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SNSプランナーをたずねて3,000マイル(中編)


本日の主役
ふくまさんとの待ち合わせ場所である
幡ヶ谷へと向かう田舎人間あずきみみこ。

だがここで問題発生。
新宿駅、乗り換え先が見つからない。

「ここだここだ」と待っていたホームが
よく確認すると全然違ったのだ。
危ないところだった。


高校の合格発表で「たしか神社っぽい名前だった」という記憶だけでバス停を降りて迷子になったことを思い出した。なんとなくで駅や線を見つけるのはよくない。

そして、ようやく見つけた
真の乗り換え先がこれまた遠い。

だいぶ歩いてようやく見つけた看板に
あと300m」と書いてあるのだ。

300mとは。
それは同一駅と言っていいのだろうか。

間に合わん。
私は走った。ホテルで慎重に整えた
前髪を振り払って走った。


少しずつ看板の距離数が
小さくなっていくのを見て
24時間マラソンランナーの気持ちになる。

脳内を流れるZARDの「負けないで」
武道館まであと少し…!


そして着いた。遅刻

おっとこれはいきなり心証が悪いぞ。

謝罪して、お詫びとばかりに手土産を献上。
酒屋のおじさんと一緒に考えて選んだ日本酒。

「お酒が好き」という情報しかなく
はたして日本酒が正解だったのか不安だったが
ふくまさんは喜んでくれたのでひとまず安心。

「ちなみに、いつもは何飲まれてるんですか」
と尋ねると「イモっすね」とふくまさん。

正解はイモ焼酎だった。
惜しい、次行ってみよう。

カウンター席に着席。
ふくまさん、黄色のパーカー。
私、青のセーター。

IKEAの配色にしちゃってごめんなさいだ。

出だしから相次ぐ失態。
それでもふくまさんは気さくに
話してくださる。

やさしくてヨカッタ…。

こんな田舎住まいの
へっぽこクリエイターにも偏見の目を向けずに
フラットに接してくださるので、
私は安心して企画作りの話を
あれやこれやと聞いた。

今まで誰にも聞けなかった話ばかり。
やはり思い切って東京まで飛んできた甲斐があった…。

「企画にはコピーが結構大事なんですよ。
だからコピー、書けるようになると良いかもしれないです。例えばですけど、これにつけるとするなら…」

と言ってふくまさんが目の前の小皿に
キャッチコピーをつけた途端、

その皿が急に特別なものに見えはじめて、
私はふくまさんの経験の豊富さと
己の引き出しの貧しさを知った。 

突如魅力を増した小皿で、
頼んだつくねを頬張る。

私がいかに未熟であろうと、
つくねは完璧に美味しい。

ふくまさんがよく行くというこの串屋さん。
食べログの写真を見たときから
唾液腺が決壊していたのだが
本当に、何を食べても極上。

うずらの肉巻きに関しては
あまりにも感動的で思わず、

「ちょっと待ってください。
うずらめっちゃ美味しいです」

とふくまさんの貴重なお話を割って
うずらの美味しさを主張してしまった。

そして〆にはオムライスまでいただいた。
実は事前に情報収集していたときから
ずっと食べたかったやつだ。

カウンターの目の前で
卵液が何度も注がれるのを
羨ましく見ていたくせに

「オムライス頼んでいいですか」

すら言えないチキン野郎をふくまさんが察して
「なんかごはんもの頼みますか」
と言ってくださったのだ。

私は嬉しくて、ついに
目の前に艶々のオムライスが出てきて、

そしてそれがやはり最高に美味しくて、


ふくまさんの分までかっさらって食べた。

それにも関わらず食事代を奢ってもらって、
帰りは駅まで送ってもらってしまった。

遅刻したみみこにも優しいふくまさん。
1から10まで申し訳ない。


夜、静かな幡ヶ谷駅ホーム。
これからまた迷子になるとはつゆ知らず。

行きの時から気になっていた
椅子に座ってみる。

座面が浅くて座っている気がしない。

諦めて電車に乗車。

降りた新宿駅、
案内看板に「山手線」の文字がなくて焦る。

これは一体…。

思考を巡らせ、そしてある仮説に辿り着いた。
「JRがつまるところ山手線なのではないか」と。

己を信じてJRの矢印に従う。
だがしかし、歩けど歩けどホームに着かぬ。

不安。

奥の手で母にLINE。
「山手線ってJR?」

「そうだって」と返事。
「だって」ということは、おそらく
父に聞いたのだろう。

どうにか五反田に到着。

これでようやく一安心、かと思いきや
眼前に伸びるのは2本のエスカレーター。


周りは全面、工事中のホワイトな壁。
ヒントとなる情報が一つもない



私のことはお構いなしに、
二股に別れる人の流れ。

どっちに乗ればいいんだ…。

もう、勘で選ぶしかなくて、私は右を選択。
ええい…!

なんかめちゃくちゃ長い、そして速い。
そういえば乗り口で「高速エスカレーター稼働中」と書かれた看板を持ったおじさんがいたような…。

不安。

行き先を告げられずに
タイムマシンに乗せられた時くらい不安。

ようやく上昇地獄から解放されて
改札を通ると、また何かがおかしい。

右手にはホーム、
左手には新たな改札。
目の前は壁。出口がない

どうやらエスカレーターを降りて左折した先の
改札を通らなければならなかったらしい。

おいおい嘘だろ…?
こんなひっかけ問題あるかよ…!

改札口の駅員おじさんに謝って
反対側に通してもらい、なんとか脱出。

「今日はいい日だった」という多幸感で
一日を締めるはずが、とんだエンディングだ。

酔いもすっかり覚めて、風呂に入った私は
「必ず眠れるBGM」をYouTubeで
かけながら、なかなか寝付けない夜を
過ごしたのであった。

明日へ続く。



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