まにうける

【風雲ガチンコ文章指南録!?】『真に受ける力』⑫~キシミ・ザ・オーバードライブ発動!?の巻~

西山リカさんから届いた二つの文章。
「グノシエンヌ」の方が洗練されているように見えた。

西山さんの肉声の量はどうか?

私は以下の決断を下し、キシミ・ザ・オーバードライブ!を発動させた。


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2007/10/23, Tue 03:46

西山さん、S子さん

課題文、読ませて頂きました。
どちらかを教授に送ってみるのでしたら
断然、「月光」の方になさいませ。

「グノシエンヌ」も、一歩進んだ
調整がなされているのですが、
自分がむきだしになっている量が
「月光」と比べると少なく、
やはりまだ漠然とした印象から
抜け切れてはいない段階なので、
私が選ぶなら、俄然「月光」です!

「月光」が実に素晴らしい!
書き出しからいい。内容も、
徹頭徹尾、西山さんという個を感じる文面で、
一言一句、じりじりと自分の内面に肉薄した
生の声に満ちていて素晴らしいです!

どんな曲を聞いても、一時間で
とりあえずこのレベルのものが
書けるようになれるのが理想ですね。

私なら、このゴリゴリとした
西山さんの肉声が全面に出てきただけで
満点をあげちゃうんですが、
テストではそうはいかないかもしれないので、
その先の技術にいきましょう。

肉声さえ前面に出せれば、あとは技術次第で、
それをより深く届く声にできます。
いやぁ、とにかく嬉しい!

どうか自分を最大限に褒め称えてください。
大きな壁をこえてる文面ですよこれは!
どんどん調子にのっていきましょう!
(あ、テストも本当に大変だろうけど頑張ってね^^;
僕はテストは死ぬほどキライでした(;_;))

さて、次の技術領域に行く前に、
「グノシエンヌ」についても
もうちょっと触れておきましょう。

終盤で“駆け足”にまとめちゃっているんですが、
まとめきれてない感じがどうしても残って
まだ漠然と伝わりにくい状態です。

まとめで言っていることの大きさにもよりますが、
それを第三者に分かってもらうには、
その度合いに応じて、段階をふんだ文面が必要になります。

> この曲を聞くことで、時間の持つ力はとても強いものであり、
>はかないものだということを感じた。

という核心を、説得力を持って分かってもらうには、
風景描写のあとのつなぎの部分――

> なにが起こるか分からない未来は限りなく不安だ。
> だからこそ、今をしっかりと感じとり、生きていかなければ
ならない。

が、まだ漠然としていて、足りないのだと思います。

風景描写の部分をもっと端的に要約して、
イメージの奥に感じ取ったもの――
(自分が感じた曲の核心)を中心に、
なるべく具体的に掘り下げて書くようにすると
いいかもです。

最後に語る、まとめ(つかんだ曲の核)の部分が
一番大事ですから、そこまでの階段が短く駆け足になっちゃうと、
読む人は、その論理展開についていけず、
「なんでそうなるの?」と思ってしまう恐れがあります。

まとめの部分の量(1行~3行とか)から逆算して、
曲についてイメージした部分の分量を決めても
いいかもしれません。

まとめ部分の分量や、感じたことについての分量が多ければ、
最初の、映像印象部分は端的にしぼるとか、
文字数制限あるので、工夫して構成してみてください。

西山さんが、曲を聞いて第三者に一番伝えたいことは、
イメージした風景ではなく、その奥に感じ取ったもののはずなので、
そこを一番に伝えるにはどうしらいいかを、
念頭において組み立てましょう。


> 雲のかかった月だけが周囲を照らしている。
> 見渡す限り背の高い深緑の大木しか見えない。
> 時が過ぎているのを感じさせるものは、川に浮かぶ小舟だけ
だ。
> 木々の間を通り、ゆっくりだが一定の流れで確実に前進して
いる。
> 何かを運ぶわけでも、目的地があるわけでもないのに舟はた
だ動かされている。

――という、西山さんのイメージテキストの風景部分を、
たとえば端的に描いて、3行にしてみました^^;

あとはそれについて感じたことと、
まとめを中心に書いている
デタラメ例文です。↓

----------------------
時が止まったような静かな夜。雲間にのぞく月。
その淡い光が照らしだすのは、深緑樹に囲まれた一本の川。
世界で動いているのは川面をゆっくりと進む小舟だけ……。

なんて淡々とした世界の曲だろう。
何が起きても起きなくても、
お構いなしに時間だけは刻まれ、平然と過ぎ去ってゆく。
そんな無機質な怖さを私は感じた。

それだけじゃない。この曲の奥には実はもう一種類の
恐さが横たわっているように思えた。
あの淡々と流れている川の水面下に、実は一瞬にして
すべての世界を崩壊に導くような激流の胎動が
孕まれているように思えてならない。

一寸先、どう転ぶかまるで分からない人生の不安と緊張。
そして、人がどう抗っても一秒一秒
死に近づいているという恐怖。
この曲は、人間の避けがたい恐怖と不安とで構成されて
いる気がする。寒々しいほどに、私はこの曲が怖い。
-------------------

