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観たもの、聴いたもの、読んだもの(2023.12)


01.活字本

01.正欲

フェチズムがテーマの作品。
無機物に欲情する性癖(水フェチ)に悩む人達が出てくる。
2次元界隈の業の深さを見てきた身としては「そんなに悩むことかな?」と言った感じで共感は出来なかった。
水をテーマにしたのは、過去のエピソードを美しく描く理由もあったと思う。
個人的には、検事が自分のフェチズムに気付くところと、逃げ恥カップルが最後まで互いを信頼するシーンが良かった。
浅井リョウ作品は、現代人の葛藤の言語化がすごく上手いのだが、刺さりすぎるのでメンタルが沈む。

「拒絶しないって何だよ。関係ねえんだよお前が拒絶するかどうかなんて。何でお前らは常に自分が誰かを受け入れる側っていう前提なんだよ。お前らの言う理解って結局、我々まとも側の文脈に入れ込める程度の異物か確かめさせてねってことだろ」

正欲

02.楽園とは探偵の不在なり

2人殺人を犯すと天使が地獄へ連れて行くという世界。
そこで起きる連続殺人事件。
現実の中に1つだけ理解不能な制約を設けることで、ミステリーとしての面白さがグッと上がっている。
主人公(探偵)は過去に事務所の仲間を亡くしており、回想の中での彼らが魅力的に描かれているのが悲しかった。
掘り下げればシリーズ物にできそうなのに、あえて過去のエピソードとして切り捨てるのは凄いと思う。
トリックもよく考えられており、挿絵がなくても想像しやすいものだった。
斜線堂有紀は今年の推し作家。

03.ファミリーランド

ディストピアSF短編集。
ホラー作家の描く未来は救いようがない。
個人的には「今夜宇宙船の見える丘に」という短編集が1番印象に残った。
無職の独身男性と要介護の父親が宇宙船と遭遇する話なのだが、現実味のある日常パートがツラい。

外科的処置「ケアフェーズ」。
その第一段階と第二段階はキット代五万七千円、時間にして二時間四十五分で済んだ。
何の異常もない 肛門 を専用ステープラーで 塞ぎ、フルオートメスで左脇腹から大腸に穴を開け、アームでストマ──人工肛門を取り付ける「フェーズ 1」と、何の異常もない両足を 膝 のすぐ上で切断する「フェーズ2」は。 実の父親をより介護しやすい形に改造する 処置は。

ファミリーランド

ケアフェーズという処置でオムツと徘徊を防止する仕組みが実に合理的で慈悲がない。
何というかホントに行われそうな未来が来そうで怖い。
ラストは美しいのだが、えげつない。

04.旅のラゴス

ジブリがアニメ化を検討した噂のある作品。
雰囲気が今話題の『葬送のフリーレン』に似ていて驚いた。
旅を続けるラゴスと、街で出会う人達の話が描かれている。
魔法はないのだが、場所を転移できる超能力があったり、超古代文明のような要素も絡んでくる。この辺りは筒井康隆の得意分野だと思う。
1984年という景気の良い時代に、こういったしんみり系のファンタジーが生まれていたことに驚いた。
旅先で何十年も文献の研究に浸れるシーンはちょっと羨ましかった。
根強いファンがいるのにも納得できる。

05.後宮小説

『薬屋のひとりごと』の基礎を作った後宮が舞台の作品。
皇帝の子供を残すための性教育がテーマで、老師とも呼べる先生との問答がとても面白かった。
とにかく主人公周りのキャラが魅力的に描かれており、個人的には江葉推し。
ジャンルはなろう小説に近いと思うのだが、舞台設定の緻密さが段違いであり、レベルの違いを感じた。

