【読書メモ】発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由(栗原類 著)

・モデルの栗原さんの子供時代から今に至るまでの一代記

本人、母、主治医の3者の視点から語られている。

モデルケースを記すというよりは個人の体験談の側面が大きい。

アメリカ生活やモデル業における話題も多く、一般の読者からするとやや「遠い世界」の話を読んでいる感じを受ける。

「で、どうしたらいいの?」的なTIPSやメソッドを求めて読むとちょっと期待はずれかもしれない。

結局の所、本書の言う輝ける場所を見つける=「夢に近づくには?」ということのようで、グレーゾーン等、大人になってから社会不適合によって希望が持てないような苦しみ方をしている当事者に役立つかというと微妙。

ただ、発達障害を公表して活動している有名人であっても似たような苦労をしているのだな、というのを知ることができたのはよかった。(日本の学校の事なかれ主義や陰湿さで苦労したところとか)

・この人の場合はそれでうまくいった、という例の紹介なので「記憶力の良いタイプ」のお子さんや当事者には逆効果な例も

本文中でも「これはあくまで一例であり性格や性質は人それぞれ」と但し書きがある。

例えば、栗原さんに効果的であったという、「繰り返ししつこく毎回教える」というやり方は、記憶力に乏しい人には本書が言う通り「外部ハードディスクのような役割」を果たせるので適しているが、逆に記憶力が一般より尖っている当事者に同じことをすると、忘れられないという特性から、「繰り返し叱責された」という点だけが印象に残り、かえって萎縮することにつながる(実際自分がそう)。

ファンなら読んでもいいかもしれないけれど、発達障害の知識や困り事への対処法としての本としては目新しさは薄いと思う。

とりわけ、いわゆる「普通」の日本社会にどっぷりな親御さんが読むには、精神性はよくても紹介されている事例(周りの言葉に惑わされずに…とか、早めに良質な専門医にコンタクトをとる)の実践が難しい気がする。

ただ、主治医の高橋猛さんの語る章は、脳機能における定型発達児との違いやそれに応じた対処の変え方を紹介しており、「なぜいろいろ体験させることが大事か」「発達障害であっても身に着けたほうが良いルール(されて嫌なことはしない、話しかけ方のルール等)」「ゲームなど熱中しているものを安易に取り上げないほうがいいのはなぜか」等の解説は大人の当事者が振り返り用として読んでも参考になった。

・疲労に関しての説明は一見の価値あり

Part4のP151~に、当事者や医療の立場でなく、客観的な第三者の視点で発達障害者の疲れやすさについて記述がある。

これがかなり良質。

遊園地に行きたいというので連れ出した発達障害の子供がなぜ1時間くらいで帰りたいと言い出してしまうのか。

そのあたりのメカニズムをわかりやすく解説してある。

この易疲労性というのが厄介で、大人でも「甘え」「怠け」と取られやすいため説明が難しいが、子供はなおのこと「ぐずる」以外で表出する手段を持たない。

大人の基準で「元を取ろう」として時間いっぱいあれこれスケジュールを詰め込んで連れ回すのがなぜいけないか?という理由が明快に記されているので、身近な発達障害の人の疲れやすさに悩んでいる人はこの箇所だけでも読んでみることをおすすめする。

私達はけっして、怠けているから疲れやすいわけではないのだ。それは脳が外部刺激に弱いタイプというだけのことなのだ。

その大前提を再確認する意味でも、この章の記述は良いものだった。


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