浮かんだ風景描写は、
写真3枚くらい見せておく感じに留めて、
あとは、自分が感じた曲の核心部分へと、
読む人を導き、到達させるように、
段階的に掘り下げて論じていく感じになると、
飲み込みやすい文面になっていくかと思います。


その構成の仕方については、
「月光」で論じてみましょう。


> 私はこの曲を何回も聴きたくなる。
> なぜなら、一緒に悩んでくれているような気がしたからだ。
> 将来のことなどさまざまな悩みがあるのにそれを解決しよう
とせず
> ただ落ち込んでいる。
> 自分だけが深い迷路で出口を探せないような感覚になる。
> 迷っていると、たまたま同じ境遇の人に出会い、
> お互いの悩みを話しているうちに気持ちが前向きになり、
> 少し勇気がわき、出口を見つけようと思うのだが、
> また問題が出てきて終わりの見えない迷路をさまよい続ける

> 答えは見つからないのは苦しいが、悩んで、自問自答してい
るときが、
> 一番成長できるときなのかなと思った。
> この曲が、疑問を解決してくれるわけではないが、
> 私に慈悲の心で同情してくれている様に思えた。

これは、どこをとっても西山さんの個を感じる
肉声イメージになっていて素晴らしく、
構成も惜しいところまでいってるんですが、
残念ながら、筋道だけが整いきれてないんです。

--------------

何回も聞きたくなる

なぜなら一緒に悩んでくれているような気がしたから。

ここまではいいんです。
しかし、そのあと――、

> 将来のことなどさまざまな悩みがあるのにそれを解決しよう
とせず
> ただ落ち込んでいる。
> 自分だけが深い迷路で出口を探せないような感覚になる。
> 迷っていると、たまたま同じ境遇の人に出会い、
> お互いの悩みを話しているうちに気持ちが前向きになり、
> 少し勇気がわき、出口を見つけようと思うのだが、
> また問題が出てきて終わりの見えない迷路をさまよい続ける

という感じで、落ち込んだり、さまよったりしている
自分のイメージが延々と続きますよね?

これは非常に生の声で、最高にいい手ごたえのある文章なのですが、
一緒に悩んでくれている気がすると言っていたはずの曲が
評価されていくのかなぁと思いきや、
このイメージ上には(曖昧にしか?)登場せず、
次には、

> 答えは見つからないのは苦しいが、悩んで、自問自答してい
るときが、
> 一番成長できるときなのかなと思った。

と、一緒に悩んでくれている気がしている曲のことが、
そのまま駆け足で、すっ飛ばされている印象で
終わってしまっています。

> この曲が、疑問を解決してくれるわけではないが、
> 私に慈悲の心で同情してくれている様に思えた。

最後の最後で、ようやく曲を主語として
アピールしていますが、ここまでの段階にくる筋道の中で、
最後のアピールが説得力を持つほどには、
訴え切れてないので、まとめが効果を発揮していません。

※ただし、改めて言っておきますが、
筋道は通ってないけど、なんだか西山さんの肉声が
胸に響くのです。
それをもっと響かせる構成を考えましょう。

「起・承・転・結」

――である必要はないんですが、これを構成するときの道具として
念頭に置くと便利ですので覚えておいて損はないかと。

「起・承・転・結」というと、難しく構えちゃいそうですが、
念頭に置き慣れると便利ですから。

ある寂しい曲を聞いたとします。

曲の核は、孤独の向こう側にある「孤高の精神」
ではないかと見極めたとします。

起承転結の【起】として曲のイメージから書き始め、
起承転結の“うねり”のある道筋にあてはめ、
テーマに向かって掘り下げていきます。

【起】
がらんとした部屋に置き去りにされた
安物の椅子のイメージが浮かんだ。

【承】
――上記イメージを受けて↓

そのイメージに寂しいような、悲しいような、
とても孤独を感じた。

【転】
――転じて深く掘り下げると?↓

だが、ただの孤独ではない気がした。
最後まで曲を聞き終えたとき、その向こうに、
人間最後は一人で立たねばならない。
そんな覚悟がうかがえるようだった。

【結】
――この曲を、自分なりの一言でくくってみると?↓

周囲から取り残された一人は確かに寂しい。
だがこの曲には、その寂しさを甘んじて引き受けた上で、
それでも一人で生き抜く強さをもたねばという、
誰にも頼らない「孤高の精神」が宿っているように思えた。
-----------------------

こんな感じで、曲の核から逆算する感じて
あてはめていくだけで、多少うねりのある、
飲み込みやすい道筋で、テーマを掘り下げて語れます。

実は、西山さんの「月光」は
構成的には、惜しかったんですよね。

【起】
> 私はこの曲を何回も聴きたくなる。

これは抜群の【起】ですよね。
そして―

【承】
> なぜなら、一緒に悩んでくれているような気がしたからだ。

↑は【起】を受けてる最高の【承】です。

以下の部分も【承】になる感じで続いてますね。

> 将来のことなどさまざまな悩みがあるのにそれを解決しよう
とせず
> ただ落ち込んでいる。
> 自分だけが深い迷路で出口を探せないような感覚になる。
> 迷っていると、たまたま同じ境遇の人に出会い、
> お互いの悩みを話しているうちに気持ちが前向きになり、
> 少し勇気がわき、出口を見つけようと思うのだが、
> また問題が出てきて終わりの見えない迷路をさまよい続ける

