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わたしが『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観て抱いた、胸が張り裂けそうな感想をのべます。

それは、2018年4月27日の夜のことです。わたしはショッピングセンターの地下駐車場をとぼとぼと歩いていました。どうしてかって?それはそのショッピングセンターの映画館で、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観たからです。

2008年に公開された『アイアンマン』から10年、2012年に公開された『アベンジャーズ』1作目から6年。わたしは今日という日を待ち望んでいました。

それだというのに、映画を観終わったわたしは、顔が真っ青で、足元もおぼつかない有様で、夢遊病にかかったような足取りで自分の車に向かっていました。

あれだけ楽しみにしていた映画なのに、どうしてわたしはここまで大きなショックを受けているのでしょうか?それを知るためには、時間を2時間半遡り、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が一体どんな映画だったのかを、振り返らなければなりません。

これは、わたしという人間が、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』という映画との劇的な出会いと、そしてそれを観て、どういった感情を抱いたのかを知るための物語です。

当然、この物語は、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の結末について大いに触れており、もしお話を聞いているあなたが『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観たことがないのであれば、あの恐ろしいサノスという男が、6つのインフィニティ・ストーンを集め、指を鳴らしてしまう前に、劇場に足を運ばなくてはいけません。

いいですか、この記事をこれ以上読む前に必ず『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観るのですよ。あなたが無作為な半数に選ばれ、土くれとなってしまう前に。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、すべてのMCU作品の延長線上にある物語

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、今まで公開されたマーベルシネマティックユニバース全18作品の、延長線上にある物語です。

トニーはペッパーと結婚し、ピーターは学友と課外授業でニューヨークに、ガーディアンズはご機嫌な音楽を聴きながら宇宙を飛び回り、ティ・チャラ王によってワカンダは開国し、バッキーはようやく平和な日々を手に入れ、ワンダとヴィジョンはつかの間の逃避行を、そしてスティーブやナターシャたちは影ながら世界を守るために戦っていたことでしょう。

この『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、前回の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の時と比べて、たくさんのヒーローたちの映画がつくられた後のお話なのです。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』から考えても、ガーディアンズとドクター・ストレンジはアベンジャーズに初めて参加しますし、ソーとハルクは久々にアベンジャーズに合流します。そして、今回事態の危機を知らせることと、ヒーローたちが一致団結するきっかけをつくるのも彼らなのでした。

20人以上のヒーローが所狭しと活躍するこの映画では、みんなが好き勝手に動き回ってしまうと、たちまちお話は混乱してしまいます。だから、強大な悪と立ち向かうためにみんなが力を合わせるまでの流れは、とても大事なことなのですよ。

でも、だからと言ってヒーローたちがどういう人柄なのか、正義に燃えた熱血漢なのか、すごく頭がよくて天才なのか、それともわがままで自分勝手なことばかり言っているのか、そういった描写をおざなりにせず、単独の映画で育まれたそれぞれの個性を尊重して、一人一人きちんと丁寧に描いた監督たちの手腕はとても素晴らしいものでした。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、愛する者を守るために悪に立ち向かう、アイアンマンの物語

あなたは『アイアンマン』をご覧になりましたか?テロリストの手に自社の武器が渡っていることを知ったトニーが、もっとより良い方法で世界の平和を実現する……それがアイアンマンというスーパーヒーローの誕生でした。

しかし、『アベンジャーズ』、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』を通し、トニーは対峙する悪が強大すぎることに、とても不安になってしまっていました。このことで、トニーを責めてはいけません。彼はヒーローですが、その前に金持ちで、女好きで、天才発明家で、そして大切な両親や、命の恩人を失った、とても弱い、ひとりの人間なのです。

彼がウルトロンを作り上げてしまったことも、ソコヴィア協定に同意したことも、彼なりに世界の平和を実現しようと、一生懸命だったからです。そして、ついにトニーが恐れていたことが起きてしまいました。インフィニティ・ストーンを狙い、残虐なるサノスの子どもたちが、彼の愛する地球にやってきたのです。

マーベルシネマティックユニバースは、アイアンマンが中心になって大きく広がった宇宙です。そして、その宇宙の中でスーパーヒーローという存在を、初めて世の中に示した人がトニー・スタークでした。だから、マーベルシネマティックユニバースは彼の物語とも言えます。

しかし、これまでの彼は、ヒーローの代表として、あまりにつらい役割を担ってきました。皆さんもご存知のとおり、スーパーヒーローはみんな独自の考え方を持っていて、世界の平和を願う者から、不用意に力を使うべきではないと考える者、そしてそもそも戦いたくないという者までいます。

しかし、強大な悪に立ち向かうためにはみんながバラバラになっていてはいけません。そのためには、誰かがみんなをまとめる必要があります。そして、その役目は華々しいものではなく、むしろ誰からも支持されないことかもしれません。それでもトニーは粘り強くヒーローたちに語り掛けます。彼が愛する世界と、愛する人を守るために。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、すべてのヒーローが敵で、サノスが主人公の物語

ヒーローたちの苦悩や葛藤をよそに、恐るべきサノスは着々とインフィニティ・ストーンを手に入れてゆきます。ところで、どうしてサノスはインフィニティ・ストーンを集めているのでしょうか?既に彼はハルクと渡り合うパワーと、優秀な部下、邪悪な軍隊を持っているというのに、どうしてそれ以上に力を欲しているのでしょうか?それを知るためには、彼の過去を知る必要があります。