腹上死であった、と記載されている。

後宮小説

有名な最初のフレーズ。
冒頭でいきなりズドンと来た。

ちなみにジブリスタッフが参加したアニメも存在する。
最近BD化したので、人気作らしい。

06.タイタンの妖女

岡田斗司夫&山田玲司がYouTubeで絶賛していたので読んでみた。
コアなファンの多いSF。
海外SF+半世紀以上前の作品ということで、正直読みにくかった。
カルヴァンの予定説を元にキリスト教を皮肉っており、ラストには驚いた。
『星の王子さま』のように一読では良さが分かりにくいが、何度か読めばハマりそうな雰囲気がある。

02.マンガ

01.商店街のあゆみ

panpanya先生の新作。
毎年1冊の刊行を楽しみにしている。
この本の良さを言語化するのは難しい。
とりあえず今月号の『ユリイカ』で特集をやるので、愛読家達の意見を参考にしたいと思う。

02.ダンジョン飯

いよいよ完結&2冊同時発売。
来年はアニメ化も決定しており、主題歌はBUMP OF CHICKENが歌うことが決まっている。
というテーマを最初から最後までブレずに描いたいのは凄い。

念願のフィギュアもアニメ化と同時に発売決定。
『江戸前エルフ』『葬送のフリーレン』『ダンジョン飯』と最近はエルフが熱い。

03.アニメ

01.葬送のフリーレン

しばらくは日常パート。
大きな事件が起きなくても面白いので、ずっとダラダラ続いて欲しい。
フリーレンのリアクションは猫動画のような魅力がある。
パーティー全員テンションが低いのは斬新かも。

02.呪術廻戦「渋谷事変」

東堂のシーンにスタッフの熱量を感じて良かった。
心の折れた虎杖を支える先輩としての説得力が凄い。
自分の信念を言語化してブレない枠って少年漫画には大切。
この作品、主役よりも脇役の魅力が強い。

03.シャングリラフロンティア

筋トレのお供に流している。
サクサク話が進むところはノンストレスで良い。
クソゲーマー≒ゲーマーとしての実力が高いという構図は未だに腑に落ちていない。
つまらなくはないが、語るほどの深さはない。

04.薬屋のひとりごと

『名探偵コナン』のフォーマットであることに気づいたが、15分くらいで1つの謎が解決するのでタイパが良い。
キャラクターの暗黒微笑が多いところは、ちょっとキツイ。
素手でハチミツねぶり描写はイケメンでも勘弁なのだ。

05.るろうに剣心

剣心VS斎藤は旧アニメの方が良かった。
というか、旧スタッフが強すぎた。

剣がぶつかり合う描写と、斎藤が折れた歯を吐き出すところの死闘感が良い。
声も旧作のほうがハマり役に感じるのは多分思い出補正。

04.映画

01.鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

Twitterで話題になっていたので、レイトショーで鑑賞。
因習村の鬼太郎としては面白かった。
(横溝正史の香り)
ただ、終盤の戦闘が大雑把な印象。
ドロドロの人間関係と、妖怪バトルの組み合わせがもう少しマッチできていれば最高だったと思う。
エンドロールは最後まで内容がたっぷり詰まっているので満足感は高い。
今年は邦画が豊富で嬉しいのだが、ゴジラと鬼太郎って令和感ゼロ。

05.ドラマ

01.どうする家康

今月で終了。
茶々が幼少期に家康に期待した理想が、豊臣政権崩壊につながる描写が上手かった。
自分が育て上げた理想の若武者(秀頼)が、かつての憧れ(家康)と対立する構図が良い。
秀頼も信長と秀吉という英傑の血を引いているが故に引けないという事情も分かる。
今回の大河、前半はビックリする程つまらなかったのに、後半でここまで面白くなるとは思ってもいなかった。
総評としては60/100点。

06.You Tube

01.Vしんぼ

久しぶりに天才を見た。
パロディという体を取りながら、VTuberというコンテンツの本質を付く内容に舌を巻いた。
士郎と雄山のプレゼンが原作っぽく、説得力のある提案をしているところも面白い。
このチャンネル、パロディネタは現在3本なのだが、やたらとレベルが高い。
自宅の住所を晒して、ファンに物資を支給させているのも面白い。

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