『おっさんずラブ -in the sky-』のことを書きます

観てますインザスカイ。
「念のため」のつもりで1話から録画していて、最初の内は様子見、今は素直に楽しんで。なんか思うこともあるのでつらつら書きます。いい内容でも、悪い内容でもないと思う。

単発→連ドラ1期→映画→連ドラ2期と進んできて、感じるのは、作り手の感覚は確実にアップデートされてるよねってこと。

●単発
同性を好きになることへの葛藤→ある
同性に好かれることへの嫌悪→ある(が、最後に薄れたかも?)
同性どうしの恋愛に対する偏見→めちゃくちゃある

●連ドラ1期
同性を好きになることへの葛藤→ある
同性に好かれることへの嫌悪→ある(が、最後に消えた)
同性どうしの恋愛に対する偏見→ない

●映画
同性を好きになることへの葛藤→ほぼない(牧の葛藤は性別とは別の問題)
同性に好かれることへの嫌悪→ほぼない
同性どうしの恋愛に対する偏見→ない

●連ドラ2期
同性を好きになることへの葛藤→ない
同性に好かれることへの嫌悪→ない
同性どうしの恋愛に対する偏見→ない

インザスカイでは恋愛事情に関する葛藤(突然の告白への驚き、実らぬ片想いなど)はあっても、性別云々のハードルは少なくとも見当たらない。「男だから」「女のほうが」みたいなセリフもないと思う。(あったらごめん。見てて引っかからないから多分ないと思うんだけど)

そして、話は逸れるかもだけど、インザスカイで私がとても好ましく感じるのは、女性どうしの関係性。
一昔前の「女の敵は女」みたいな無用な対立は一切描かれず、女性たちはみんな仲が良く、自立していて、互いにリスペクトがあって、とても素敵にうつる。(前作までもそうだったけど、インザスカイは女性が多いのでこの点がより強調されてる) もちろん、「女性だから」「男性だから」という線引きもない。あえて「男性と対等に」みたいなことも言わない。だって別に言う必要ないから。当たり前を言葉にしない。だって当たり前だから。

あと、パワハラ的な描写もなくなったよね。
映画版で爆笑が起きていた蕎麦屋の粉まみれシーンとサウナ対決、あれ私どうも黒澤の(中の人のアドリブであるとされる)ビンタとか、ひしゃくで叩くとか、なんか引いてしまって心から笑えなかったんだけど、インザスカイではこういうことしなくなってる。卓球対決やバッティングセンターも無駄に心がザワつくこともなく笑って見られた。

(ただお決まりの「突然のチュー」については判断に迷うところ。あれがあるから恋愛ものとして成り立つというのもあるし。でも厳しく括れば性暴力でもあるし。うーんうーん。答えは出ない)

想像だけど、映画版までの視聴者の感想を作り手はちゃんと受け取っていて、共有して、咀嚼して、改良してきている。時代を読んで、ど真ん中ではなく少し先の目指す理想に進んでる。それが作品を通じて伝わってくる。なんて勇敢なんだろう。

で、ね。
作り手がこれだけアップデートを繰り返し作り続けている作品を前にして、お前(私)はどうなんだという話。

私ね、映画版の最後のシーンで狸穴が妻帯者だと明かされたとき、「ホッとした」んですよ。要は、狸穴が異性愛者だから牧が恋愛対象外なのだとわかって(春田との仲をじゃましないとわかって)ホッとしたわけですよ。異性愛者のことを私、頭の中で即座に「ノーマル」と変換してしまったんですよ。じゃあ牧と春田はノーマルじゃないのかよ、と。自分の中にこんな前時代的な感覚がまだまだ根強く残っていることに愕然とした。

異性愛者だから云々じゃなくて、「愛する家族がいる人だ、ちょっかい出してるように見えたのは私の誤解だった、だから安心した」と、真っ先にそう感じ取れる自分になりたい。
ジャスティスの結婚式も、「これで春田に手を出してくることはないな。あ~よかった」じゃなくて、「愛する人ができて家族を持ててよかったね」と思える感覚を身につけたい。

インザスカイの話に戻す。

そんな時代の最先端を前のめりに進むインザスカイを受けてもなお、二次創作界隈で「オレだって男だ」とか「やっぱり女の子とのほうが…」みたいな描写を見かけるので、まだまだ先は長いんだろうなと思う。
実際、インザスカイの1~2話あたりでは私もまだ登場人物の恋愛感情について「ずいぶんすんなり受け入れるんだな」と感じたりもしていた。次第に、ああ今作で描くのはこういう世界なのか、とわかってきたら、より楽しめるようになってきた。前作同様、『おっさんずラブ』の熱量が中盤からぐっと上がるのは、その世界観が視聴者に浸透してくるからなんじゃないかとも思う。

『おっさんずラブ -in the sky-』もあと2回で完結。しょうもない後出しジャンケンする作品じゃないと信頼しているので、あと2回でどう彼らの気持ちに落とし前つけてくれるのか、ド直球の結末を楽しみにしています。

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