見出し画像

NHKスペシャルプラネットアースⅢ 第2回 陸の世界

NHKスペシャル
プラネットアースⅢ 第2回 陸の世界

アフリカ南西部のナミブ砂漠。
日中の気温は40℃を超える。

大気がゆらゆらとゆらめく陽炎の中に黒いシルエットが体を揺すって歩いている。

ダチョウだ。

日を遮るものが何もない草原の真っ只中で巣を作り抱卵する。何故わざわざこれほど過酷な場所に巣を作るのか。炎天下の草原には天敵がやってこないからである。

すでに、二羽、三羽、いや四羽ほどが卵から孵っている。親鳥でも厳しい灼熱の草原は、雛達にとっては危険でさえある。雛のことを思うと早く木陰に移動したい。だが、まだ卵から孵っていないものもある。

親鳥は卵に声をかける。

早く出ておいで

そう、呼びかけているのだろうか。
そうして再び卵を抱く。
雛達は日射しを避けようと、親鳥の羽の中に潜り込む。
過酷な一日が終わる。

日が暮れて、再び夜が明ける。

雛はさらに三羽増えている。

日が昇れば、また灼熱の暑さが戻ってくる。
雛達には限界だ。
だが、まだ孵らない卵もある。

親鳥は決断する。
たちあがるとゆっくりと巣から離れていく。
孵らない卵を諦めたのだ。

ゆっくりと遠ざかる親鳥と雛達。

一家が去って間もなく…

卵が割れた。
もう一羽が孵ったのだ。
親鳥のいないその光景を、孵ったばかりの雛はどう思ったろうか。

親鳥を求めて小さく鳴く。
ピロピロピロ
震えるような声で。

でも、親鳥は来ない。

雛は歩き始めた。
親鳥を探して。

背の低い草でおおわれた草原。
それでも雛にとっては自分の背丈ほどもある草に囲まれている。
視界は広くない。
親鳥の姿は見えない。

親鳥と合流できなければ、命はない。

ピロピロピロ
小さく鳴きながら
親鳥を求めて歩く。

だが、力尽きていく。

そして草の中に倒れた。
歩けない。
顔を上げることもできない。
鳴くことも、できない。

だが、その前に…

親鳥が雛鳥の声を聞きつけたようだ。

親鳥が声をあげながら雛鳥を探す。

親鳥の声を聞き、雛鳥は再び顔を上げた。
声を上げて鳴く。

親鳥と雛鳥が呼び合う声。

そうして雛鳥は親鳥に巡り合う。
雛鳥は立ち上がり、再び歩き始める。

一家は木陰を求めて歩いてゆく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?