サノスの母星タイタンではとても技術が発展し、たくさんの人々が暮らしていました。ところが、あまりに人数が増えすぎたため、みんなが食べられる分の食糧が足らなくなったり、住む場所が無くなってしまったりして、お互いにいがみ合い、戦争が起こってしまったのです。

それによりタイタンは人々が住める星ではなくなってしまい、サノスは愛する故郷が荒廃してしまったことをとても悲しみました。悲嘆に暮れるサノスは、ある決断を下します。それは、タイタンのような悲劇を2度と繰り返さないように、全宇宙の生命体を半分に減らすという、おぞましい計画を実行することでした。宇宙の均衡のためには、全生命が半分まで減ってしまっても構わない。このまま数が増えすぎて全滅してしまうことに比べれば、それはとても慈悲に満ち溢れていると言うのです。

彼はそのおぞましい計画を実行できる力と、知恵と、軍隊と、そして確固たる信念を持ち合わせていました。それは立場が違えば、ヒーローとなりうるほどです。しかし、彼にとってむしろ、ヒーローたちの方が自分の正しい道を阻む、邪悪な集団であったことでしょう。

彼はロキを虫けらのように殺す一方で、娘であるガモーラには(屈折していながらも)愛情をもって接し、愛する者を失ったワンダの髪をやさしく撫でつつも、タイムストーンの力で時間を巻き戻し、彼女の前でヴィジョンの額の石を抜き取る、無慈悲な所業を見せます。

彼は宇宙の全生命を半分にすれば宇宙は平和になると本当に信じており、その使命のためなら、自身の持つものを犠牲にしても構わない。それはみなを守るためなら、わが身を犠牲にするヒーローとどう違うのでしょうか?方法?結果?それとも生い立ちでしょうか?

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、サノスが宇宙の平和を実現するため、アベンジャーズを打倒し、それを成し遂げる映画です。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、ヒーローの挫折と再起の物語

ヒーローたちはサノスに負けてしまいます。それも完膚なきまでに。今までのヒーロー映画のように、絶体絶命のピンチに大逆転のチャンスのような、そんなことは一切なく、全員が知恵と力を振り絞って、持ちうる最高の戦力でもって、サノスに敗北しました。

それは、ヒーローは最後には絶対に勝利するという、わたしの中の子ども心が信じている希望を打ち砕きました。いや、ずっと前からその予兆はあったかもしれません。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、スティーブとトニーはついに決別したまま終わりを迎え、さらに遡ると『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』では、敵はあのスティーブの親友、バッキーでした。

『アベンジャーズ』以来、ヒーローたちはそれぞれ新たな戦いに身を投じますが、そのどれもが、わるいやつをパンチでノックアウトすれば問題解決するような、単純なものではありませんでした。

あの恐るべきサノスは、6つのインフィニティ・ストーンを手に入れました。指を鳴らした瞬間、彼は幼いガモーラを幻視します。「ついにやったの?」「ああ」……それだけでした。

それだけで、わたしの愛したマーベルシネマティックユニバースの世界は崩壊しました。バッキー、ティ・チャラ、サム、グルート、ワンダ、マンティス、ドラックス、スター・ロード、ドクターストレンジ、ピーター……

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、この10年間、じっくり熟成させていた極上の素材をふんだんに使い、決して食べ終わることのない、食べきれない、素晴らしいフルコース料理となるはずでした。しかし、わたしの目の前で、それは無残にも土くれに還っていったのです。あの時のわたしの喪失感ときたら、なんともはや言葉に表すことはできません。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.3』は?『スパイダーマン』の続編は?『ブラックパンサー2』は?『ドクターストレンジ』の新作は?マーベルシネマティックユニバースはこの後にも新たなストーリーを展開していく計画があります。しかし、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』はそれをすべて木っ端みじんに吹き飛ばしてしまいました。はたして、敗北したヒーローたちがいかにして再び立ち上がり、サノスと相まみえることになるのか、想像もつきません。

一つだけ言えるのが、この作品が『アベンジャーズ』だということ。正義の復讐者たる彼らは、きっと再起し、あのにっくきサノスの顔面にパンチを食らわすべく行動を開始するでしょう。


次の『アベンジャーズ』まであと1年。それまでにも新たなマーベルシネマティックユニバース作品が公開されます。ですが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の後に公開される映画は、特別なものになることは間違いありません。

なぜなら、マーベルシネマティックユニバースと、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、あらゆる映画の常識を覆した、今世紀最高のエンターテイメントであり、史上最強のアトラクションであり、まさに観客が生き証人となった歴史の瞬間なのですから。この宇宙の結末を見届けられることにとてつもない幸運に恵まれたことにただただ感謝するしかありません。

しかしながら、わたしが『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観て負った喪失感は耐え難く、こうして思いを書き綴ることにも非常に長い時間を有しました。わたしは今、この時代に生をうけた幸せを噛み締めつつも、地獄のような次作への焦らしの責め苦を受け、のたうち回っています。

どうか、わたしの愛するマーベルシネマティックユニバースに素晴らしい結末が待っていますように。

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