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誰かの痛みを添えて

最初の大仕事

物件を取得してから、実際に改装工事の準備に入るまでは、約半年ほどの期間が必要だった。
というのも、「城見壱番館」には住人の方がいらしたからである。
大前提として、物件が空にならないと、このプロジェクトは進まない。

そう。
まず最初の大仕事は、皆様に円満に退去していただくことだった。
極めてデリケートなこの案件は、法の専門家のアドバイスを元に、
ありったけの配慮を以て、弊社の役員が対応した。
彼は、抜群の人あたり、クレーム対応の神、リスクヘッジの鬼、責任感の塊、無類の心配性、典型的なA型、重箱の隅をつつ…。
あ、これ以上言うと悪口になる。
とにかく、生まれ持ったそれらのすばらしい素質をいかんなく発揮し、
とはいえ、想像を絶するストレスを抱えながら、
彼は見事に予定期日通りに物件を空にした。
ひとつの揉め事も起こさずに。
この仕事は、間違いなく、彼だからこそ成し遂げることができた大仕事であったと確信している。

そして、その大仕事を以て、物件は「城見壱番館」としての役割を終えた。

2018年5月、開業の7か月前のことである。

空っぽの部屋で想うこと

無人になった「城見壱番館」。
少し前まで誰かの住処だった空っぽの部屋には、微かな生活の匂いが漂っていた。
その部屋の真ん中で、ふと三角座りをすると、
えも言われぬ感情が降りてくる。

立ち退きに応じてくださった住民の方への感謝。
その部屋で誰かが過ごしていたであろう時間への哀愁。
勝手な都合で、住処を奪ってしまったことへの罪悪感。

誰かの生活を変えてしまうことの重さをこれほど感じたことはない。

別に住民の方々は全く期待もしていないのだろうけれど
なんとなく、漠然と、背負うものが増えたような
そんな感覚になった。

この物件を、きちんと立ち上げなくては!!

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