【転】
> 答えは見つからないのは苦しいが、悩んで、自問自答してい
るときが、
> 一番成長できるときなのかなと思った。

見つからないけど、それが成長になる!
という視点が【転】です。
※これを【結】にもってくるのもありだとは思います。

【結】
> この曲が、疑問を解決してくれるわけではないが、
> 私に慈悲の心で同情してくれている様に思えた。

悩みは解決しない。
しかし、同情してくれて救われた気がしている。
というのが【結】ですね。

まぁ、前半が強いので、
この【結】だとちょっと弱い気がしますが、
ともあれ、構成的にも惜しかったです。

あとは、ちゃんと話の道筋も論理的に
段階をふんでいってれば花マルでしたね^^;

実は、さきほど書いた私の「月光」の例文も――

----------------------
【起】
時が止まったような静かな夜。雲間にのぞく月。
その淡い光が照らしだすのは、深緑樹に囲まれた一本の川。
世界で動いているのは川面をゆっくりと進む小舟だけ……。

【承】
なんて淡々とした世界の曲だろう。何が起きても起きなくても、
お構いなしに時間だけは刻まれ、平然と過ぎ去ってゆく。
そんな無機質な怖さを、私は感じた。

【転】
それだけじゃない。この曲の奥には実はもう一種類の
恐さが横たわっているように思えた。
あの淡々と流れている川の水面下に、実は一瞬にして
すべての世界を崩壊に導くような激流の胎動が
孕まれているような気がした。

【結】
一寸先、どう転ぶかまるで分からない人生の不安と緊張。
そして、どう抗っても一秒一秒死に近づいているという恐怖。
この曲は人間の避けがたい恐怖と不安とで構成されているのか
も。寒々しいほど私は怖い。
-------------------

となっていたんです。

どうでしょう、このうねりのある
“型道具”を使うと、構成に道筋が
決めやすい感じがしてきませんか?

核をつかんだのに、どう書いていいのか
分からなくなったら、道具として
「起承転結」を使って考えていくのも手ですよ。

感情のままに書くと、むきだしで
ゴリゴリしてて、生々しくて
インパクトもあり、いい面もありますが、
段階的に筋道を通して語れてないと
一本ガシっとした印象が定まらず、
一番大事な情報が効率的に伝わらない
可能性もありますから。

西山さんの書かれた今回の文面が
惜しくも、そうな感じになっていました。

ちょっと調整したら、うまく道筋をつけれないか、
考えてみましょうか。


-----------------

『月光』

【起】
私はこの曲を何回も聴きたくなる。
なぜなら、一緒に悩んでくれているような気がしたからだ。

ここまでを【起】にしちゃってもいいかも。
それを受けて、掘り下げる感じで、曲のイメージと並存する
自分の内面世界を語ってゆく【承】がくる――
※ちょっと道筋が通るように語句もいじります。

【承】
人には、将来のことなど様々な悩みがあるのに、
それを解決しようとせず、ただ落ち込んでしまう時がある。
自分だけが深い迷路で出口を探せないような感覚になる。
そんなときこの曲は、まるで同じ悩みを抱えた
境遇の人のように、そっと自然に私に語りかけてくる。
だから私も自然に悩みを相談できる。
そうして、お互いの悩みを話しているうちに
気持ちが前向きになっていき、やがて、
「よし、出口を見つけよう」と思うまで勇気が湧いてくる。

【転】じて展開。

【転】
ところが、現実にそこを踏み出すと、
いつしかまた同じような問題が出てきて、
結局、終わりの見えない迷路に逆戻りし、
さまよい続けてしまうのが常だった。
確かに、どんなに心に寄り添う曲を聞いたところで
答えは見つからないし、問題も解決しない。
だがそこで悩んで、自問自答しているときが、
実は一番成長できてるような気がした。

ここから【結】でまとめてゆく。

【結】
このそっと悩みに寄り添ってくれるような
曲を聞きながら、私はこれからも何度でも自問自答を
繰り返そうと思った。いつか成長し、強くなり、
自分の足で本当の出口を抜け出せるようになるその日まで。

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とまぁ、全然例としてよくないかもしれませんが、
最終的な結論にたどり着くまで、一本の筋道になっている感じを
確認できますでしょうか?

自分で曲の「核」はこれだなぁと思ったら、
その「核」を結論にするとして、
起承転結でもなんでも使えるものは使って、
それが言いたいがための、一本の筋道にする感覚を
身に着けるといいでしょう。

今回の課題文では、とにかく前面に
「自分」だけの感覚というのは出ていますからね、
あとは、他人にもその感覚が伝わるように
筋道を通して、うねりのある段階を経ながら
効果的に伝える技術を意識をしてみてください。

長くなって恐縮でした。
以上です。ではでは、

頑張ってくださいねー^_^

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。