小豆洗はじめ

妖怪の小豆洗いが好きですが、妖怪には無関係の者です。 詩のようなもの(ほとんど散文)を…

小豆洗はじめ

妖怪の小豆洗いが好きですが、妖怪には無関係の者です。 詩のようなもの(ほとんど散文)を書いてます。 ブログ「暇つぶしにも、腹の足しにもならない」も見ていただけると嬉しいです。 http://one0123.blog90.fc2.com/

最近の記事

【自作詩】ひつような時間

言葉がいらない ときがある 歌でなく曲を聴きたい ときのように 言葉を必要としない時間 という選択

    • 【自作詩】過程

      たどり着くまでの プロセスだって旅だ 急いではいない 各駅停車で行く 空隙を埋める必要もない 休符だって音楽だから その人のなかで 芽吹いたものが ずっと息づいている

      • 【自作詩】雨垂れ

        雨垂れ、 踏切り、 規則的 あるいは 不規則的な音が 窓のこちら側に 降ってくる 雨垂れ、 踏切り、 規則的 あるいは 不規則的な音が 記憶の扉をたたき 雨垂れ、 踏切り、 規則的 あるいは 変速的なリズムで 思い出の底を打つ

        • 【自作詩】窓辺の雲

          窓に映る雲を見ながら いつもことばをさがしている もしかしたら さがしているものは ことばじゃなくて こういう雲みたいなもの だったのかもしれない

        【自作詩】ひつような時間

          【自作詩】海とひとり、ひとりと海

          ひとりで 夜の海をながめていると (それは想像の海でもいい) 自分の内から 孤独な部分が染み出してきて 海に混じる 海のほうも 岸に上がって 足もとから徐々に重なってきて 皮膚や肉や骨を通過し その内側にある孤独を誘い出す 体にだんだんと潮が満ちてきて そうなるともう皮膚も肉も 骨も内臓も関係なく みんな孤独で満たされていくのがわかる 熱くも 冷たくもなりすぎず 過密でも過疎でもなく ちょうどよいものが 内と外と その境界でも 揺れている 海とひとり 揺れている

          【自作詩】海とひとり、ひとりと海

          【自作詩】つづき

          眠りで分断されなかった 昨日と今日の 時間がつながる。 昨日の中の今日が始まる。 今日の中に昨日が流れている。 ホームの端まで歩いて 逆の端を見る。 こんなふうに何かの 始まりに立ちながら いつでも終わりを 見ていたような気がする。 しかしよく見たら ホームの端は終わりでも 始まりでもなかった。 昨日からやって来た電車が 今日を乗せてその先の時間へ 進んでいく。ガタゴト…

          【自作詩】つづき

          【自作詩】たたかいへ

          たたかいに行くゆめを見てしまった まるで祭りにでも行くみたいに 興奮した気分だった だれもがいつもとすこしちがった その違和感がまたおたがいを高揚させた みんな陽気で団結して助けあって やさしくて面倒見がよくて まじめにたたかいに向かっていた ぼくの乗ったシンプルでオンボロな 車はなかなか動いてくれずに たたかいに行く群れの中でおちこぼれ どんどんおくれていく どんどんおくれていく ぼくはぼくの興奮から 取り残され目がさめる あのたたかいはゆめ だったんだろうか あのたたか

          【自作詩】たたかいへ

          【自作詩】朝が燃えようと

          明けようとする 朝がやわらかな 手足を空に ひろげ始める 薄まった三日月が 追ってきて 影絵のように 切り取られた 観覧車の枠に つと腰かける 昨日の残像を 染め上げて 燃えようとする 朝の色のなかで 月はまもなく 目を閉じ 観覧車はうんと 伸びをする

          【自作詩】朝が燃えようと

          【自作詩】雨音

          雨の音が なにもかもを掻き消す 耳を打つ雨音に こんなにも種類がある という驚きを聴く いま耳は雨音だけを 聴くために存在している 脳までの道 聴覚の奥行きが 満たされる

          【自作詩】雨音

          【自作詩】いつか

          現代では使われなくなった その言語は いつまでも待ちつづける だれかに読まれるのを その言語の使い手たちの 知識と感性と 生活と思考とを だれかが読み解くのを じっといつまでも 色褪せずに 必要とされていたときの 熱量を宿しながら 待ちつづけている 言語は生まれたときから あるいは記録されたときから その性質を持ち 生まれたことばは 失われることはない

          【自作詩】いつか

          【自作詩】逆コウ

          わが町とはどこのことだろうか ここではないような気がする 他所の町とはどこのことだろうか ここではない気がする おそらくは家路を急ぐ自転車のライトが 次々と目にまぶしく いったい自分は今どこにいるのか 逆光でなにも見えない 定住の地を持たない者が 家路を逆行して向かう先は どこだろうか わが町でも他所の町でもない 通りすがりのこの町

          【自作詩】逆コウ

          【自作詩】ボーダーライン

          いつかだれかがきめた境界は 自分のものではないから いったりきたりする 境界線ははっきりしない 川の流れのように変化する 手繰り寄せた川の上を進むとき 水面にうつる星明かりは その人にだけ見えている だれかの期待を裏切るとき その矛盾の手ざわりは きっとはっきりしている

          【自作詩】ボーダーライン

          【自作詩】マーブリング

          来た道はひととおりの色ではない さまざまな色の絵の具が 混ざりながら 混ざりきらずに 振り返ると何色もの複雑な 線が描かれていることだろう その道に紙をあてて 写しとってみたなら 人それぞれの模様が 描かれることだろう

          【自作詩】マーブリング

          【自作詩】青天

          赤い鯨が今日も空を泳ぐ 砂埃の向こうに旅立つ船 雲のかぞえかたの話を したのはいつだったか 今日は雲ひとつない青天

          【自作詩】青天

          【自作詩】海

          眠りの海を泳いでいる 脳だけが船着き場に降り立ち 岸辺で朝の音をひろっている 体を包んで揺れる水は 着ているようにあたたかい 弛緩と覚醒とを 交互にあるいは同時に 身にまとって 意識はどこかで 別のことを考えている あのひとのことも もしかしたら水面にちらつく 目は覚めていない 船着き場を眺めて どちらにでもいけるように 眠りの浅瀬を泳いでいる いつまでもこの波を着て 漂っていたいから 頭蓋を海水で 満たしておこう

          【自作詩】海

          【自作詩】ブランコ

          ブランコには 楽しい思い出が ぶら下がってる 揺れて 揺られて 押して 押されて 行って もどって 跳んで ころんで 座って 語って 鎖を握りしめて 大きく息を吸って 思いきり漕いで ブランコが 伸びあがったとき 目に飛びこんできた 夕陽がいちばん まぶしかった

          【自作詩】ブランコ