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『緋色の研究』~ホームズなんて足湯小説だ、なんて言ってごめん③~

創元推理版の「緋色の研究」ですでに読了済みだが、どうしても延原版がほしくて購入! パラパラしてみたけど、私にはやっぱりこっちのホームズがよさそうです!

※大昔ホームズを読み進めていた頃の記録メモの③です。

創元推理ですでに読了済みだが、
どうしても延原版がほしくて購入!

パラパラしてみたけど、私にはやっぱり
こっちのホームズがよさそうです!

実は最近、阿部さん版と、延原さん版とを
(後進の日暮さん版もかじったが)、
はからずも読み比べてしまう機会があったのですが、
その時、阿部さん版の方のホームズの何かが気になって、
うまく入れなかったということがあったのです。

それは阿部さん版のホームズが、
なんだかクールで淡白で上から目線でえばってる感じが強く、
(あくまで個人的な見解ですぞ)
私の理想のホームズとは食い違っていっるので
きっとそのキャラ造形の違いのせいで
納得いかなかったのかなと。

そう見当をつけていたのですが・・・
今、パラリしたときの感触ですと、
そのせいだけではなかったようなのです。

どうも、もっと全体からにじみ出ている部分も加味して
延原さん版のホームズを
選びとってしまったような気配なのです。

延原版の物語において、あのなんとも言えない、
滋味豊かで奥行きのある、懐かしげで味わい深い世界を成立せしめているのは、
とりもなおさず、鋭敏でいて、どこか明治紳士の
トボけた風味をかもしだす、名物主人公ホームズの
キャラによるところが大きいと思っていたのですが――

(基本的にセリフに格調と趣があっていい)、

――実はそれだけではなく、ベースの語り部である
ワトスンの言葉遣いや、あるいはワトスンその人がもつ独特の親近感、
もしくは、ワトスン視点での誠実な情景描写の力もあいまって、
成立できていたのだと思えてきたのです。
(それいっちゃったら文章全部ってことになるけど、まさにそうなのです)

全体の文章のリズムも含め、登場人物それぞれの言葉遣いから立ち上る
妙に懐かしく滑稽で生き生きとした雰囲気、
そして、懐深く横たわる延原さんの登場人物への温もりあるまなざしが、
あの格調あるほっこり世界を現出させていたのではないでしょうか?
そこに私はひかれたようです。

注)阿部さんにはぬくもりの眼差しがないといってるわけではありません!

追記:
パラパラのつもりが手に取ったらやめられず、
最後まで読了。夜が明けていた…。

<メモ>
・やはり延原訳では、ホームズが自惚れていても気にならない。
ファンになってるので、もはや客観的な目で見れてない可能性もあるが;

 →原作自体、高慢な自惚れ屋として描いてあるのだから、
そのキャラ設定は変えようがないが、
訳者がその性格をうまく憎めない風味に落とし込んでくれてる。
延原節の格調キラリ!

・ライバル刑事たちのかき分けは、
延原訳でもどうにもなってなかった。
しかし、吸引力が落ちることはなかった。
 →もっとも月並みな二人を描かれているのだから、
月並みな、いわく、どっちがどっちでもいいようなキャラに
なってしまうのは仕方ないのかも?

・登場人物の会話がどうかすると、
長屋の人情ものみたになってほっこりする。

 →延原訳の方がその指向が強いと思われる。

・ホームズが成果をライバルに奪われることを
気にしていることは原作にあるので仕方ないが、
延原訳の方がやはり達観させている趣あり。よって気にならない。

 →ホームズがそれを少し不満に思ってないと、
ワトスンが活躍を記録することになる経緯が弱くなるので、
筋書き上も仕方ない。

・解説で、訳者延原さんの朴訥なまなざしを見、
「わが意を得たり!」となった。

 →ホームズが、ライバル刑事に具体的なヒントを
出さないでズルしている部分があり、
もっとフェアでいてくれたら素晴らしいのにとあった。

  →ホームズに対する真摯なまなざしを見、
延原さんが落とし込みたかったホームズ像が
私の理想と一致していたのだと勝手に実感。

   →がむしゃらになっても、がむしゃらに見えない、
スマートですっとぼけてる憎めない延原ホームズは、
この朴訥な愛あるまなざしによって生み出されているのだ!

・今日のワトスンの一言。
ホームズと一緒に住むことに決める時、進めた友人自らが、
彼と住むのは大変だろうと言い含むシーンで。
「どうして? どんなところがいけないの?」
純朴そうな目が見えてきそうだ。

・今日のホームズの一言。広川太一郎でお願い。
「それではと――そのほかの僕の欠点はなにかな?
 僕はときどき憂鬱になって、何日もつづけて口をきかないことがあるが、
そういうとき僕が怒っていると思ってくれちゃ困るんです。
ただ黙ってほっといてさえくれれば、じきもとのとおりになるんですからね。

ところでこんどは君のほうのうちあけたところを聞こうじゃありませんか。
いっしょに暮らすとなればそのまえに、
おたがいの短所を十分知りあっていたほうが好都合だからね」

・おまけで月並み探偵グレグスンの一言。
殺された人物が泊まっていた下宿のかみさんを尋問し、
さらに先を促すグレグスン。
「なぁる……それで?」

なぁる……か(笑)

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