見出し画像

全国6自治体から40名が錦江町に集合!ローカルベンチャー協議会の自治体合同合宿を開催しました!

2024年1月23日〜25日の2泊3日で、ローカルベンチャー協議会に参画している6自治体(北海道厚真町、宮城県気仙沼市、岡山県西粟倉村、島根県雲南市、愛媛県久万高原町、宮崎県日南市)から自治体職員と中間支援組織のスタッフ、事務局を務めるNPO法人ETIC.、総勢40名ほどが錦江町に集まり、「自治体合宿合宿」を実施しました。

自治体合同合宿とは、ローカルベンチャー協議会発足の2016年から年に1回開催しているイベントで、協議会に参画している自治体を訪れ、自治体間のノウハウシェアや連携強化のための視察や意見交換を実施しています。開催場所は持ち回りで決めており、今回は2023年から新しく協議会に参画した錦江町で開催することに。

異なる地域から多くの人がやってくる滅多にない機会。活用しない手はない!ということで、錦江町でチャレンジする人々や取り組みに触れてもらい、外部の目線から錦江町の可能性を教えてもらうべく、町内のフィールドワークとワークショップをエーゼログループで企画・運営しました。

この記事では、フィールドワークとワークショップの様子を参加者の感想を交えながらご紹介したいと思います。


全体フィールドワーク

今回の自治体合宿は北海道からの参加者もいるため、1日目は少し遅めの15時にスタート。全体でアイスブレイクをした後、各地域がいま取り組んでいる事業についてプレゼンテーションを行いました。他の自治体の成功事例だけでなく、失敗や悩み事も学べるのが自治体合同合宿のひとつの魅力です。

プレゼン後に合宿の趣旨と行程を説明し、早速フィールドワークに移ります。最初に訪問したのはクラシックブドウ浜田農園さんです。案内してくれたのは代表の濵田隆介さん。

濵田さんは牛や豚にクラシック音楽を聞かせて肉質をよくする取り組みをぶどうに転用するという発想で、ぶどう狩りに来るお客さまを増やすチャレンジを続けてきました。

しかし、農園にお客さんが来るのはぶどうが実る夏の時期だけ。ぶどう狩りのシーズンが終わると一気に訪れる方が減ってしまいます。さらに、浜田農園の近くには錦江町随一の景勝地である花瀬自然公園がありますが、同じく夏以外の季節に観光客が少ないという課題を抱えていました。

年中観光客が訪れるエリアにするために、2022年、新たなチャレンジに踏み出します。それが、本土最南端のワイナリー立ち上げでした。

町内には6次産業化を実現している生産者が少ない中で、ワイン醸造を通じてそれを実現し、さらに地域の課題解決まで視野に入れたチャレンジをしている濵田さんのお話はぜひ聞いてほしいと思い、フィールドワークの受け入れをお願いしました。

まずは、花瀬自然公園に移動して、約2kmにわたり千畳敷の石畳が敷かれたような、珍しい景観について説明が始まります。その特異な景観を楽しむために、薩摩藩の名君として有名なかの島津斉彬公もお茶会に来ていたそうです。

その後、ワイナリーに移動して、ぶどう農家になった理由からワイナリーを立ち上げた思いまで、濵田さんの半生を伺いました。

参加者からは「気温が高い鹿児島ではワイン醸造は難しいのではないか」という質問がありましたが、浜田農園が位置するエリアは標高が高く、鹿児島県内でも比較的気温が低いので、ワイン醸造が可能だそう。地理的条件をうまくいかして、国土最南端のワイナリーを立ち上げることができました。

濱田さんのお話を聞いた参加者の感想を一部ご紹介します。これだけでも、フィールドワークの雰囲気が伝わるはずです。

「天然のステージ・花瀬の石畳と、濵田農園にはじまる地域資源によって、錦江町の未来の産業となりえる事業がここから展開していきそうな希望を感じました。濵田さんの未来への想いもさることながら、純粋に新しいことに挑戦して楽しそうに事業展開していく様子が錦江町のローカルベンチャー的な動きの根本にありそうだと思いました。」

「やりたいことをひたむきに努力や工夫し続けて、実行までこぎつけるモチベーションを保てる環境であることが素晴らしいなと思いました。」

「地域を元気にしたいという熱量を持ったプレーヤーはとても貴重。さらにその次の世代にも引き継がれているのもとてもよかった。自分たちの地域に諦めが生まれると次の世代にも伝わるんだろうなぁ、大人がしっかりと地域を楽しむことが地域の未来を創るんだと気づかされた視察でした。」

ワインは発売前で残念ながら飲むことはできなかったのですが、濵田さんの熱い思いに触れ、勇気をいただく時間になりました!

