれた、エッセイ。彼女の好きなものが詰まった内容だった。そこに、そのお店のことも書かれていて、日付を見たら2006年だった。私が大学を卒業した年と重なった。

パラパラとイラストを眺めながら読み進めていくと、なんだか無性に懐かしい思いが込み上げてきた。

あー、そうだった。
私も彼女のように、こんな感じのものが好きで、こんなふうに好きなものと触れ合っていて、小さな小さなほわっとしたワクワクをみつけるのが好きだったな。

こんなふうに世界を見ていて、人との距離感や優しさだとか、出会いだとか、お気に入りの食べ物に出会えた時の喜びや、旅をした時の新鮮な気持ちだとか。

いろんなことが鮮やかに甦ってきて、いつの間にか忘れてしまっていた、あの時の気持ちが思い出されて、なんだか嬉しくなった。

そう、そうだった。

私はいつもこの小さな自分の周りの世界に、私なりの、決して大きくはないけれど、たしかにあたたかな喜びや幸せをいつも感じ取っていた。

15歳で親元を離れ、そこから一人で自分の歩む道を模索しながら、
孤独と向き合いながら、漠然とした不安をいつも抱きながら、ただ流れるように過ごしていた日々もまた走馬灯のように思い出されて。

どこかに自分の向かうべき、
進むべき場所がある気がして、
それを探し続けていたからか、
いつの間にか、あの時の自分を忘れてしまっていた。

過去の自分に出会えたような、そんな気がして、なんだかとても愛おしく感じられた、自分の純粋な「好き」を思い出すことができた、

そんな不思議なじかんだった。


懐かしい友人に出会えたような、
そんな気持ちがして、やさしい穏やかな気持ちが私の中に戻ってきた気がした。

また、近いうちに再びここに来よう。

そう思いながら、持ち帰り用のスコーンと
いつものコーヒー豆を携えながら
穏やかなご夫婦のもとをあとにした、
そんな素敵な休日だった。


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