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勇気の記憶

8月31日にもう一度ペンギン・ハイウェイを観に行った。映画の感想については以前にも書いたし、正直ここには書ききれないほどの感情が渦巻いており言葉にするのも難しい。多分普遍的な面白さじゃなくて、個人的にクリティカルに響く部分が多すぎて上手く説明できない。原作小説はもちろん、パンフレットに公式読本、設定資料集も購入し、CDショップへ行ったらサントラも買うだろう。ここまで入れ込んだ映画もそうそうない。

ペンギン・ハイウェイが素晴らしい映画と思う一方で、そう思うたびに脳裏に浮かぶのは、『ブレイブ・ストーリー』という、宮部みゆきの小説だ。その昔ティーンエイジャーだったころの自分にとって、この小説はめちゃくちゃ大事な物語で表紙が擦り切れるくらい何度も読み直していて、もはやアイデンティティの一部だった。それが2006年にアニメ映画化すると知って狂気するぐらい喜んで、公開までホントに、本当に楽しみにしていたものだ。それがいざ公開初日に劇場に足を運んで観ると、全然面白くなかった。本当に面白くなかった。自分がそう感じたのが一番ショックだったし、ブレイブ・ストーリーは物凄く深みがある話だと思っていたのに、よくあるファンタジー冒険活劇程度の映像に成り下がっていたのが本当に「全然違う」と思って打ちのめされた。同時期に展開されていたバラエティの宣伝やタイアップCMも大人の事情が透けて見えて心底うんざりしたものだ。これをきっかけに小説の表紙を見るたびに映画のことが思い起こされ、あれだけ好きだったのに小説も読み返すこともなくなってしまった。

それ以来、「映像化のメディアミックスは書籍作品の良さを殺す許されない行為」という考えが自分の頭の中に根付いて数年間離れなかった。一時期はアニメに対しても一方的な偏見を持つほど目の敵にしていたが、それはまどマギやキルラキルなど、素晴らしい作品を観たことをきっかけに払拭されていった。ただ、小説原作のアニメについてはどうしても『ブレイブ・ストーリー』の一件が拭えず、今に至っても身構える自分がいた。もはや呪いだった。

その呪いを解いたのが『ペンギン・ハイウェイ』だった。映画がめちゃくちゃ面白い。小説もめちゃくちゃ面白い。小説を読んだ後に映画を観たらめちゃくちゃ面白い。こんな幸福な映像化見たことない。本当に素晴らしい。今、10年以上縛られていた呪いから解き放たれて、台風が去った後の晴天のように心の底から清々しい気持ちになっている。原作を執筆した森見登美彦先生も、石田監督をはじめとする映画製作にかかわったすべての人に感謝してもしきれないくらいだ。

ちょっともう今顔が涙と鼻水でグッシャグシャになって上手いことまとめられないですが、とにかく『ペンギン・ハイウェイ』が自分にとってそれだけクリティカルに響いた作品だったということを記憶として残したいと思います。

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