コース別フィールドワーク

初日は全体でフィールドワークを行いましたが、2日目は3つのコースに分かれて錦江町内を回りました。

【1、ローカルベンチャーの増殖】
錦江町では、現在廃校を活用したサテライトオフィス(地域活性化センター神川)を整備し、拠点進出を図る企業を応援する取り組みや、錦江町で起業したい個人に対して地域おこし協力隊制度を用いて支援する「ローカルベンチャースクール」といったプログラムを実施するなど、町ぐるみで新しいチャレンジを応援する機運が高まってきています。

今回は、2年前には入居企業が0社だったところから5社まで増やした立役者である、担当課長からのプレゼンと施設案内をしてもらった後、錦江町でチャレンジする若手起業家(地元、移住者含む)3名との交流の時間をご用意いたしました。

担当課長の情熱あふれるプレゼンには、参加者一同驚きを隠せない様子でした。また、起業家の皆さんとの交流では、「若手でチャレンジしたい方が複数いることがすごい」という声があがり、さらにその勢いを加速させたいと思った時間になりました。感想もぜひご覧ください。

「職員さん(特に課長)の企業に対する熱量が一番印象深かったです。今後の展望で施設内の企業数を増やすのではなく、他の廃校にも手をつけることも考えていらっしゃるとお聞きして、先の先を見据えた活動をされていることにも衝撃を受けました。」

「起業家の皆さんも、役場の皆さんも、志の起点になる方に出会え話が聞けたことは、錦江町の今後のローカルベンチャーの広がりをイメージすることにとてもつながりました」

「シェアオフィスを運営されている課長のお話より、町としてどうありたいのか、どんな未来を描いていきたいのかというビジョンをもとに、企業も集まる(誘致される)という意味では、やはり地域の主体ありきなんだなと思いました。また何もない広い空間を価値に感じているアーティストの皆さんの話からも、発想の転換で今あるものも価値化しうるということは改めて面白く感じました。」

【2、農業の持続発展】
錦江町の主産業は畜産を代表とする農業ですが、全国どこの地域でも悩まされている「人手不足」の問題に直面しています。今後も農業を産業として持続・発展させるためには、「人手を確保する」ことか、「生産性を高める」ことが不可欠です。今回はそれぞれについて、錦江町が進めている取り組みをご紹介しました。

人手の確保については、特定地域づくり事業協同組合制度を活用し、2023年より新たに「錦江町MIRAIサポート協同組合」を設立しました。複数の企業に対して、組合で雇用した職員を時期を組み合わせて派遣することで、短期的に発生する雇用ニーズを満たしています。

募集方法や就職を決めた組合員の方の動機や勤務の様子を説明してもらいましたが、関心のある人が集まっても、今度は住んでもらう家がないという課題も。解決すべき問題は沢山ありそうです。

次に、生産性を高める取り組みとして、畜産の一部プロセスの機械化を実現した現場にお伺いしました。今回話を伺ったのが、後継ぎとして町に帰ってきた息子さんだったということもあり、機械化の話はもちろんのこと、どうして家業を継ぐことを決めたのかという点に参加者も興味津々。主要産業の後継ぎが町に帰ってきているというのも錦江町の可能性の一つなのだと思いました。

現地で直接話を聞くことで、より伝わるものがあったようです。参加者からの感想も一部お伝えいたします。

「生の声が聞けて、面白かった。特定地域づくり事業協同組合制度は、どういう出口のパターンを考えられるのか。いくつか働いて、気に入った場所に就職しようと思ったら、給料が下がったり、条件が悪くなると辛いというケースはないのか。独立開業に促していくのか、どんなパターンでその人が特地から入り、地域で根付いて幸せに暮らせるのか、初めて身にしみて考えた機会になりよかった。」

「どうして跡を継いだか話してくださる上鶴さんに感動しました。濵田農園もそうですが、修行して家業を継ぎに帰ってくる若年層がいることを羨ましく思います。」

【3、未来に残すべき森林資源】
錦江町は面積の約75%を森林が占めており、林業を今後どのように産業として維持、発展していくかも大きなテーマになっています。
今回は、町長と森林組合の所長直々に林業の課題について話してもらい、その後役場職員の案内の元、皆伐・造林の現場や特用林産(シキミ、サカキ)の生産現場を回りました。

