見出し画像

カスタマーサクセス・ヘルススコアは「あいうえお」で考えよう

このnoteではこんなことを書いています。
・カスタマーサクセスは「顧客の成功」だけではなく「自社の成功」も担うべき
・ヘルススコアで「理想的なカスタマーサクセス活動」ができているかが判断できる
・「顧客の状態」を把握するだけでなく「顧客の成功」を「自社の成功」につなげられるよう検証と改善をしよう
・そのためのヘルススコアは「あいうえお」で考えよう

カスタマーサクセスの目標、どのように決めていますか?

みなさんのカスタマーサクセスチームでは、どんな目標を目指して活動していますか?
アンケート調査をしてみたところ、4分の3くらいのチームは「チャーンレート(解約率)やリテンションレート(継続率)」、つまり契約の継続をミッションにおいているという結果になりました。

画像1

最近は、アップセルクロスセルなども含め、NRR(Net Revenue Retention)を見ているという話も聞くようになってきています。

しかし、継続率もNRRも、自社の売上視点の指標です。
そんな背景からか、こんなお悩みのお話も伺います。

顧客のゴール(サクセス)と自社のゴール(売上やLTV)、どちらを優先して追いかけたらいいの?

もちろん、答えは両方です。カスタマーサクセスは、「顧客の成功」だけではなく「自社の成功(=事業の成長)」を担ってこそ。顧客の成功を通じて、しっかりと自社のビジネスも成長させていく活動を設計していくことが大切です。

では、どうしたらその両方を目指すことができるのか?この点について考えていきましょう。

「理想的なカスタマーサクセス活動」をステップにわけてみる

日々のカスタマーサクセス活動が、どのように自社ミッションの達成につながっていくかについて、理想的なステップにわけてみるとこんな感じになります。

画像2

①顧客と伴走する:カスタマーサクセス担当者の日々の活動です。キックオフミーティングをしたり、トレーニングを開催したり、サクセスコンテンツを提供したりといった毎日の活動をしていきます。

②プロセス通り進められる:日々の活動の結果、(あらかじめ定義した)プロセス通りに顧客を成功に導いていきます。例えば、オンボーディングプロセスが予定通り進み、顧客がツールを活用してくれるようになります。

③顧客がサクセスしてくれる:その結果、顧客が実現したかったことができ、サクセスを勝ち取ってくれている状態です。また、顧客は成果をあげることに積極的になっていて、自社との関係も良好になっています。

④自社ミッションが達成できる:顧客をサクセスさせた結果、自社の目標(チャーンレートやNRR)が達成できる状態です。

これで無事、カスタマーサクセスの日々の活動と自社のミッション達成がつながりました。

ヘルススコアの作り方、難しくありませんか?

では、ここからは、日々の活動が顧客の成功や自社のミッション達成と繋がっているかを確認していくために、これらの状況を可視化する仕組みを整えていきましょう。ここで「ヘルススコア」が登場します。

しかし、ヘルススコアを納得度高く定義していくのって、けっこう至難の業ではないでしょうか? たとえば、青本に答えを求めてみても、指標の例が箇条書きに並んでいるだけ。
本当にこれらの指標を採用すればよいのか、これ以外の指標の候補がないのか、さらにはどのような観点で揃えていく良いのか、いまいちはっきりしません。

画像4

そして本文を読み進めていくと…

どの会社も別物なのだから1つの方法で解決できるわけではない

と、突き放されてしまいます。笑

ここで「あいうえお」ヘルススコアの登場です

というわけで、どのような観点からヘルススコアを考えるとよいかを、「あいうえお」で定義してみることにしました。それが、以下の5つです。

画像5

順番に説明していきます。

あ:Account Information(アカウント情報)
顧客に関する基礎情報です。主に、契約条件(プランや期間、金額など)と顧客属性(業種や社内で整理している分類データなど)が含まれます。
以下で整理する顧客の状態を表すスコアとの相関を分析するために使います。

い:Implementation(導入スコア)
顧客がサービスを使う準備が整えられているか」を定義するスコアです。
(これは、いわゆる「オンボーディング完了」という意味ではありません。オンボーディングプログラムは自社側の事情でプロセスやサービス範囲が変わるため、あくまで「必要な準備が整えられているか」で判断します)

