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キタニタツヤ「花の香」。文学×音楽の最終形態

とにかく紹介したくてたまらない楽曲なので記事にしました。後半に考察してますが、全てを理解できる知性はないので興味無い人は飛ばしてください。

まずはその美しい歌詞を。本当に綺麗なので、歌詞だけでも十分なレベル。詩を読む感覚でお読みください。

生ぬるい土の匂い

靄がかった視界の奥に

あなたの横顔

鼻先をくすぐる

湿っぽい夜の芳香で

くらくらしたんだ


傾げた首、潤んだ目

はだけた肩に刻んだ青

紗幕の奥に潜んだ

やわ肌の上を


流れていく赤色に魅入られてしまった

汗ばんだその首筋に指を走らす

濡れそぼった花の香でゆるんだ口元に

垂涎 息を呑んだ

何もかも奪ってしまえたなら


薄闇に紛れて

垣間見た視界の奥に

踊る花一つ

帳を少し上げる

ガラスの眼に狼狽の色

壊れそうだった


傾げた首、潤んだ目

はだけた肩に刻んだ青

伸ばした手で触れた髪

かんざしを抜けば


その頬には紅色が頼りなげに点した

燻らせた紫煙の行方に不帰の影

ひたに揺れる花の香で誘われた先に

散瞳 目が眩んだ

その頬に光った滴一つ


茹だる夏の街灯、虫が集る夜に

ほどいた髪、濡れ烏 艶やかに香った


少なくとも令和のミュージシャンが書くような歌詞ではないでしょ。大正文学ですやん。

これに美しいメロディが加わり、完全体となります。曲調がこれまた切なくていいんですよね。

ではひっそりと考察していきます。あんな歌詞の後だとより薄っぺらさが露呈しますが。

まず、この曲は踊り子の女性を男性の目線から描いた歌なのではないでしょうか。

一番の歌詞は、男性が女性を初めて見た時のこと。「紗幕」とありますから、女性は壇上で踊りを披露しているのですね。

女性を見た男性は目を奪われてしまいます。「流れていく赤色」というのは、男性の恋心を表しているのかもしれません。

「垂涎」は字の如く涎を垂らしてしまうこと。それほどまでに女性に惚れた男性は、女性の何もかもを奪ってしまいたいと考えます。

二番の歌詞では、ふたりの関係に変化があります。

「踊る花一つ」というフレーズからも、女性が踊り子である事がわかります。

「ガラスの眼に狼狽の色」狼狽はうろたえるという意味ですから、女性のもとに男性がいきなりやってきたのではないでしょうか。

「かんざしを抜けば」男性の前で髪をほどく仕草は、女性の好意を表すと言われています。女性の方も男性に惚れていたのですね。

「紫煙」は主にタバコの煙のことを指します。自分を落ち着かせる為に男性が一服しているのでしょうか。

「不帰」は「かえらず」と読みます。文字通り帰ってこないことの意味もありますが、「もう二度と戻らないもの」というニュアンスも含まれています。詳しくは書きませんが、おそらく「一線を超えた」のでしょう。

ようやく女性と恋仲になれた男性は、あまりの感動に涙を流します。

最後の2行も物語を締めくくる節としては最高なものですね。

以上が僕の考察です。いかがでしょうか。

ただ、ひとつ不明な点があるんですよね。
MVでキタニタツヤがただ一本だけ持っている白百合の花。本数によって花言葉が変わる不思議な花です。

一本の白百合の花言葉は、

「亡くなった人に捧げる」


つまり、女性が亡くなっている可能性があるのです。

そろそろ僕の知性のキャパシティを超えてきたので、後は皆さんの想像にお任せしたいと思います。

やっぱり賢い人の作品はいいですね。色々な解釈ができる。だからこそ正解が知りたくなるものです。

キタニタツヤ記事第一弾ということで、今回はここまで。

終わり


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