仏事に広く使用されるシキミやサカキの生産は大隅半島を中心に盛んで、特にシキミの生産量は鹿児島県が全国1位で、国内産の3割強を占めているとのこと。馴染みがない参加者も多く、これは一つの可能性ではないかと盛り上がっていました。その他、頂いた感想は以下の通りです。

「錦江町での注力産業である林業の取り組みにおいて、売買における条例を定めて保全に努める様子や、シキミやサカキなどの高付加価値の樹木の植林の様子から、林業の守りと攻めの両面を見られたように思いました。」

「不本意な皆伐が進んでいることを聞き、抑止策として条例も制定されている。町有林は丁寧に管理されている印象を受けた。西粟倉村から比べると道から山林への寄り付きが良い(レンタカーのワンボックスで走れる)ので、本村がやろうとしていることがいろいろできそうでうらやましい。」

ワークショップ

2日間にわたるフィールドワークを終え、最後にワークショップを行いました。今回のテーマは「これから錦江町でどんな産業が生まれ育つ可能性があるか」です。この先も錦江町が持続発展していくため、まずは産業が生まれ育つ条件を確認しました。その条件とは、ここ(錦江町)だからこそもうかる事業が存在することです。

具体的には、
・言い値で売れること(他にないor原価が見えない)
・ありふれたものを仕入れて自社で加工して珍しいものにしてうる
ということが必要になります。

そして、言い値で売る、加工して珍しいもので売る、どちらにしても「この町だからできる」ことを探すことが大切です。錦江町にしかないものであれば他は真似することができないので言い値で売れる可能性が高まりますし、錦江町の特性が付加価値をつけて加工するヒントになりうるからです。

その2点を確認したところで、まずは「錦江町ならでは」を可視化するワークを行いました。このワークは「よかった」ところだけでなく「いまいち」なところも取り上げるのがミソ。なぜなら、いまいちを裏返すといいものに変わることがあるからです。

異なるフィールドワークに参加したメンバーでワークに臨んでもらったので、お互いに自分だけが知っている情報を共有しながら、真剣に意見を交わしました。

その上で、メインワークである「錦江町のウリ」を考えます。地域で産業になるような事業を育てる目線で見た時に、「錦江町のウリとなるものは何か」についてアイデアを出し合いました。

参加者が感じた「錦江町ならでは」の一部

冗談も交えながら和気藹々と、時には真剣にワークに臨む皆さんの姿が印象的でした。ワークの最後に各グループから発表された「ウリ」を一部抜粋して、みなさんにもご紹介します。

「LV目線で見たウリを考えたとき、地域の課題がウリになる。フィールドワークで、LVチーム、農業のチーム、出てきた共通の話題が住む家がない。一方で空き家が800軒ある。日本一空き家が使えない町というブランディングができるのでは。廃校のオフィスにクリエーターが集まるという話もあったが、そのクリエーターが町と接続していない。町の課題を解決するまで、力を発揮できる環境が作れていない。空き家が使えないという状況を、クリエーターがどう実験して、デザインするかを、町として応援する環境という打ち出し方ができるとおもしろいのではないか。」

「高度差、地形はここならでは。食材、いろいろなものが豊か。シェフのオーダーメイドで農業生産できる。頼まれたら何でも作りますというのができるのでは。例えば、シェフインレジデンスみたいなことができないか。そこからコンテンツができると、食事でリトリートみたいな取り組みや、病院でリハビリ食、終末食とかが実現できそう。さらに錦江町では魚も肉もあり、良質なタンパク質がとれそうだから、レゲエ祭りのスピンオフとしてマッチョレゲエもできそう。」

最後に

自治体合同合宿ではフィールドワークやワークショップの他にも、ローカルベンチャー協議会として今後仕掛ける予定の企画や翌期の戦略について熱い議論が交わされました。それを全部書くと途方も無い分量になってしまうので、またのお楽しみとさせてください。

今回の合宿を通して、全国にいる仲間と連携しながら事業を進める重要さを改めて感じるとともに、町外の方に現地を知ってもらい、共にアイデアを考えることで拓ける可能性もいっぱいありそうだなと気づくことができました。

ワークショップで出た「ウリ」については、今後エーゼログループとしても実際に手を動かし、可能性を探っていきたいと思います!もしこの記事をお読みの方で、興味のある方はぜひぜひご連絡ください。一緒にやりましょう。

最後に、今回来町いただいた皆さん、ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?