う:Utilization(活用スコア)
顧客がサービスを活用し続けてくれているか」を定義するスコアです。

え:Engagement(信頼関係スコア)
顧客がサービスに愛着や期待を持ち、われわれを信頼してくれているか」を定義するスコアです。

お:Outcome(成果スコア)
顧客がサービス利用を通じて『成果』をあげられているか」を定義するスコアです。

それぞれのスコアについて、自社のサービスや状況にあてはめてみて、どんなデータを使うと、定義した状態になっているかどうかが判断できるかを考えていきます。

たとえば、皆さんの提供するサービスを「顧客がサービスを使う準備が整えられているか」は、どんな指標や条件を用いると判断できるでしょうか?
顧客をイメージしながら、定義していきます。

検討の進め方のイメージをお伝えするために、THE MODELに出てくるヘルススコア指標の例を用いて説明します。掲載されている指標の名前から僕の予想で「あいうえお」に分類してみました。

画像6

たとえばこのケースで「(い)Implementation(導入スコア)」を構成する指標の候補になりそうなのは、以下のような指標です。

・サポートケースにX件以上登録がある
・サポート窓口にX名以上登録がある
・運用担当者がX人以上いる
・契約直後プログラム紹介を受けてくれている
・導入支援コンサルが実施できている
・製品基礎トレーニングをX名以上受講してくれている

これらの指標をいくつか組み合わせることで「顧客がサービスを使う準備が整えられている」ことが表せそうかなと思いますが、いかがでしょうか?
(関係者の方がご覧くださっていたら、ぜひ答え合わせさせてください!)

大事なのは「ゴール」と「プロセス」の定義

ここまででお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、ヘルススコアを考えるときに大事になってくるのは、あらかじめ「顧客のゴール」や「顧客を導くプロセス(サクセスロードマップ)」がある程度想定できていることなんです。

ゴールやプロセスについての仮説なしにデータを片っ端から集めてしまうと、どうしてもデータに溺れがちになります。そのため、ゴールやプロセスのイメージをしながらヘルススコアを考えるのがオススメです。

言い換えると、ヘルススコアを作ろうとすると、カスタマーサクセスにおける顧客のゴールやプロセスの仮説解像度があがってきます。一石二鳥です。
(※大量のデータをもとに、どのデータを選択すると評価できるかを検証していく手法もあります。それはまた別の機会に)

なお、カスタマーサクセスのゴールやプロセスを設計する手法について、りらいあデジタルさんのイベントでご紹介させていただいたことがあります。そのときの資料を貼っておきますので、ご興味があればご覧いただければと思います。


「理想的なステップ」にヘルススコアをマッピングしてみよう

さて、ヘルススコアの定義ができあがったところで、さきほどの「理想的なカスタマーサクセス活動のステップ」に戻りましょう。「理想のステップ」を疑問形にして、その下に「あいうえお」ヘルススコアを置いてみました。以下の図をご覧ください。

画像6

この図では、顧客の状態である「いうえお」のスコアが達成できると、自社の売り上げ(「あ」情報)もあがっていく、という流れを整理しています。詳しく見ていきましょう。

①顧客と伴走できてる?:導入スコアや活用スコアをあげていくための日々の活動ができているかを把握します。活動の目的は顧客をプロセス通りに導くことなので、この指標はその時々で変わっていくことが多いです。
(みなさんのチームでも、今月は◯◯アプローチを試してみよう、みたいな話をされますよね)

②プロセス通り進んでる?:活動した結果、顧客を想定しているプロセス通りに顧客を導いけているかを評価するため、ここでは「導入スコア」と「活用スコア」で評価します。

③顧客がサクセスしてくれるか?:プロセス通り進められた結果、顧客が成果をあげられる状態かどうかを評価します。ここでは「信頼関係スコア」と「成果スコア」を使います。
(「信頼関係スコア」をここに入れているのは、例えまだ成果があがっていなくてもそれを目指していく状態を作れていること=サクセスしようとしてくれている、ことがわかるためです)

