見出し画像

ここはあなたの知っているニンジャでもバットマンでも戦国時代でもない。映画『ニンジャバットマン』

ニンジャバットマンこれまでのあらすじ:さあ、さあ、御立合い!これより始まるのは荒唐無稽で全体未聞、空前絶後の異聞奇譚!異国より来たりし正義の悪党こと蝙蝠男と、その宿敵にして第六天魔王を自称する外道師の血沸き肉躍る大立ち回り!迫りくるからくり城に蝙蝠を呼ぶ忍びの衆、そして世にも珍しい喋る猿人!これを観ずして英雄通を自称するとは片腹痛し!さあてお待ちかね!『ニンジャバットマン』これより始まり、始まり!

『ニンジャバットマン』がどんな映画か説明するのは非常に難しい。なぜなら『バットマン』『ニンジャ』『タイムスリップ』というワードを持ち出す前に『特撮』『変形』『合体』などという言葉が出てくるからだ。この映画は『バットマンとヴィランたちが日本の戦国時代にタイムスリップし激しくアクションする』といった、第一報で皆が思い描いたストーリーを遥か彼方へ置き去りしていく。

海の向こうでは『米ソの冷戦を止めるためイカ型宇宙人が地球に精神攻撃を仕掛けてきたとでっちあげる』とか『古代中国にタイムスリップし孔子のテキストを盗み出してベストセラー作家となって大金持ち』とか相当にイカれた物語が執筆されたりするがあくまでコミックでの話であり、実写映画となると紫色のサノっさんが涙を流したり、お互いのママの名前が偶然にも一緒と分かり動揺したりするなどシリアスな笑いの暗黒面が顔を出す。が、ここ『ニンジャバットマン』ではそのコミック由来の狂気の発想に彩られたストーリーそのままに、誰もブレーキをかけようとせずクライマックスにクライマックスをかけた鬼やばクライマックスへ猛進していく。しかも制作したのは日本人の手によってだ。

普通、海外発のアニメ―ション、ディズニー・ピクサーやアメコミ原作のものは、子供をターゲットにしつつもその親の世代も楽しめる深みのある作品を目指すものだが、この『ニンジャバットマン』に限ってはそういったマーケティング戦略などどこ吹く風、作りたいと思ったやつが作りたいようにバットマンをやりたい放題した結果(しかもDC側も止めるどころか一緒にアクセルを踏む始末)、公園の砂場の砂を総動員し巨大変形合体ロボをブッ立てるような所業を成し遂げた。つまりおれをはじめとする一部の少年心をもつやつが大喜びするやつだ。

戦国舞台装置と頭のおかしいストーリーをあえて除くとそこはバットマンとジョーカーの因縁だ。とくに今作のジョーカーはすげえ面白いおもちゃを手に入れて過去最高にはしゃいでいるようにしか見えず、しかもホットなハーレイクインが側にいるのに眼中にあるのはバットマンだけだ。もうバッツにゾッコン。『ダークナイト』のような善悪の概念を超えたレベルで対立する2人ではなく、あくまで外道を演じ、バットマンの気を引こうとする典型的なコミックヴィランなジョーカーが見られるのは一周回って貴重に感じる。もちろん過去のバットマン作品のミーミーもこの映画には(おそらく)流れているだろう。一人で孤独に戦わず、ナイトウィングやロビンたち、そしてニンジャと団結しアッセンブルする姿はジャスティスリーグの波動を感じるし、たとえストーリーが荒唐無稽でもキャラクターにそういったエッセンスを織り込むのは日本産アニメ・特撮お得意の表現技法なのだ。

とかいう意識高めな感想とかは本当にどうでもよくて終盤の「来るぞ……絶対来るぞ……ハイ来た!来ました!うおおおおおGAT-TAI!GAT-TAI!GAT-TAI!GAT-TAI!HOOOOO!!SO MARVELOUS!!!!!」でもうすでに最高オブ最高の映画だった。……何?合体がネタバレ?


というか今作のキャラクターデザインは神ががってて最高オブ最高なので甲冑ニンジャバットマンと第六天魔王ジョーカーを産み出してくれた時点で神。岡崎能士先生マジありがとう。


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

ここは記事下のサポートエリア!わたしをサポートしたいと思ったそんなあなたに、わたしのamazonほしいものリスト! https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/1XCLS13WI5P8R?ref_=wl_share