④自社ミッションが達成できるか?:顧客がサクセスしてくれた結果、自社の目標(チャーンレートやNRR)が達成できたかどうかを評価します。

これで、「理想的なカスタマーサクセス活動のステップ」をスコアで可視化することができました。

ヘルススコアでボトルネックを見つけよう

ここまで整理すると、ヘルススコア同士の関連性(相関)から、「理想的なカスタマーサクセス活動のステップ」に対するボトルネックを見つけることができます。例えば、以下のような発見ができます。

例1:たくさん連絡しているのにサービスを使ってくれない

画像11

顧客がプロダクトを使ってくれていないことを導入スコアや活用スコアから察知して、ステップメールを送っているケース(伴走はできてる)。その後も導入スコアや活用スコアに変化がなければ、そもそもメールというアプローチ自体の見直しが必要かもしれません。

例2:サービスはたくさん使ってくれているのに突然の解約連絡

画像12

プロダクトの活用スコアが高かったので安心していたら解約の連絡が来てしまった。プロダクトの活用がそのまま顧客がサクセスに結びついていないことに気がづいて、サクセス事例が作れているかどうか(成果スコア)も見るようになったそうです。(Reproさんの記事に掲載されていた事例です)

例3:成果があがっているのにさらなる自社の売上を目指せない

画像13

費用対効果も十分だし顧客との関係値も良好だが、自社のサービスラインアップとしてアップセル商材などの準備がなく、これ以上の成果を提供しても、自社の売上向上がめざせない、といったケースがあります。

そのほか、想定理由をまとめてピックアップしてみました。ボトルネックになりそうな箇所は以下のようなポイントが考えられます。

画像7

だからカスタマーサクセスは「ハブ」にならなければならない

改善検討箇所のリストを眺めてみると、カスタマーサクセス部署だけでは解決できない項目が含まれています。例えば、顧客をプロセス通り導けているのに、サクセスしてくれないという課題解決をしたいケースを考えます。

画像8

CSプロセス設計改善」はカスタマーサクセスチームだけでも実施できますが、「プロダクト改善」のためにはプロダクトチームとの連携が必要ですし、「サクセスさせやすい顧客の獲得」のためにはセールスやマーケティングチームとの連携が必要になります。
まさに、組織のハブとなり、チーム間の壁を超えて連携しながらカスタマーサクセスを推進していく必要があります。

さらに、顧客の成功と自社ミッションの関係性をよりあげていくためには…

画像9

ビジネスモデル設計」や「課金モデル設計」までをも改善していく必要がでてきます。この「顧客の成功」と「自社の成功」をより近づけていく活動が、今後より重要になってくると感じています。

最近、PMM(プロダクト・マーケティング・マネージャー)が話題(SmartHRさんの記事)になってきているのは、こういった背景もありそうです。

このように、こういったステップ上のボトルネックを発見し、解消をしていくことが大切です。こういった活動を続けることで、顧客の成功も自社のミッション達成もできる「理想的なカスタマーサクセス活動」ができるようになっていくと感じています。

まとめです

長くなってしまったのでまとめますと…

①理想的なカスタマーサクセス活動の流れをステップに分けてみよう

画像2

②「あいうえお」ヘルススコアで定義してみよう

あ:Account Information(アカウント情報)
い:Implementation(導入スコア)
う:Utilization(活用スコア)
え:Engagement(信頼関係スコア)
お:Outcome(成果スコア)

③ヘルススコアでボトルネック箇所をみつけよう

画像7

③日々のカスタマーサクセス活動を顧客の成功に、さらに自社ミッションの達成につなげよう!

以上、少しでもお役に立てたらうれしいです。
引き続き、カスタマーサクセスのサクセスを極めていきましょう!

p.s.
ときどきTwitterやっています。
ぜひご感想などお聞かせいただけるとうれしいです!
https://twitter.com/ayumut


もうひとつ p.s.
上記でご紹介した資料については、slideshareでもご覧いただけます↓

最後までお読みいただきありがとうございます ぜひ、Twitterなどで感想やコメントをいただけるとうれしいですー🙌 (次のnoteのテーマの参考にさせていただきます)